私たちは喫茶店に戻った。そんな私たちに突然と男女二人が寄ってきた。少し威圧感のある人たちだった。

 何、この人たち?私と岩永くんは顔を見合わせた。

『浦瀬ひまわりさんと、岩永悠斗さんですね?』

 女性の方が私たちに尋ねた。私たちはお互いに顔を見合わせてから小さく頷いた。

『驚かしてすまない。愛知県警の者だよ。怪しい者じゃないよ。』

 男性の方が警察の証明書を見せながら言った。

 愛知県警。私たちがよほど驚いた顔をしていたんだろう。ずい分と気を遣った話し方をしてきた。

 でもかなり驚いたのは事実だけどね。

『お友達が大変な目にあってとても辛いとは思うけど、少し話を聞かせてもらえるかしら。』

 和音の事件の件を言っているんだ。私たちの勝手な行動が招いてしまった事件だ。


 私たちは喫茶店の中に入った。

 お母さんや永末さん、バイトの子たちもみんな私たちを見たが、誰も話かけてこなかった。

 私たちが戻ってくる前に既に刑事さんに会っていたのだろう。お母さんが心配そうな顔でこちらを見ている。きっと後で怒られるだろうな。

 私たちはいつもの奥の席に座った。

『君たちが調べていたことを話せる範囲でいいから教えてもらえるかな。』

 刑事さんたちはそう言って私たちに話すよう促した。

 早速そうきたか。私たちはまた顔を見合わせた。そして、お互いに頷いて知り得た情報を少しづつ話はじめた。

 5年前の事件や、上五島でのこと、調べていくうちにわかった事実を順序だてて伝えていった。

 刑事さんはメモをとりながら、私たちの話す内容を何度も確認しながら聞いていった。

 これが刑事さんなんだ。吉武刑事とちょっと違うな。

 重苦しい時間が過ぎていく。私たちがしたことはやはりいけない事だったのだろうか。

 早く終わらないかな。ちらりとお母さんの顔を見る。不安げな表情が目に入った。お母さんの心配そうな顔が胸を締めつけて苦しいよ。


『それじゃあ君たちは独自に調べていて、心中ではないとの結論になったわけだ。』

 刑事さんが確認するように言う。

『それは正しかったわけですよね。そうでなければ福田和音さんが狙われるわけないですよね。』

 岩永くんはきちんとした対応で刑事さんたちに意見している。すごいな。彼は。この場から消えたいだけの私と違うよ。

 でも、私も聞きたいことは聞かないと。せっかくの機会だもん。少しでも情報を集めないと、先が進まないわ。

『刑事さん、和音を狙ったのは男だったんですか?女だったんですか?たくさんの目撃者がいるんでしょう?犯人の目星はついたんですか。』
 私は緊張と不安を蹴飛ばすように、連続で質問してしまった。刑事さんたちは目をまるくしている。いけない。言い過ぎてしまった。集中攻撃質問にすぐなってしまう。私は本当に駄目だな。
 でも刑事さんは、すぐに平常心で答えてくれた。さすがだよね。
『残念ながら、あまりの混雑で人の波に姿を消すようにいなくなったんだ。何ヵ所かの防犯カメラを確認したが、男女の区別さえ難しい。はっきり全身が写っているものがないんだ。』
 そうか、わざと混雑している中を選んだんだ。
 私がよほど残念そうな顔をしていたのを刑事さんに気付かれたようで、さらに情報を教えてくれた。
『教えてあげられる事だけよ。犯人と思われる人物は身長は約165cm。深い緑色の帽子、黒のパーカー姿よ。そのどちらも量販店で売られているもので、誰が買ったかなんて特定できないのよ。』
『そうなんですね。』
 私は更にがっくりしてしまった。男女の区別さえもできてないなんて。
『期待に添えない答えで申し訳ないね。時間をとらせてすまなかった。私たちはこれで失礼するよ。それと、もう探偵ごっこは終わりだよ。つぎは君たちに危害が及ぶ可能性もあるからね。』
 そう言って刑事さんたちは店から出ていった。

 吉武刑事と同じ事を言う。確かにそうだ。私や岩永くん愛子先生、誰が狙われても不思議じゃない。最悪の事も考えられる。
 そうなのだ。殺される可能性があるんだ。
 私たちはこれ以上動くな、か。




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