「ユウカーッ!!」
部活後の和気藹々とした雰囲気の漂う部室に、穏やかな空気を真っ二つに割ってしまうような怒声が響く。
初めて聞いた人なら驚きと恐怖ですくみあがってしまうのかもしれないけど、ここに居るみんなはもう慣れたもので、誰もが「またか」と言いたげな顔をしていた。
もちろん私もその一人。
毎日毎日飽きもせずそんなに大声で叫べるものだ。
「なに?弦一郎。」
「お前は何度言えばわかるのだ!?ごみはごみ箱に捨てろと言っているだろう!?」
弦一郎がプリプリと眉を吊り上げながら指差す先には、飲み終えたペットボトルと食べ終えたお菓子の箱が並んで置かれていた。
部活前に小腹が空いたと食べたお菓子とジュースの後だ。
確かに私が食べたけど、怪しいやつは他にも2人ほど居るのにどうして私とわかったんだろう?
コレも愛のなせる業?なんちゃって。
「弦一郎。それはゴミじゃないよ。」
「ではなんだというのだ?」
なにを言うつもりだと柳や仁王の興味深そうな視線がこっちを向く。
そんなに期待されても困るんだけど・・・・。
「それはオブジェだよ。」
「なに?」
「だからオブジェだってば。」
そうきたかと頷く者や、クスクスと笑いを堪える者。
その中心で、難しそうな顔で私とオブジェといわれたペットボトルとお菓子の空き箱を交互に見る弦一郎。
もう、ホント可愛いんだから。
「む。しかしどこをどう見ても俺にはゴミにしか見えんが・・・・。」
「芸術品なんてもんはね、他人から見ればガラクタにしか見えないものなの。」
「そ、そうか・・・・。」
納得しちゃったし。
騙してる本人が言うのもなんだけど、それでいいのか?と心配になる。
こんなんだから仁王にいい様に使われるんだよ。
だけどそんなところが可愛いと思っちゃうんだよね。
腕を組んでペットボトルの前で唸る弦一郎にキュンキュンしちゃってると、一部始終を見ていた丸井と赤也が食べていたパンの袋やガムの包み紙をポイポイと床に投げ捨てだした。
「貴様等!!なにをしている!?」
「俺もオブジェ製作しようと思ってよ!」
「俺もッス!!」
「これのどこがオブジェだというのだ!?」
「おいおい。今のユウカの言葉聞いてなかったのかよ?芸術品ってもんは他人から見ればゴミ同然って言ってただろぃ?」
ガラクタとは言ったけど、ゴミ同然とは言ってないし。
勝ち誇ったような顔で笑う丸井と赤也に、弦一郎は言い返す言葉が見つからないのかグッと言葉に詰まる。
そんな弦一郎の顔を見て、丸井達は机の下でこっそりとハイタッチをしている。
その姿に、なんだかムカムカしたものが込み上げてきた。
弦一郎をからかうのは面白い。
騙されてるなんて疑う事もなく「そうか」なんて納得してる姿はたまらなく可愛いし、もっと苛めたい衝動に駆られる。
だけど・・・・・・・・
だけど・・・・・・・・
「ちょっと!」
「あ?なんだよユウカ。」
「ゴミ拾いなさいよ。」
「はぁ?だからこれはオブジェだって―――」
「言っとくけど!そんな風に弦一郎をからかっていいのは私だけなの!!あんた達が弦一郎をからかうのは私が許さないんだから!!!!!!」
息巻く私にポカーンと口を開けて目をパチパチするアホ2人に、私は床に散らばったゴミを拾い上げてその顔目掛けて投げつけてやった。
ゴミが顔に当たって、ハッとしたように固まっていた顔を怒りへと変える。
「な、なんだよそれ!?」
「そうッスよ!!ユウカ先輩だけいいなんて身勝手過ぎッス!!」
「彼女の私が彼氏をからかってどこが悪いのよ!?」
「おう、開き直りよった。」
「普通の女性は、彼氏をからかって喜んだりはしないと思いますが・・・・。」
面白そうな声や呆れたような声が聞こえてきたので、私は部室に居るみんなの顔を見渡して、なにがなんだかわからない顔をしている弦一郎の腕に手を回しながら声高々に宣言してやった。
「私が弦一郎をからかうのも我が儘を言うのも、愛ゆえなの。ね?弦一郎?」
「あ、愛っ!?」
「弦一郎が我が儘を言われて嬉しいのも私だけでしょ?」
「あ、あぁ・・・・。」
「ほら、聞いたでしょ?私が弦一郎をからかってる所を見るくらいは許してあげるけど、自分もからかおうなんて思わないでよね!」
フンッと鼻を鳴らすようにドヤ顔で丸井達を見てやる。
悔しそうに顔を歪める彼等が「このバカップルめ!!」と叫んだ。
バカップル上等
(ユウカ。髪に埃のようなものがついているが・・・それも芸術なのか?)
(そんなわけないでしょ!?早く取ってよ!!)
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ちょっとリク頂いた内容と違うかもしれませんが・・・・・ご勘弁ください。
カッコいい真田よりもチンプンカンプンな事を言う真田が私は好きです。ww
いつまでも天然記念物でいて欲しい物です。←
真田唄亜梨さんリクありがとうございました。