今こそ基本のキ No.1 ープロフェッショナル・ファンドマネージャーの流儀ー | 蓮華 with にゃんこ達

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専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

http://online.barrons.com/article/SB50001424052748704526104578123490997113294.html?mod=bol_share_tweet

先日『堅あげポテト』のリコールで話題になったカルビー(2229)がBarronsで取り上げられています。
大震災当日の2011年3月11日に上場した同社について、年初来高値まで3倍強上昇し続けてきた後の今回の件による株価調整、かなり買いのチャンスだ、という記事内容ですね。
特にNestleなどグローバルな優良食品メーカーと比較した時の割安感、という事を挙げています。

カルビーは、正にこのブログでも度々取り上げてきたニッチトップ銘柄。ポテトチップスでIPO当時6割のシェア、しかも成熟商品でありながら、直近まで一貫して右肩上がり、現在70%以上に伸ばしていると知った時には、改めて驚きました。湖池屋とかね、もう少し拮抗した数字になっているかと思っていたんですけど、かなりの『ぶっちぎり』状態。
同様にスナック菓子全体で見ても、同40%後半から約53%へ上がっている。

正にバフェットが言う所の『消費者独占型企業』として、経営内容も合理的で戦略も的確な非常に良い会社、J&Jの元会長松本氏が引き抜かれてCEOになっている事も大きく影響してるんでしょうね。

じゃあ、ここからでもドンドン買っていこうよ、という状況なのか?・・・
私個人の企業価値算定で見て、今の経営内容を継続し、大体10年位の長期保有の場合、更に3倍(実質)近い上値余地を見込んではいますので、何ら保有継続に不安感はありません。

ですが、これ、スピード感、時間価値という観点から年率に引き直した時、このレベルから組み入れた場合、10%程度です。それぞれの期待収益率レベルがありますから何とも言えませんが、まあ大した事は無い、と言って良いかな。
だからこそ、『買値』には徹底的にこだわるべき、という御話なんですよね。

よく『投資』と『投機』との対比が語られ、何となく『投資』は長期、『投機』は短期、特に後者はゲーム感覚で値ざやをアグレッシブに取る、FXとかデイトレーダーのイメージです。
勿論、それも正しいのですが、私は価値を見るのが投資、価格を見るのが投機だと考えています。

そしてバフェットも主張している通り、企業価値というのは将来のキャッシュフロー(DCF)でしか測れません。
『The Warren Buffet Way』でも、その『論争』が取り上げられているように、『将来のキャッシュフローを推計するのは難し』く、『還元率の決定、適用についても、算出には大きな誤差が見込まれる』、つまりはキャッシュフローを算出するに当たっての諸々の変数は、還元率も含めて『イイカゲン』にならざるを得ない訳ですよね、当然。

そこでバフェットに反論している連中は、PERだPBRだ配当利回りだ、という比率を使う事を主張している・・・
でもハッキリ言って、そんな単独期の指標、殊に長期で企業価値に『投資』をする際には『全く参考にならない』モノです。言ってしまえば、そんなスタンスで『株価』を買うのは『投機』に他ならないと思っています。

ちょうど最近、以前の職場(別々)の同僚FM2名と久々に会って運用談義をしましたが、やっぱり共通するのは、最終的な理想はバフェットに尽きるよねーと言う所。まあ、そういう考えじゃないと運用に関しては価値観を共有出来ないですけど。

ただ、実際の運用については、全員が独自のスタイルを模索しています。当然担当しているファンドの特性や顧客のニーズも異なりますし。

だからタイトルの『ファンドマネージャーの流儀』は各人各様ではあるけれど、常に『妥協なき専心』で完璧を追求し、模索し続ける姿勢・野心が絶対に必要で、そこが無いFMは馬に蹴られて・・・じゃなくて、即刻退場すべきですね。

元に戻ってDCFを使うという事、要するに、将来FCF(=投資家に帰属するキャッ
シュフロー)と、その割引率(=投資家の期待収益率=企業の資本コスト)という二つの因数で現在価値を割り出すという事は、過去に数限りなく見てきたような、『でっち上げ』が簡単に出来てしまう会計上の利益では無く、正に企業のリアルであるキャッシュフローを最大の因数にしているという点に於いて、全ての企業価値算定よりも優れています。

