苦手な方はご注意くださいませ
Side N
大野さんは、あの日と同じくらい、ぎゅっと強く、痛いくらいに俺の手を握って、小道を歩いていた。
違うのは、あの日はキスする前で、今日はキスした後ってことだろうか。
ああ、俺としたことが
こんなこと、
考えるなんて…
人生の時系列を、誰かとのキスで区切ったことはなかった。強いて言うなら初めてのキスくらいか。
これからの人生は、大野さんとキスした後のことになんのか…
そんなことを考える自分に恥ずかしさがこみ上げる。ぎゅっと手を握り返すと、隣を歩く大野さんは、んふふ、と照れたように笑った。
照れるよね、やっぱ…
庭の小道は木々の中を進み、途中いく通りかに分かれたけれど、大野さんは来た道のせいなのか、どんどん歩いていった。
ホテルの正門までたどり着いて、大通りに出る。遅い時間のせいか、車や人は少なかった。
そのとき、一台の車がすうっと俺たちの方へ近づいてきた。
運転してる奴、なんか見覚えが…
「あ、マル」
大野さんが呟くのと、車が俺たちの前で止まるのは同時だった。
「ニノ、おおちゃん、大丈夫やった?乗って」
マルは後部座席を指して俺たちに乗るよう促した。
「ありがと」
大野さんはお礼を言って、俺の手をつないだまま乗り込んでいく。
「はあぁ…何それ、そういうことなん?」
突然、マルが運転席に突っ伏した。
「へ⁈ 」
「マル、どしたの…」
マルはくるっとこっちを見て、俺たちのつないだ手を恨めしそうに見た。
「おふたりさん、そういうことなんやろ?」
「や、その…」
俺は気まずくなって手を離そうとしたけど、大野さんは離そうとせず、反対にぎゅっと握った。
「そういうことだから」
「お、大野さん…」
「マジで…まさか今日⁈ 」
大野さんは車の中でもわかるくらい真っ赤になった。
「…今日」
大野さんが小さく呟くと、マルはまた大仰に運転席に突っ伏した。
「はあぁ…マジで…心配して来てみたら…」
「や、マル…その、ごめん、ってかありがと」
俺がテンパり気味で色々言うと、マルはこっちをジロッと見た。
「じゃあ、ちょっとつきおうて?」
「は⁈ 」
「もう今夜は…俺の失恋パーティやで‼︎ 」
マルはそう言ってエンジンをかけた。
「な…失恋って…」
「失恋言うたら…失恋やんか」
今度は俺の頰が熱くなる。
マル、ごめん…
「そんな顔せんで、ニノ。今日、ふたり一緒に飲み明かしてくれたら忘れるわ」
「なんで俺たち…」
「だって、俺を失恋に追い込んだ張本人らやんか」
マルはもう一度、俺たちのつないだ手をちらりと見て口を尖らせた。
「よし、ほな行こ」
マルは車を発進させた。
「や、待ってマル!今日は…」
「どうせふたりきりでいちゃいちゃしよ思てたんやろ⁈ そうはいかへんで〜」
ああ…
あかんわ、もう、と思わず言いたくなるくらいのテンションの乱れ具合…
大野さんの顔を窺うと、大野さんはふふっと笑った。
「大野さんは…その…いいの?」
声を潜めて聞くと、大野さんは頷いた。
「はじまったばっかだから…でも、はじまったから」
大野さんは満足そうに微笑んで、後部座席のシートに身を預けた。俺は、頷いて同じようにシートにもたれた。
はじまったね、俺たち…
今夜のキスから…
人生の時系列を、誰かとのキスで区切ったことはなかった。強いて言うなら初めてのキスくらいか。
これからの人生は、大野さんとキスした後のことになんのか…
そんなことを考える自分に恥ずかしさがこみ上げる。ぎゅっと手を握り返すと、隣を歩く大野さんは、んふふ、と照れたように笑った。
照れるよね、やっぱ…
