日が沈み、遠くの山の端に薄い赤が消え入りそうになっている以外は、深い青が辺りを包む。
櫓(やぐら)の上は、風が通り抜けるせいで涼しく感じた。
大野さんは、他の踊り手の中にいても、一人だけ際立っていた。
薄いように見える大野さんの体は、曲に合わせて豪快なリズムを刻んだり、力強くステップを踏んだり、またある時は繊細な流線を描いた。
流れるように軽やかな動きの中で、時折ぴたっと止まる。静けさを体にまとうようなその瞬間の姿に、俺はまた惹きつけられた。
やがて、他の踊り手達は後ろに下がる形になり、大野さんはひとり、前に出た。
広いと思われていた庭は、大野さんが舞うと、小さく感じられた。大胆な動と、繊細な静が繰り返される。
ため息がこぼれそうなくらい美しいその身体の動きを見ていると、抱きしめられた感触が浮かんできて、俺はたまらず櫓の手すりをぎゅっと掴んだ。
あの軽やかな、重力から解き放たれたように自由な腕に求められて、
大野さんは、他の踊り手の中にいても、一人だけ際立っていた。
薄いように見える大野さんの体は、曲に合わせて豪快なリズムを刻んだり、力強くステップを踏んだり、またある時は繊細な流線を描いた。
流れるように軽やかな動きの中で、時折ぴたっと止まる。静けさを体にまとうようなその瞬間の姿に、俺はまた惹きつけられた。
やがて、他の踊り手達は後ろに下がる形になり、大野さんはひとり、前に出た。
広いと思われていた庭は、大野さんが舞うと、小さく感じられた。大胆な動と、繊細な静が繰り返される。
ため息がこぼれそうなくらい美しいその身体の動きを見ていると、抱きしめられた感触が浮かんできて、俺はたまらず櫓の手すりをぎゅっと掴んだ。
あの軽やかな、重力から解き放たれたように自由な腕に求められて、
薄いけれど、何にも揺るがない、決意を秘めたような胸に、抱かれたんだ…
俺は知らず、自分の腕で身体を抱いた。
「…なんで、あっち行ってまうの?」
西国の城を出る前夜、マルに悲痛な声で尋ねられて、胸が痛かった。
胸が痛くなるのは、
こっちで暮らすことを選んだのは、ほんとうに、単純な理由だったから。
王子になりたかったわけじゃない。
西国がイヤだったからでもない。
単に俺が、
この人の、こんな姿を、
あますところなく、全部見たかったから。
この人の人生を、
ひとつも、見逃したくない。
一緒に生きて、
一緒に笑って、
この人が舞うのを見て、
俺はそれに見惚れる。
バカみたいに、そんなのを繰り返していきたいんだって…
思っただけなんだ…
いつのまにか月が高く上がっていた。
曲が終わって、月を見上げるかのように、視線を上にあげた大野さんと、目があう。
月が、その瞳の情熱を照らし出したように思えた。
初めてあなたが舞うのに気づいた日から、
ずっと、ずっと
俺はその瞳に捕らわれてるんだ…
俺は知らず、自分の腕で身体を抱いた。
「…なんで、あっち行ってまうの?」
西国の城を出る前夜、マルに悲痛な声で尋ねられて、胸が痛かった。
胸が痛くなるのは、
こっちで暮らすことを選んだのは、ほんとうに、単純な理由だったから。
王子になりたかったわけじゃない。
西国がイヤだったからでもない。
単に俺が、
この人の、こんな姿を、
あますところなく、全部見たかったから。
この人の人生を、
ひとつも、見逃したくない。
一緒に生きて、
一緒に笑って、
この人が舞うのを見て、
俺はそれに見惚れる。
バカみたいに、そんなのを繰り返していきたいんだって…
思っただけなんだ…
いつのまにか月が高く上がっていた。
曲が終わって、月を見上げるかのように、視線を上にあげた大野さんと、目があう。
月が、その瞳の情熱を照らし出したように思えた。
初めてあなたが舞うのに気づいた日から、
ずっと、ずっと
俺はその瞳に捕らわれてるんだ…