本当にほんのりと、ですが、先日更新した短編の「SomewhereFaraway」とつながってます。
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Side O
「もしも」の話と言っていたくせに、ホントに遠くへ行こうとしてる。
そりゃもちろん、嬉しくないわけない。
だてに長いこと、ニノのこと、となりで見てねぇから。
テレビや人前では絶対に見せてこなかった努力を、他の誰より、知ってるつもり。
でも、ニノは…ホントに行っちゃうんだよな…
でも、ニノは…ホントに行っちゃうんだよな…
おいらの知らない遠くまで。
止めることなんかできなくて…
止めることなんかできなくて…
追いかけるなんてできるだろうか。
自分を追いかけることしかできない奴のこと…ニノは、どう思うんだろ…
昼間、抱いた思いにとらわれて、夜、ニノを抱きしめることができなくなった。
わからないようにため息をついて、ニノの体から離れる。
「ごめん…」
「大丈夫」
ニノははだけていたシャツの左右の襟を合わせながら身を起こして、俺にそっと体を寄せた。
「どしよ?もっかいトライする?」
「ん…でもお前も…疲れてない?」
ニノは、受賞をお祝いしてくれる人達に誘われて、連夜ずっと外出していた。
考えるのを避けていたけど、ニノが受賞してからゆっくり会うのは今日が初めてだ。
おめでとう、って言ったら、照れくさそうに「ありがと」と言って、その後は賞のことにはなにも触れず、そのときにいた女優さんとか、司会者の話にスイッチしていった。
「俺は大丈夫。久しぶりだし…あ、大野さん疲れてるんなら、大丈夫だからね」
「疲れてるわけじゃない」
キョトンとするニノを抱き寄せる。
「なあ…おいらとこうやってて…なんか言われたりしねぇの?」
腕の中のニノはぴくりと反応して、すぐ顔をあげた。
話すつもりは全然なかったこの思いを、全部見透かしてしまいそうな、聡明な薄茶の瞳に、いつもみたいに吸い込まれそうになる。
髪もくしゃくしゃで、
体だって、シャツを羽織っているだけだし、
こうやってっと…
ちゃんと、おいらのものみたいで、
嘘みたい。
あの、晴れやかな日のニノが。
でも、おいらは、それを壊したくないんだ。
腕の力を抜いて、ニノの体をそっと離す。
「何を言われるっての?」
「や……なんていうか…ニノとおいら…結構違ってて…」
見開かれていくニノの瞳の光が綺麗で、見ているとつらくなった。一瞬、堪えられなくて目を逸らすと、部屋の隅に大切そうに置いてあるトロフィーが目に入る。また視線を合わせると、ニノの瞳の光が強くなった。
「おいらが…そばにいて…いいのかなって…」
やっとのことで声を絞り出すと、ニノはすぐに口を開いて、
「ばーか」
と言った。
「そんなこと、考えてたの?」
「そんなことって何だよ。しょうがねぇだろ…」
ニノはトロフィーにちら、と目を走らせた。
「ねぇ…大野さんと俺との間のことに、あれは関係あるの?」
「直接は…ねぇけど…」
言い淀む俺を眺めて、ニノはふふっと微笑んだ。
「大野さんには、口でいろいろ言うより、見てもらう方が早いよね」
ニノはそう言うと、かきあわせていたシャツの襟を開いた。
嘘みたい。
あの、晴れやかな日のニノが。
でも、おいらは、それを壊したくないんだ。
腕の力を抜いて、ニノの体をそっと離す。
「何を言われるっての?」
「や……なんていうか…ニノとおいら…結構違ってて…」
見開かれていくニノの瞳の光が綺麗で、見ているとつらくなった。一瞬、堪えられなくて目を逸らすと、部屋の隅に大切そうに置いてあるトロフィーが目に入る。また視線を合わせると、ニノの瞳の光が強くなった。
「おいらが…そばにいて…いいのかなって…」
やっとのことで声を絞り出すと、ニノはすぐに口を開いて、
「ばーか」
と言った。
「そんなこと、考えてたの?」
「そんなことって何だよ。しょうがねぇだろ…」
ニノはトロフィーにちら、と目を走らせた。
「ねぇ…大野さんと俺との間のことに、あれは関係あるの?」
「直接は…ねぇけど…」
言い淀む俺を眺めて、ニノはふふっと微笑んだ。
「大野さんには、口でいろいろ言うより、見てもらう方が早いよね」
ニノはそう言うと、かきあわせていたシャツの襟を開いた。