続きモノです。先にこちらからお読みください⇒ 1話
うわき×浮気=?
4時間目が終わってすぐ、携帯にメールが届いた。
開けばいつものように1行メール。
『生徒会室にいる』
お弁当箱を手に、指定された生徒会室へ向かう。
辺りを見渡して誰もいないことを確認した後ノックを2回して、返事を待たずに扉の向こうへ身体を滑り込ませた。
「まだ返事をしていないぞ?」
「そんなの待ってて誰か来たら困るでしょ?」
別に許可をもらう為にノックしたわけではなく、私であると知らせる為なのだから返事なんて必要ない。
私のその返答の、何がおかしかったのかはわからないが、柳は「フッ」と笑う。
教室では見せる事のないその微笑に、心に温かいものが広がる。
机にお弁当箱を置くと、椅子に座ったままの柳が私に向かって両腕を広げた。
広げられた腕の中へそっと身体を寄せれば、大きな手が私の髪を優しく梳く。
何度かそれを繰り返していた柳の手が、私の顎に添えられて上を向かされた。
されるがままに柳を見つめると、欲望を湛えた目が私を見つめている。
キュンと子宮が疼く。
この目に見つめられるだけで、身体が熱くなる。
そっと目を閉じると、すぐに唇が重なった。
1度重なった唇は角度を変え、深さを増す。
柳の指がブラウスのボタンを外していく。
私も柳のシャツのボタンを1つ1つと外した。
柳に抱かれたあの日から、私は毎日のように柳と身体を重ねている。
心が弱ってたとはいえ、柳と身体の関係を持ってしまった事に、最初は罪悪感と後悔で胸が押しつぶされそうだった。
情事が終わり、冷静になっていく頭で、私はなぜこんな事をしてしまったのかと自分を責め、涙を流した。
そんな私を柳は、ただずっと抱き締めてくれていた。
本当なら突き飛ばして、「もう二度と近づかないで!」と言うべきなんだろう。
だけど私はその腕から抜け出す事も、突き放す事もできなかった。
次の日も、その次の日も、私は柳に身体を許した。
ダメだと自分を責める気持ちの裏で、その温もりを欲していたのも事実だった。
広がる罪悪感と、自分の弱さへの嫌悪。
でも、抱かれている間は私の心も身体も満たされていて、彼氏に浮気された事も忘れられた。
数を重ねるごとに罪は深く、大きくなる。
なのに……
罪の大きさに反して、私の中の罪の意識が、薄れてきている事に私は気づいていた。
あれほど苦しかった浮気されたことの悲しみも、それほど感じなくなってきたことも……。
それは私も同じ罪を犯してしまったからなのか……?
それとも彼氏への想いが薄れてしまったからなのか……?
答えは出ないまま、今日も私は柳に抱かれる―――――
柳と体の関係を持ってしまってから2週間経った今日。
彼氏である侑士からデートに誘われ、待ち合わせのカフェにやって来た。
侑士はまだ来ていないようで、少しホッとする。
いつもなら侑士が来るまでなにも頼まずに待つのだけど、この緊張を落ち着かせようと、ロイヤルミルクティーを頼んだ。
柳に抱かれるようになってから侑士に会うのは初めてで、侑士の浮気を知ってから会うのも初めてだ。
どんな顔をして会えばいいのだろう?
普通に話しなどできるのだろうか……?
不安が大きくなっていく胸を抑えながら、私は大きく息を吐きだした。
侑士の浮気を見つけたのは、柳に屋上で抱かれた前日の事だった。
前々から浮気をしているのではないかというは疑惑は抱いていた。
いや、本当は気づいていた。
『侑士は浮気をしている』そう確信していた。
特に証拠があったわけでも、誰になにを言われたわけでもない。
これが女の勘というヤツなのだろう。
だけどそれを正面から受け止めるだけの強さは私にはなく、目を背け続けるしか出来なかった。
そうする事で自分の心を守っていた。
怖かったのだ。
浮気を追及してウザがられる事が。
そして別れを切り出されてしまう事が……
学校も違うし、実際彼の浮気を目の当たりにした事はなかった。
「俺が好きなんはハルカだけやで」
そう言って抱き占めてくれる侑士の言葉を信じ、その言葉にしがみ付くしかなかった。
だけどあの日――――
侑士の家に遊びに行き、いつものようにイチャイチャとイチャいて、そういう雰囲気になった時
ゴムを取り出そうとした侑士が「あ……」と、顔をしかめたのを私は見逃さなかった。
「そういやゴムないんやった。ちょう買って来るわ」
すぐにいつもの優しい笑顔に戻った侑士は、空箱をゴミ箱に捨てながら私の額に口付けをし、部屋に私を残してコンビニに出かけた。
行ってらっしゃいとにこやかに見送ったものの、私の心はざわついていた。
確かこの間、1つ残ってたはずなのに……。
「ラス1や。また買っとかなあかんわ・・・・」確かに彼はそう言っていた。
もしかしたら気づかなかったのかも?と、侑士が捨てた空箱をゴミ箱から取り出した。
振ってみるとカサカサと小さな音が鳴った。
だけどゴムの音ではなさそうだ。
説明書かなにかだろうか?
とりあえず箱を開け、開け口を下にして中身を振り落とした。
なんの音もなく、小さな紙切れのようなものが数枚シーツの上に落ちた。
「なにこれ……?」
摘み上げてそれを手に取った瞬間、全身が一気に冷たくなった。
見知らぬ女の子と侑士がキスしているプリクラ。
抱き合いながら唇を合わせたり、頬を寄せ合ったり……
どう見ても普通の友達ではないだろう。
落書きの文字では『ラブラブ』とか『侑士ダイスキ』などと書かれていた。
震える手でそれを見ながら、ふとそこに書かれた日付に目が止まる。
この日付……昨日?
ちょうどその時鞄の中の携帯が鳴り、私は肩を跳ねさせた。
慌てて出たため相手の名前を確認しなかったのだが、受話器の向こうから聞こえた声は侑士の声だった。
動揺を悟られないよう振舞ったが、何を話したかはあまり覚えていない。
何か飲み物いるか?とか、そんなことだったと思う。
電話を切った後、どうしたらいいのか考えたけど、半パニック状態の私には何も考えられなくて、
とりあえずなかった事にしようと空箱にプリクラを戻し、ゴミ箱の蓋を開けた。
私はそこでプリクラ以上に最悪なものを目にしてしまった。
丸められたティッシュから少しはみ出たピンク色のビニールのようなもの。
これって……?
違うよね?
でも……見覚えがある。
見てはいけないと第6感が告げている。
それを見てしまえば全てが終わると……。
だけど私はゆっくりとソレに手を伸ばした。
張り付いたティッシュを剥がせば、覗いたのはやはりゴム。
そしてそのゴムは、わかりきった事だけど使用済みだった。
愕然として、全身の力が抜け落ちる。
口から漏れた言葉は「やっぱり……」だった。
それから侑士が帰ってくるまでの数分。
私は全てを元に戻し、何もなかったかのようにした。
プリクラを見た時は頭が真っ白になったけど、
今度は不思議と冷静に考える事ができて、帰ってきた侑士も普通に迎える事ができた。
ただ他の女を抱いた手で抱かれるのかと思うと吐き気がして、
「気分が悪くなった」と、付き合って以来初めて侑士の誘いを断ったのだった。
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浮気をするならバレないようにしましょう。←