コンビニの店員と戦う。
仕事帰りにほぼ毎日立ち寄るコンビニがある。
飯買ったり、ビール買ったり、タバコ買ったり、マンガ買ったり、エロ本買ったり。
仕事帰りの時間帯にしか立ち寄らないので、店内にいる店員の顔ぶれはいつも決まっている。
まぁ大抵は『深夜』といわれる時間帯になってしまうので、ほとんどが男性店員だけど、夜と深夜、微妙な時間の狭間に立ち寄ると、可愛い女の子がレジに立っていることもあり、そんなときは二つのレジが稼動中であっても下心丸出しで女性店員の打つレジの前に並ぶのである。そんな時は 『お待ちのお客様こちらのレジへどうぞ』 なんて男に言われても無視。
せっせと通いつめた結果、最近ではタバコを買うときにも銘柄の指定をせず 『タバコください』 と言っただけで自分の愛飲するタバコが出てくるほどとなっている。当然ボックス、ソフトパックの指定も無用だ。弁当に関しても、購入後直ぐには食べない私は温めないことがほとんどなので、マニュアルに基づいた 『お弁当は温めますか?』 の言葉もかけられることもない。
私自身、学生時代にはコンビニでアルバイトとして深夜勤務を経験したことが数年あるのだが、深夜の客と言うのは大抵がリピーターで顔なじみが多く、その購入する商品の規則性、特徴などはバイト連中の頭の中にはインプット済みだ。
深夜には変な客が多い。従って店員はあまりそいつらと関わりを持ちたくないので、余計なことは一切口にはしない。さっさと自分に与えられた仕事をこなし、明け方に届けられる最新の週刊誌を読破する時間をひねり出すことに専念するのである。(私の場合はそうだった)
先日珍しく残業も無く定時に職場を離れ帰路についた。いつものコンビニに立ち寄ったのも、多分始めてであろうと思われる午後6時。店内をうろつく定員の数はいつもより多く、さらにはあほみたいに元気がいい。『いらっしゃいませ~』の声がウザいほどにでかい。
雑誌とビールを手にし、ふとレジに目をやると、明らかに学校帰りの女子高校生らしきアルバイト店員が立っていた。胸元には(研修中)の文字が何だか初々しく見える。
下心丸出しの私は当然のようにその娘の前に商品をおいた。タバコも買わねばならなかったが、初対面の彼女だったので、ちゃんと銘柄を指定。
合計金額は 1,691円 であったので、2,201円 を手渡す。
レジ娘 『すいません、201円多いのですが・・・』
ん?そうか?いや、間違っちゃいないはず。
510円のおつりをもらえば間違いないはずだ。
小銭を放出したいので、こんなハンパな金額になってしまったが、これで良いのだ。
オレ『すいません、小銭がたくさんあるので使わせてください』
小娘相手に丁寧に、そんで下手に対応。しかし小娘は納得がいかない様子で反論してくる。
レジ娘『え~?でも 1,691円ですよぉ~2,000円で足りるじゃないですかぁ?』
なんだコイツは・・・。
こっちの意図をまるで理解していないのか、もしくはおちょっくてるのだろうか・・・。
とにかく困った。一度出した金を引っ込めるのもカッコ悪い。俺の 小銭がたくさんあるので使わせてください って言葉が気にいらなかったのだろうか・・・。とにかくもう一度ちゃんと説明し頼んでみた。
オレ『私の財布の中にはですねぇ、現在小銭がたくさんあって困っていたんです。ならば今回の支払いを全て小銭で済ませることが出来るくらいなんです。ですがさすがにそれじゃ迷惑だろうと思い、こんなハンパな支払い方法になっちゃったんですよ。申し訳ないですけど、これでお願いできませんか?』
どーだ!これならば文句ないでしょ?
しかし、レジ娘は更に反論してくる。
レジ娘『でもこれじゃレジの金額が合わなくなっちゃうので困りますぅ』
迂闊だった。俺の言葉が足りなかったのではなく、彼女の算数に対する理解度が足りなかったのだ。販売総額に対し代金として受け取った金額、そしておつりの関係を理解していない。端数をいじられると処理できないようだ。何を隠そう教員免許なんて無用の長物を所持している私であるので、小一時間ほどの猶予を与えてくれるならば、この小娘に充分な理解を与えてやる自身はある。だがしかし、今のところレジには他の客が並んではいないが、いつ長蛇の列になってもおかしくはない状況でそんな余裕はない。仕方ないので最も簡単な指示を、客でありながら彼女に与えた。
オレ『俺を信じて2,201円って入力して年齢層ボタン押してくれ!』
※コンビニのレジでは、相手の年齢層を店員が目視で判断し、20代・30代なんてボタンを押すと精算完了となる。
レジ娘『やだ!間違ったら店長に怒られるもん』
だめだ。久々の強敵出現に成す術がない。侮っていたがコイツはかなりのバカだ。脳みそには結構でかい腫瘍が根付いているに違いない。いや、ちょっとうつろなあの目から想像すると、その腫瘍は脳に宿ったクリトリスに違いない。それが刺激されて常時いっちゃってるに違いない。刺激は脳直撃に違いない。
クソッ!こうなったらいじってやる。いじり倒してやる。その脳みその突起物を。そして昇天させてやる。
オレ『それじゃ質問ですが、ここで私が5,000円とか10,000円とかを出したならば、やっぱり2,000円で足りるからって拒否されちゃうんですか?10,000円札しかなかったら買い物できないってこと?』
どーだ!?さぁなんて答えるんだ?
レジ娘『だってそれは10,000円ちょうどだから大丈夫なんです』
・・・・・。
燃え尽きた。渾身のパンチに余裕でカウンターを合わせられたが、そのパンチは俺を倒す気がまったく無く、ちょこんっておでこに触れられた気分・・・。いつでもお前を倒せるんだ!もっともっと遊んでやるんだって見せ付けられた気分だ。もう手を出し尽くした私は八方ふさがりで、この場を直ぐにでも逃げ出したい気分でいっぱいになった。今望むのは、この後無限に続く宇宙的規模な広がりを見せる無理問答の終焉と、すっかりパンチドランカーと化した私の情けない姿を察して、誰かがタオルを投げ入れてくれることくらいだ。
しかし、俺も男。KO負けだけは避けたい!なんとか最後まで立って判定負けでもいいから根性を見せたい!って反撃の機会を窺っていたら、勝敗はあっけなくついた。相手側のセコンド(店長)がタオルを投げ入れたのだ。
レジ娘『あっ!店長!!』
店長『お客様すいませんでした。510円のお返しでございます。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。彼女には充分教育しておきますので』
結果、私のTKO勝ちとなったが、試合内容的には完敗だったことは否めない。
特筆すべきは、深夜にこのコンビニに買い物に行ったときに、気だるそうに雑誌読んで、仕方なさそうにレジを打っているヤツが店長だったってことだ。
以上。