ここまで書いてきて、もう気が付いている人もいるかもしれないが、

西城秀樹の芸能界でのアイドルとしてのエスタブリッュの物語は実は、

〝新御三家〟がどのようにして成立したかを記録した物語でもある。

 

ゴローとジュリーが新しいアイドル像の原型を作る作業を始めた。

日劇のウェスタン・カーニバルを舞台に、まず田頭信幸が脱落した。

伊丹幸雄と秀樹が残った。そこに8月デビューの郷ひろみが参入する。

『平凡』の11月号では、はっきりとその方向性が見えてくる。

これが1972年11月号。発行部数は130万部 実売は122万6379部。

秀樹がけっこうデビューから苦労しているのに比較してだが、

郷ひろみの登場は迫力もので順調だ。

というか、『平凡』での彼の担当記者はかくいうわたしだったのだが、

郷はジャニー喜多川によって戦略的にマネージメントが行われていて、

このころ、一番人気のあったフォーリーブスの手厚い援護射撃を受けて、

緻密な計算の中で、スターの座にたどり着こうとしている。

これがわたしが彼(郷ひろみ)のために初めて書いた原稿。

知り合ったのはこれより半年くらい前、素直な子供だった。

レッスンを重ねてデビューした。

1972年3月号の目次のなかの紹介コラム。

その後、6月号ではこういう扱い、

『青いリンゴ』を大ヒットさせた野口ゴローと

この年の春に、最大のキャンペーンを展開した伊丹幸雄と

まだデビューしていないヒロミが並んで紹介されている。

8月号では〝今年の売れっ子 さわやか16歳〟というタイトルで

今度は野口五郎、伊丹幸雄、麻丘めぐみの3人とグラビアで登場。

伊丹幸雄は野口五郎の隣のページ。

郷ひろみは麻丘めぐみと1ぺージずつ。据わりのいい感じ。

秀樹はなかなか良さが理解されず、この号での扱いは小さい。

郷ひろみは8月デビュー。

9月号では郷は特別扱いで雑誌冒頭の折り込みで

フォーリーブスのとなりに1ページのポートレートがつき、

伊丹幸雄は芸能界の若き御大とも言うべき沢田研二と対談。

伊丹は新人だが、同じ渡辺プロの先輩の援護で実現した企画だ。

それとは別にモノクログラビアだが、7月の平凡アワーがすごかった。

北海道と静岡。

伊丹幸雄が大信田礼子らをリヤカーに乗せて引っ張っている。

北海道はにしきのあきら、野口五郎、伊丹幸雄、ゴールデンハーフなど。

静岡はフォーリーブス、郷ひろみ、野村真樹、山口いずみなど。

野口五郎はこのほかに付録で全身大ポスター、和田アキ子との対談。

9月号での秀樹は前々回、説明したように

大きく扱われているところはないのだが、企画特集とか

ニュースとか、スケジュール告知とか読者プレゼントとか、

いろんなところに少しずつ顔出しし始めている。

やっと、その存在価値が認められてきた感じ。

このとき、秀樹は実力というか見た目のハンサムもあり

日劇のウェスタンなどではやたらに注目を浴びていて、

彼が登場すると、客席が熱狂で大騒ぎだったという。

日劇の写真は8月末の撮影、10月売り(11月号掲載)、

右が西城、左は伊丹。ステージでは伊丹を圧倒し始めた。

このあとの10月号。発行部数139万部、実売129万0685部。

この雑誌のなかで大きく扱われているのは、こういう人たち。

………

表紙は野口五郎と麻丘めぐみ。

ポスターが天地真理、沢田研二、フォーリーブス、にしきのあきら、野口五郎、

定期入れサイズのカラー写真が南沙織、伊丹幸雄、郷ひろみ、栗田ひろみ、

綴じ込みが小柳ルミ子、石橋正次、志垣太郎、吉田拓郎、

これが目次。

天地真理と沢田研二の顔合わせグラビア。活版では天地は堺正章と対談。

野口五郎と麻丘めぐみの対談、フォーリーブスと南沙織の対談。

そして、これが問題の郷ひろみと伊丹幸雄の「H質問対決」

ひろみのうぶな優等生回答が目立つが、

このころのひろみはまだ純朴な少年だった。

これは企画としては面白いのだが、ちょっと残酷なところもあり

これまで伊丹のファンだった人たちを

郷ひろみのファンに移動させる効果があったのではないか。

郷はこの号でも特別扱いされたページがあり、それがこれ。

ランニングシャツのプレゼントにカラー1ページをつかっている。

こういう状況で、この号では秀樹は完全に無視された扱い。

スケジュール告知以外、出番がなかった。

ところが、11月号はすっかり様相が変わっている。

秀樹が巻頭に大々的に登場するのだ。

郷、伊丹もそれにつづく形。

これは編集方針が大々的に変わった、というか、

編集部の考え方がそっくり変わった、ということだった。

秀樹を再認識し、再評価、扱い方を軌道修正しているのだ。

原因は7月発売の秀樹のセカンド・シングルが大健闘して

無視できない成績を収めたことと、

日劇のウエスタンでの熱狂的なファンの出現、

あらためて新人らしからぬ歌のうまさ、

うたっているときのエネルギッシュを再認識したことにあった。

巻頭のポートレートのほかに、2色オフセットでは

「ワイド特集 つかまえろ!フレッシュ3」という括りで、

郷、伊丹、西城をそれぞれ2ページで取りあげている。

秀樹のページ、多分、櫃間記者が書いたもの。

櫃間は勝負ごと(博打)に強い編集者だった。

秀樹はあらためてプロフィールを大々的に紹介される形になった。

これが郷ひろみのページ。たぶん、わたしが書いた。

こちらは伊丹幸雄のページ。ナベプロ担当のT氏の作品。

企画の質から言えば、西城の裸の写真を載せたページは

郷や伊丹の読みものっぽいページよりアピール力は強い。

そして、活版ページではこういうところに登場している。

3ページの特集。白い矢印が秀樹。

秀樹はこのころ、まだ明大附属中野の高校生だった。

下段の写真は、堀越学園の郷ひろみと永田英二。

次のページに、こんなひとこまが大きくレイアウトされている。

これはこれで秀樹のキャラクターの楽しさを的確に伝えている。

つまり、郷ひろみと西城秀樹がふたりがかりで

伊丹幸雄を排除する構図ができあがる。

それが12月号に形になって出てくるのである。

これが問題の12月号である。

この号の発行部数は131万部、実売は121万7679部。

表紙は郷ひろみ、伊丹幸雄、天地真理。

10月末から11月下旬にかけて売られた。間もなく、

年末の新人賞レース、紅白歌合戦のメンバー選び、

そういう動きが活発になろうとしていた。

この本が作られた背景は複雑である。

 

つづく。