皆さん、ご無沙汰しています。

 

 インスタグラムをフォローしてくださっている方はお気づきの通り、昨年からロサンゼルスに拠点を移しました。

 

 

 

 

 近況報告を...と言いたいところですが、それにしても、こんなにも世界が大きく変わってしまうなんて。カリフォルニアも外出禁止令が出てもう1ヶ月以上経ちますが、感染はなかなか止まず、とにもかくにも家にいることが、人の命を救うことだと信じて日々過ごしています。

 

 悲観的に状況を綴るのは簡単なのですが、やっぱり心豊かに過ごしたいなぁ、というのが私自身の想いで、とにもかくにも笛を吹く毎日。息を音にし、音色を紡ぎ、その返ってくる響きに驚くほど自分で自分が癒され、誰よりも私が一番、笛に助けられているかもしれません。

 

 今、インターネットを見ていると、コロナに負けるな、乗り越えよう、頑張ろう、という言葉をたくさん目にします。きっとこうした言葉の数々が日々の支えになり、励ましとなるのでしょう。日本人らしく前向きで素敵だと思います。実際に日々ウィルスと戦っていらっしゃる医療従事者の方々、私達の生活を回すために外に出て働いてくださっている皆さんのことを思うと、本当に頭が下がります。

 

 でも、どこにウィルスが潜んでいるかわからない、自分が感染する不安もさることながら、無症状でも誰かにうつしてしまうかもしれない。適応しなければいけない生活の変化に追われ、悲しいニュースも目にしてしまう、言わずもがなの非常事態。きっとどれだけ前向きに過ごしていても、知らず知らずのうちに緊張の糸は張ってきてしまいます。

 

 私、日々戦うことに疲れたら、少しくらい心を緩めて泣いても良いんじゃないか、と思うのです。これだけ頑張っているのだから、弱音の一つ、近しい人に吐いてもいいと思うのです。心の奥の本音を吐露して、ちょっと涙を流すことで、そのあとの自分の心が軽くなるのであれば、その涙は大きな生きる力になります。

 

 

 私自身、近所の海岸で夕陽を見ていた時に、ふと意味もなく涙がこぼれ落ちたことがありました。悲しいことがあったわけでもないし、カリフォルニアでの生活はとても恵まれています。でも異国の地で生活を始めたばかりの緊張や環境の変化、そして自分自身に無意識に課していた沢山のノルマ、それが積りに積もってどこか無理をしていたのでしょう。その夕陽から「頑張ってるけれど、今、この時間だけでも少しやすみなさいな。」というメッセージをもらった気がして、ぼろんぼろん泣きました。そして、ひとしきり泣いて、ふぅ、と息を吐いた時に、信じられないくらいに心が晴れやかになっていることに気づきました。涙には大きな大きな浄化力があるのですね。

 

 その時、自然と私の中に流れてきたメロディーがあります。まさに夕陽からもらったメロディー、すぐにアパートメントに戻り、笛を持ちました。私にとって大切な大切な宝物になりました。

 

 今私にできるのは、みなさんに音をお届けすることです。私の笛の音が、もし皆さんの心にほんの少しでも安らぎをお届けすることができるのならば、これほど嬉しいことはありません。

 

そんな想いで、皆さんへ、夕陽からもらったメロディーを吹きました。

 

リコーダリストであり、私の25年来の師匠でもある吉澤実先生。

コンサートソムリエの朝岡聡さん。

リューティストの永田平八さん。

 

いつも日本でのコンサートでご一緒させて頂いている大先輩お三方にご協力を頂き、リモートカルテットを作りました。私のリコーダーアレンジに、永田さんが美しいストリングスとリュートを加えてくださって、温かなハーモニーになりました。朝岡さんが素敵なメッセージを添えてくださいました。

 

日本とロサンゼルスから心一つに。

今、頑張っているすべての皆さんに、少しでも心の安らぎを。

 

この曲を聞いて、ほんの少しの間、心の糸を緩めてくださったら嬉しいです。

 

 

-Dedicated to all those coping this moment.

今頑張っているすべての皆さんへ。

吉澤実•朝岡聡•永田平八•柴本幸