半年前のことである。

休日出勤した夫から、夕方にLINE連絡があった。

 

「同僚たちと夕飯食べてから帰ります」

 

夫はたしかに食べてから「帰る」と言ったがこの日、 待てど暮らせど彼は帰ってこなかった。

 

これは…


飲んでやがるな…

 

 

私から確認のLINEをしても既読にはならず、電話をしても出ない。

ドンチャン騒ぎでもしているんだろうと思ったが、 日付が変わっても連絡のひとつもよこさないので少々不安だった。

 

 

私の知人は、会社の飲み会から帰宅する途中に亡くなった。

酔って足を踏み外して転び、縁石に頭をぶつけたのだ。

 

身近でそういう例を知っているから、午前1時になっても2時になっても、どこにいるのか分からない夫のことが心配だった。

 

まさか、どこかで倒れてるんじゃないか!?



極寒の深夜、私はムクっと布団から這い出て、家の近所を歩いて回った。

とりあえずどこにも倒れてはいないようだったが、相変わらずLINEも着信も既読にはならず。

 

あまり眠れないまま明け方5時にもう一度電話してみたら、ついに。


夫が電話に出た。

 

寝ぼけた声で、

 「あいっ」、って。

 

 

生きてるじゃねーか。 

 

あいっ、じゃねーよ。

 

 

プッツンした私、即電話を切り、そこからやっと、ちゃんと寝た。

 

夫は間も無く帰ってきた。

 

 

 

 

 

この一週間前にも、夫は飲み会でベロンベロンに酔っぱらっい、明け方に帰ってきたところだったのだ。

二週連続でこの有り様である。

 

 

元々呑んべぇで、結婚後も朝帰りが当たり前の夫だった。

コロナ禍でそれもやっと落ち着いてくれたと思ったら、5類に移行した途端にすべて元通り。

 

マジカヨーと思っていたところへとうとう「朝まで無連絡」ということで、プッツンの私はこれまで絶対言わなかったことを、夫へ言うようになった。

 

「飲みすぎないようにね」と。

 

 

……書いていてアホらしいが、私はこのセリフを、これまで彼へ一度も言ったことがなかったのだ。

 

飲み会は、無口な夫の大事な気分転換だと分かっていたから、「大丈夫?」と聞きはしても、「飲みすぎるな」とはあえて言わないようにしていた。

 

 

しかし、立て続けに飲みすぎる夫を見て、いよいよこのセリフも解禁である。

 

夫が飲みに行く日には、

「飲みすぎないようにね!飲みすぎないようにね!」

と何度も言いながら拍手で玄関から見送りをした。

 

 

そしたら、夫がすっっっごく嫌そうな顔で言ったのだよ。 

「それ、ものすごくテンション下がるからやめて」って。

ピシャリと言ってきやがってだな。

 

 

いやいやいや、

 

自業自得だろうがよぉぉ!!!

 

散々飲み歩きやがってちったぁ反省しろよなああぁ!!!!

 

 

と思ったけれど私は気が弱いので、そこからはまた、「飲みすぎないようにね」というこのセリフを封印した。

チッ、と思いながら封印したのだよ・・・

 

 

 

ーーーー ここまでが前置きですーーーー

 

 

 

以上のように、出会ってからもう20年、酒量だけは絶対に減らさなかった夫。

 

それがなんと。

この度、毎日の晩酎を減らすと言い出してだな。

 

 

一年前に 始めた趣味のロードバイク(自転車) でしっかり走りたいから、アルコール摂取を減らすのだと。

 

週末の飲み会も、翌日に引きずると休日早朝から自転車に乗れないから、あんまりたくさん飲みたくないんだと。

 

 

それ聞いた私はね、

 

耐え続けたオレの20年返せ

 

って気持ちだったね。

 

臨月のお腹抱えて二日酔いの夫を介砲したときの記憶なんかも一気に蘇ってきたりしてさ。

 

私の過去20年の記憶より、「今」具体的に酒量を減らすことの方が100万倍大事だから良いんですけどね。

 

 

あまりにあっけない減酒宣言がおかしくて、大好きなお酒を控えようと思える程に大事なものが見つかって良かったね、って思ってる。

 

その大事なものというのはあくまで自転車であって、妻の私ではありませんでしたね、って思ってる。

 




 

(ネタにできる程度に夫婦仲は良好です。)






 

 


 

 

 

 

 

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