『岩永くんが入学してきたのは、亡くなった二人が真実を見つけてくれという願いなのかもしれないわね。』
その言葉には5年間の思いが感じられる。5年もの間、ずっと抑えがたい苦しい気持ちを抱えてきたんだ。岩永くんもそうであろう。今の二人の顔を見ていればわかる。
でも、愛子先生から返答らしい言葉は出ない。絵画を見つめ、何か考えている。
私は大きく息を吸って、静寂を破った。
『私たちにも手伝わせて下さい。』
『私たち?』
和音の少し驚いた声を無視して続ける。
『この絵画を見て、私も何かお手伝いがしたくなりました。邪魔にならないようにします。お願いします。ほら、和音からも頼んで。』
私は和音をひじでつついた。
あきれ顔の和音は、私が引き下がらないと分かっていた。
『私たちに何ができるかはわかりません。でももしかすると私たちだからこそできる事もあるかもしれません。一緒にやらせていただけませんか?』
さすがだわ。本当に頼りになる親友だ。
驚いた顔のまま動かない愛子先生。
岩永くんはどう言うんだろう。彼の顔を見た。
『彼女たちにしか出来ない事か。確かにあるかもしれない。先生と僕だけより、四人の方が情報も多く集められるだろうし。』
岩永くん、君はなんて大人なんだ。同じ高校一年生とは思えないよ。
『そうね、今回が最初で最後の機会かもしれないわ。あの日、あなたたちがこの絵画の存在に気付いたのも偶然じゃないのかもしれないわ。』
決断した愛子先生はいつも以上に美しく、美術室の空気がぴんと張りつめた。
『ありがとうございます。何か役に立ちたいと思います。あの、思い出すのも辛いかと思いますが、5年前の出来事とはどんな事だったのですか?教えてもらってもいいですか?』
私は覚悟を決めて尋ねた。おせっかいでも好奇心でもない。あの白い布を見つけたときから、惹かれていたのだと思う。
私と和音は高鳴る気持ちを押さえ、静かに愛子先生の言葉を待った。
『5年前か、早いものね。あれは、夏の嵐の夜の出来事よ、、、。』
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