先月、グラフィックデザインをされているMさんと、行きつけの沖縄料理屋さんで久しぶりにお会いしまして。
時間があれば美術館や映画館に足繁く通うというMさん。親子くらい離れたお歳なのだけれど、好きなものが似ているので、お話ししていてとっても楽しく。
よくよく考えると、「ニキドサンファールによう似てるなぁ」なんて言われたことから、出会いが始まったのも面白い。その日丁度ニキの展示を見て来られたようで、ぱっと見彼女のイメージが私とかぶったそう。
いやいや、ね。語弊があると嫌なので、説明しておきますが、彼女と似ているだなんておこがましいこと、全く思っておりません、恐れ多い。私その時、黒いロングカーディガンに赤いベレー帽をかぶっていたので、多少ニキの服装と似ていたくらいのことでしょう。
でも、私がパリで回顧展を見て大好きになったニキのことを、まさか地元の沖縄料理屋さんで話せるとは思いもよらず。それ以来、偶然お店でお会いすると、映画やら美術やら色んなお話をさせて頂いております。
その夜の話題はもっぱら映画のこと。私が産まれる前の映画の話を山ほどご存じなので、興奮して色々話していたのだけれど、そこからケイトブランシェットのキャロルの話になりまして。
私がまだ観てないんですよねー、と言うと、Mさん目の色を変え、「一昨日観てきたんだよ!」と。さすがだ、早い。
どうでした?どうでした?でも内容は言わないで!と迷惑な尋ね方をする私に、「いやー、面白かった、でもそれ観る前にこっち観てほしいぁ。」と。
写真家「ソール・ライター」
ニューヨークで活躍したカメラマンで、カラー写真のパイオニアと呼ばれていたらしいのだけれど、私は今まで名前を聞いたこともなく。
「キャロル観てると、あーーソール・ライターの世界を表現したかったんだなぁと思うようなところが、いくつも出てくるんだよー。」
と、Mさん。丁度ソール・ライターのドキュメンタリーを同時期に上映していて、彼の世界観とキャロルが、時代背景も含め大きくかぶるものがあったそう。
「ここで話してるのも何かの縁だし、是非ともソール・ライターを観てから、キャロルを観て欲しい!」
熱弁を振るうMさんに、さすがに私も心を動かされ、そんなに言うなら観にいきます!と約束したわけで。
うちに帰って上演館を調べるも、そもそも上演館数が恐ろしく少ないし、そればかりか上映回数は1日1回というところ。スケジュールと照らし合わせてもなかなかタイミングが合わず、どうしようと頭を悩ませ。
このままだと双方共に延ばし延ばしになってしまうし、観られるところで先に観てしまおうと、まずはキャロルを観ることにしたわけです。
もちろんLGBT の視点で見ることも出来るだろうけれど、私には、社会の価値観とちょっとだけ違うベクトルで生きている人たちが、疲れて少しだけ逃避している姿を追っているように見えました。
とにもかくに主演の2人の佇まいが恐ろしく美しく。どんなに哀れなことをしようとも、威厳のあるケイトブランシェットと、まるで動物のようなルーニーマーラーが対象的で。丸裸になって、初めて女性に身を預けるルーニー・マーラー、顔の火照りから何から、見ていて恥ずかしくなるほど生々しかった。
何がどうなる話でもないのだけれど、あの映画の世界と2人が呼応しているのを見るだけで、なんだか満足で、不思議な充足感のまま映画館を後にしたのでした。
衣装も素敵だったなぁ。ちょうど祖母があぁいうワンピース持ってたなぁ、とか思い出し。あの時代のエレガントな装い、現代に戻ってこないだろうか。
ある意味動物園みたいだけれど、やっぱりどこか中毒性があって、自分が動けばドラマの生まれる街。
会いたい人たちがいっぱい。今年はいつ行けるかなぁ。
続きはまた今度。