パリ?
ルミ子もアタシも、生まれてはじめてだ!
でも‥‥少しは知っている! 世界のパリ‥‥小説で読んだ。映画で観た!
多分‥‥日本と違う!
でも‥‥何が違うか‥‥ゼンゼン知らない!
幸い、高校時代にほんのチョッピリ、フランス語を勉強したことがある。
初級フランス語の、1ページ目を繰ったところで辞めちゃったけど、爪の垢
ほどの会話が通じた。
さて‥‥セーヌ河下流‥‥ミラボー橋の下で『自由の女神』をうち眺め、呆
然と四囲を眺めてから‥‥「サンジェルマンに行こう」となった。
サンジェルマンは学生街だ。なにかと安いだろう。安い宿があるだろう!
またまたトランクをタクシーにぶっこんで、サンジェルマンにやってきた。
喫茶店にルミ子を座らせ、トランクを運びこんだ。
「ここで待っていてね、イッチバン安いホテルをさがしてくる!」
その辺を歩きまわった。間口一間ほどのホテルが何軒か‥‥細くて暗~い階
段が見える。
「アロー、一泊おいくら? そう‥‥また後でくるわ‥‥」
界隈を歩きまわって、いちばん値段の安いホテルに荷物を運び込んで、わぁ、
薄暗~い、せま~い階段を、でっかいトランクを引きずりながら最上階へ!
最上階で部屋のドアを開けたトタン、階段の明かりがパッと消えた!
シェー! パリはきびしいなぁ!
部屋は50へーべぐらいはあったかしら? ドアの向かいにガラス窓。
アラッ‥‥入った右手‥‥壁際に、便器みたいな設備が見えた! 白いホウロ
ウ製である。トッペンのボタンを押すと、水が噴水のように噴き出した。
殿方は‥‥当時パリにきた殿方は‥‥
「おい、ありゃナンだい?」
「何だろうなァ?」
ボクは‥‥とパリで出会った井上さんという中年男性が言った。
「なんだかわからないけど‥‥水がでるのでね、ハンカチを洗ったよ」
顔を洗ったという殿もいたし、いや、あれは便器だ、ウンチをした、という殿
もいた‥‥が、アレは【ビデ】だと、アタシは一目で理解した!
へぇえ、パリはすごいなぁ! セックスは朝ごはんと同じかも!!!
日常、何が行われているか‥‥目の当たりに見せつけられて‥‥さすがにアタ
マがグラグラした!