Side S
「ほら、いつもこんな顔で、智くんと…」
ニノの顔を両手ではさんでこっちを向かせると、彼は目を開けて俺を見上げた。
ああ、でも…
この角度から見るニノは…
俺だけのもの、かもな…
俺は息を少しみだ したニノの唇に自分のを重ねた。そうしながら、片手を再び胸には わせる。親指でやさしく押しつぶした後、親指と人差し指で軽く摘んで、こねてやる。
「んっ…ぁ…んん」
ニノが俺と唇を重ねたまま、自分のそこをいじってる俺の腕を弱々しく掴んだ。けれど、きゅっとそこへ刺 激を与えるたびに強く舌をか らめてくるニノが可愛い。
あー、もう…やばいだろ、この状況…
そのとき、個室の外で声がした。何人かの声がするから、連れ立って化粧室のスペースに入ってきたんだろう。
迷ったものの、そのままキ スを続けていたら、人の声が聞き取れた。
「相葉ちゃん、ニノ見なかった?」
「そういえば、見てないね。もう帰っちゃったんじゃない?」
「いや、今日一緒に帰ろうって言ってんだよね」
智くんと相葉くんか…
ぴくん、とニノの体が揺れる。
さすがに、身を離してニノの顔を見ると、彼は頰を上気させて、眉を寄せたまま俺を見上げた。人差し指を立てて、一瞬、唇に寄せる。そして、俺を見つめたまま、首を振った。
ったく…そんな…感 じてるみたいな、顔して…
「声出さないで」 はわかるけど…
その後のは、
「もうシないで」 なのか、
「やめないで」 なのか、
どっちなんだよ…
バタンと隣の個室が閉まる音がして、ニノが口を真一文字に結んだ、微笑みにも似た顔をして、そちらをちらりと見た。