後も逢はむ | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 梨棗(なしなつめ)(きみ)に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く

 巻16 3834 作者不明

 梨、棗、黍それに粟と次々に実っても早々に離れた君と今は逢えないけれど延び続ける葛のように後にでも逢うことができようと葵(逢ふ日)の花が咲いています

 秋に実る果実や穀物を「掛詞(かけことば)」のように使って戯れに詠んだ歌と解釈しました。「梨」は、現在の梨とは異なる小粒な実のなる「妻梨(つまなし)の木」で、妻にする(妻成)と妻がいない(妻無)と意味の異なる二つの説があるそうです。「黍に粟つぎ」は(君に逢はず)、「延ふ葛の」は(後も逢ふ)の枕詞、「葵花咲く」には(逢ふ日)が懸かっています

「葛」の生命力は呆れるほどすさまじく、家の周囲でも人の手が加わらない場所は(葛)や(カナムグラ)で覆いつくされています。地面に目をやると(ドクダミ)の繁殖力も驚異的で深く掘って根を取り除かないとどこまでも増え続けます。体力が落ちて処理に困っています。

 巻16には、『由縁(ゆゑよし)有る雑歌』として、この歌のような男女の「係恋歌」や「戯笑歌」、諸地方の民謡・芸謡が集められています。

 

「賣太(めた)神社」は古事記編纂に携わった稗田阿礼(ひえたのあれい)を主斎神として祀っています。学問や物語の神でもあります。副斎神として芸能を司る神「天鈿女命」と土地・方位の神「猿田彦命」も併せて祀っています。