庭の小道は木々の中を進み、途中いく通りかに分かれたけれど、大野さんは来た道のせいなのか、どんどん歩いていった。
ホテルの正門までたどり着いて、大通りに出る。遅い時間のせいか、車や人は少なかった。
そのとき、一台の車がすうっと俺たちの方へ近づいてきた。
運転してる奴、なんか見覚えが…
「あ、マル」
大野さんが呟くのと、車が俺たちの前で止まるのは同時だった。
「ニノ、おおちゃん、大丈夫やった?乗って」
マルは後部座席を指して俺たちに乗るよう促した。
「ありがと」
大野さんはお礼を言って、俺の手をつないだまま乗り込んでいく。
「はあぁ…何それ、そういうことなん?」
突然、マルが運転席に突っ伏した。
「へ⁈ 」
「マル、どしたの…」
マルはくるっとこっちを見て、俺たちのつないだ手を恨めしそうに見た。
「おふたりさん、そういうことなんやろ?」
「や、その…」
俺は気まずくなって手を離そうとしたけど、大野さんは離そうとせず、反対にぎゅっと握った。
「そういうことだから」
「お、大野さん…」
「マジで…まさか今日⁈ 」
大野さんは車の中でもわかるくらい真っ赤になった。
「…今日」
大野さんが小さく呟くと、マルはまた大仰に運転席に突っ伏した。
「はあぁ…マジで…心配して来てみたら…」
「や、マル…その、ごめん、ってかありがと」
俺がテンパり気味で色々言うと、マルはこっちをジロッと見た。
「じゃあ、ちょっとつきおうて?」
「は⁈ 」
「もう今夜は…俺の失恋パーティやで‼︎ 」
マルはそう言ってエンジンをかけた。
「な…失恋って…」
「失恋言うたら…失恋やんか」
今度は俺の頰が熱くなる。
マル、ごめん…
「そんな顔せんで、ニノ。今日、ふたり一緒に飲み明かしてくれたら忘れるわ」
「なんで俺たち…」
「だって、俺を失恋に追い込んだ張本人らやんか」
マルはもう一度、俺たちのつないだ手をちらりと見て口を尖らせた。
「よし、ほな行こ」
マルは車を発進させた。
「や、待ってマル!今日は…」
「どうせふたりきりでいちゃいちゃしよ思てたんやろ⁈ そうはいかへんで〜」
ああ…
あかんわ、もう、と思わず言いたくなるくらいのテンションの乱れ具合…
大野さんの顔を窺うと、大野さんはふふっと笑った。
「大野さんは…その…いいの?」
声を潜めて聞くと、大野さんは頷いた。
「はじまったばっかだから…でも、はじまったから」
大野さんは満足そうに微笑んで、後部座席のシートに身を預けた。俺は、頷いて同じようにシートにもたれた。
はじまったね、俺たち…
今夜のキスから…
や、違うか。
あの夜のキスから、
ほんとは、はじまってたんだよね…
窓の外に視線をやると、夜空に月が見えた。
「ほら、リーダー、満月だよ?」
俺がつないだ手をきゅ、と一瞬強く握って、もう片方の手で窓の外を指さすと大野さんは、月を覗き込むように外を見た。
「ホントだ…きれぇだな」
ふふ、と微笑む大野さんに微笑み返す。
「はあ…知念くんも呼ぼかな…」
運転席で、マルが小さく呟いた。
-END-
窓の外に視線をやると、夜空に月が見えた。
「ほら、リーダー、満月だよ?」
俺がつないだ手をきゅ、と一瞬強く握って、もう片方の手で窓の外を指さすと大野さんは、月を覗き込むように外を見た。
「ホントだ…きれぇだな」
ふふ、と微笑む大野さんに微笑み返す。
「はあ…知念くんも呼ぼかな…」
運転席で、マルが小さく呟いた。
-END-
アレ♡は続編で♡( ´艸`)
第一部?は終わりです(*^^*)
お読みくださってありがとうございました(^-^)/