苦手な方はご注意くださいませ
Side O
家のあるマンションに着いたのは、真夜中を数時間過ぎたころだった。そうっと寝室を窺うと、ドアの隙間から照明の光が漏れていたものの、しんとしている。
また電気つけたまま寝ちゃったのかな…
風呂を見ると入った形跡があった。
今日はわかったのか…よかった…
俺も入っちゃおう…
そんで、今日はもう、ソファで寝ようかな…
ベッドで寝て、ニノを起こしちゃって、またキスとかしちゃったら…自分を抑える自信は、もうなかった。
ささっとシャワーを浴びた後、ブランケットだけ取ろうと細心の注意を払って音を立てないように寝室に入った。
…はずだった、のに。
「大野さん?」
寝ていたニノが起きてしまった。眼をこすりながら起き上がる。
「大野さん…」
ニノはベッドに座ったまま、じっとこちらを見つめて、小さくゆっくりと俺の名を呼んだ。
Side N
夢を見てた。
大野さんの匂いのするベッドで。
泣いてる俺を大野さんがぎゅっとしてくれんの。
ふわふわして、あったかくて、くすぐったくて。
ふわふわしたまま起きたら大野さんがいて、ドキドキした。
大野さんは、シャワーを浴びたのか、寝巻きにしているTシャツと短パン姿だった。
「わり…起こしちまった…」
大野さんは焦ったような声で言って俺を見た。
大野さん、俺、大人に戻ったよ
子供になる前、電話でひどいこと言ってごめん
会いたかった
伝えたいことが、頭の中に洪水みたいに溢れて、言葉が出てこない。
「ニノ、どした?寝ぼけてる?」
「あ…の…」
大野さんが近づいてきた。
「ん?」
「あの…」
ああ…伝えたいことはいっぱいあるけど…
何よりも、
大野さんに触れたい…
もうちょっとだけ、
『子供』のままで…いいかな…
俺は、大野さんに向けて両手を広げた。ありったけの勇気を振り絞る。
もうちょっとだけ、
『子供』のままで…いいかな…
俺は、大野さんに向けて両手を広げた。ありったけの勇気を振り絞る。
「抱っこ…して…」
頰が熱い。自然と、瞬きが多くなった。
子供のときは普通に言ってたけど…
大人に戻って言うの超絶恥ずかしいな…
「ん…」と大野さんは優しい声で頷くと、俺に近づいた。寝巻きにしてる半袖から伸びる、細いけれど逞しい腕が俺に伸ばされる。肩を抱き寄せられて、大野さんの匂いが鼻先をかすめたかと思うと、俺は大野さんの腹に顔を埋めていた。
どうしよ…体温気持ちいい…
大野さんの匂い…すげぇ好き…
大野さんの腰に回した腕にぎゅっと力を込めたとき、大野さんの嬉しそうな声が上から降ってきた。
「ニノ…もしかして…大人に戻った?」
「へ?」
慌てて顔を上げると、大野さんが期待に満ちた目で俺を見つめていた。
…なんで…バレた⁈