夫と知り合った頃に私が最も熱中していた趣味はオペラでした
結婚してすぐの頃、
魔笛というモーツァルトのオペラ公演に夫を誘って行きました。
夫は初めて生のオペラを観たそうで、
機会があればまた一緒に行こうと言ってくれました
ただオペラ公演のチケットは非常に高額なので、
そう頻繁に行けるものではないのですけどね
メトライブビューイングといって、
メトロポリタンオペラの公演を映画館で観るというシステムがあるのですが、
普通の映画よりはもちろんお高いとはいえ、
一流の公演をリーズナブルに楽しめるので、私は足繁く通っていました
比較的難解でなく、
楽しめそうな演目があれば夫と観にいったりもしました
その時も夫は喜んでいました
一流歌手の迫力に圧倒されるとも言っていました。
そんな風にオペラに関心を寄せてくれていたにも関わらず、
ある時からオペラを目の敵にするようになりました
私が家でオペラのアリアなどを聴いていると、
怒鳴りつけるようになったのです。
訳もわからず理由を尋ねると、
歌詞が問題だというのです。
歌詞
通常アリアを単独で楽しんでいる時に、
私は歌詞なんて聴いていません。
単なる美しい音楽として、
鑑賞しています
そもそもほとんどの場合イタリア語、ドイツ語、フランス語です。
英語もままならない私にわかるわけがないのです
もちろんオペラを観に行く時には、
歌詞やあらすじが大事になってくるので、
一生懸命予習をしていきます。
高いお金をだして足を運ぶのですから、
楽しみ尽くす、
味わい尽くすつもりで頭に叩き込んで挑むます
しかしオペラの楽しみは必ずしも物語や、
歌詞によるものではないのです。
訳がわからなかったり、
バカバカしいような作品でも、
オペラとしては高い評価を受け、
愛されているものはたくさんあるのです。
しかし、
夫は例のネチっこい猜疑心でネットなどで有名なアリアの歌詞を調べ、
報われない恋の歌などを悲しげに歌い上げるという、
多くのアリアに当てはまるそのテーマに怒り狂いだしていたのです
浮気相手への報われない思いを重ねて聴いていやがるな〜
今後いっさいオペラは禁止だ
キリシタンを禁じる江戸幕府ですか
英語や言論の自由を禁じた戦時下のお国ですか
この民主主義な現代日本で、
どこの横暴独裁者ですか
ヒットラーより、北朝鮮より、
どこの独裁者よりも横暴だ
必死で訴えかけました
親身になってくれていた警察の人にも呆れかえられまくりでした
まあ、あきれかえられまくりなことは他にもたくさんあり過ぎて、
警察の担当者も段々麻痺して驚かなくなりつつありましたが
泣く泣くオペラを封印しました
隠れキリシタンになる勇気もありませんでした
今でもオペラの本を読んだり、
曲を聴いたりしようとする時、
身体が震えます