良くこうした単独期指標を色々な比率で組み合わせたモデルを使う運用会社などは多いですね。
取引量などの市場環境を勘案して、投資タームと組み合わせて過去の相関関係をプロットしていく・・・というような手順で練り上げていくパターンが多いかと思われますが・・・短期的には株価推移のクセを捉えやすく有効かも知れませんが、長期投資という観点では基本無意味です。上記の基準を当てはめれば、『投機』には効くかも知れませんが、『投資』には使い物にならない。

大体、もし数ヶ月単位(もしくはもっと短期)でポートフォリオの入替え(組入れ銘柄の売買)を頻繁に行えば、当然ポートフォリオ回転率が上昇します。
ファンドによってはこれに制限が掛けられている場合もありますし、そもそも取引コストが上昇する分、期待収益率も上げざるを得なくなります。本末転倒ですよね。

この売り買いの回転率を極力少なくする事は投資収益率を上げる事になる、というスタンスはバフェットの基本でもあります。
1年以上保有出来ない企業(勿論、何がしか事後的に重大な変化が起こった場合は別)に投資する事に意味があるとは到底思えませんね。

ROEについては、スタート段階のザックリしたスクリーニング指標として使用しますが、最終的な投資判断には使いません。勿論資本効率を見る上では優れた指標だと思っていますが。

まずは自分の中に核となるテーマを持つ、私の場合は、以前から何度も書いている通り、ニッチトップ企業である事、そして長期の趨勢である経済のDeleverage&Minimizationの流れに則している事、自分が理解出来て、土地勘ならぬ投資勘が持てる所であれば、特にセクターなどは問わず見ていきます。

そして、DCFの批判派からは欠点とされているけれど、個人的には最大のメリットだと思うのは、企業価値評価を行う上で、適正な変数を得る為には、当該企業のビジネスモデル(=バリュードライバー)の把握が絶対的に必要である事、その商品や製品が属するマーケットに関する考察や財務オペレーションの合理性の検証、そして意思決定を行う際の基準などに至るまで、分析し考え抜かなければならない、という点です。

バフェットの言う通り、キャッシュフローの予測を自信を持って出来ないようなら、企業価値判定を諦めるべきで、尚且つ、そうした作業を経る事で、数字とリアルが密接にリンクし、その後の状況に応じた修正が非常に明確に出来ます。

私が『機動的』と考えるアプローチは・・・例えば上記のような作業の中で、事業セグメント毎にも付加価値を見ていく訳ですね。

具体的にはEVA(Economic Value Added:NOPAT-投下資本×WACC=投下資本×(ROIC-WACC))で算出し、WACCがROICを上回っている事、つまりEVAはマイナスになっていない=事業価値を毀損しない事を確かめますが、もし毀損している事業があったとすれば、改善の余地はあるのか(具体的に動いているのか)、もしくは、以前の記事で書いたクアルコムのように、携帯電話機や基地局ビジネスをとっとと捨てて、チップとライセンスという最大の価値を生み出す知財ビジネスのコアに集約する、などの大胆な『変化の胎動』が見込まれるかどうか、等、所謂イベントドリブン的な動きを拾っていくやり方です。

但し、このクアルコムのように、一時的な調整などではなく、企業そのものの存在意義の変化、長期に渡る企業価値へのポジティブな影響を伴う場合のみですけどね。

前半に書いた『買値』に徹底的にこだわる、というのは、どんなに『良い会社』でも価値から算出された妥当な価格という物があり、リスクプレミアムを加えた(=不確実性を反映させた)期待収益率と安全余裕率を十二分に取ったレベルでなければ組み入れてはいけないからです。
『いい会社なら買値は気にするな』などというのは世迷言である、とバフェットも明確に述べていますね。

まあ、こんなプロセスを徹底的に自分のスタイルでこなして行く事で投資判断は下されます。

バフェットの言う通り、『いかなる手間も惜しんではならない。正しい列車に乗りさえすれば、金と痛みを節約出来る』
という事に尽きます。