Side N
彼は水をこぼさないように慎重になっているのか、顎をつまんでいた手を俺の頰にそっと添えて軽く固定する。
そのまま最後まで水を俺の口内に流し入れると、彼はそっと身を離した。ごくんと薬と水を飲み込む俺を見て照れくさそうに笑う。
「んふふ…飲めたね」
俺も恥ずかしさがこみ上げてきて、黙ってこくんと頷く。
「…あ、そっか、もう一個あんだった」
自分の手のひらにまだ錠剤が一つ残っているのに気づいたリーダーは、それをごく自然に自分の口に入れた。水を少し口に含むと、彼はまた顔を下げて唇を寄せる。
錠剤をのせた彼の舌が口 内に滑り込んで、そのまま去ろうとしたけれど、俺が追いかけると、ぴた、と動きを止める。一瞬の迷いの後、リーダーは俺を確かめるみたいにゆっくりと俺の舌をなぞった。そうしながら時折、俺の唇を軽くついばむ。俺は唇を合わせたまま水だけ飲み込んで、錠剤を舌 で弄 びながら、リーダーの口 内へ押し戻した。
「っふ…ふふっ…こら、ニノ、ちゃんと飲めって」
リーダーは笑いながら、両の手のひらで俺の頬を挟んで、額を俺の額にくっつけた。
彼の手のひらは、俺に添えられていたせいか、だいぶ温かくなっていた。
「ニノ…顔、真っ赤になってる…やっぱ、熱あんでしょ」
「ん…ないよ…たぶん…」
リーダーの手が優しく俺の髪を撫でた。
「熱…無くても、ちゃんと…のんで…な?」
リーダーは微笑みながら、俺をあやすようにつぶやいて、目を閉じて再び唇を俺のに重ねる。
ああ…
目を瞑るとか、反則…
俺は思わず、彼の背中に腕を回した。