藍ちゃんとのコラボ小説です。
先に藍ちゃんの小説をお読みください。
藍ちゃんの小説はこちらです。⇒Dear Special Friends 丸井side
Dear Special Friends ― 赤也side ―
「なにすっかなぁ~?」
色々な店を覗いてみたけど、これといった物が見つからない。
っつーか、仁王先輩が喜ぶものなんてあるのか?
「ありがとう」なんて嬉しそうに笑う仁王先輩を想像してオエッと吐きそうになった。
無難にテニス用品とかがいいかもな。
グリップテープやエッジガードくらいなら買えなくもないし・・・・・。
いきつけのスポーツショップに向かおうと足をそちらに向けながら、財布を広げる。
その中身を覗きこんで、俺はピタリと足を止めた。
さかさまに振って掌に小銭を落とす。
ひーふーみーなんて数えるまでもない、数枚の小銭。
「二百十円・・・・?」
百円玉二枚と十円玉一枚。
裏返してみても、摘んで太陽に透かしてみても、百円は百円で、十円は十円。
叩いても振っても、百円は二枚で、十円は一枚。
マジかよ!!
確か五百円くらいはあったはずなのに!
あ、そう言えば昨日ジャンプとベビースターラーメン買ったっけ?
やっちまったぜ・・・・。二百十円でなに買えっていうんだよ。
頭を抱えて蹲りたい気分だ。
そんな俺をあざ笑うかのように、携帯から爽快なメロディが流れてきた。
見れば丸井先輩からのメールで、「勝つのは俺だ!明日楽しみだな」と、意味不明な絵文字と一緒に書かれていた。
いったいなに買ったんだ!?
焦りが押し寄せてきて頭をガシガシかく。
だけど手の中の金が増えるわけじゃないし、時間は刻々と過ぎていく。
マジでどうしよう?
丸井先輩との勝負に負けるのも悔しいけど、どうせプレゼントするなら喜んで欲しい。
でも二百十円で買える物なんて高が知れてる。
プレゼントは金額じゃない、気持だ。なんて真田先輩の声が聞こえてきそうだけど、喜んでもらえなきゃ意味がない。
その時、低学年くらいのガキが駄菓子を持って走っていくのが目に入った。
走ってきた方へ視線をやれば、昔ながらの駄菓子屋が建っている。
こんなところに駄菓子屋なんてあったんだ・・・・。
なんとなく誘われて足を向ける。
店の中にはさっきのガキくらいの子供が数人いて、菓子を物色している。
その様子をガラスの扉越しに見ていると、店の奥に並んだシャボン玉が目に入った。
シャボン玉って言えば、仁王先輩よく飛ばしてたよな。
俺の頭に吹きつけて、何秒割れないか・・・なんてやってたっけ?
あの時おかしそうに笑っていた仁王先輩の笑顔が思い浮かぶ。
やめてくださいよ!なんて怒ってみせたけど、ああやって仁王先輩に弄られるのも嫌いじゃなかった。
「決めた!」
扉を開けて中に入り、一直線に店の奥に進んだ俺はシャボン玉を手に取って店のオバちゃんに渡す。
告げられた金額に心の中でガッツポーズしながら、丸井先輩にメールを送った。
『勝つのは俺ッスから!』
仁王先輩の誕生日当日=丸井先輩との勝負の日。
ダルそうに座る仁王先輩を前に、丸井先輩と俺は火花を散らす。
どちらの手にも仁王先輩へのプレゼントが握られている。
「赤也。お前から渡していいぞ。」
「いいッス。ここは先輩からどうぞ。」
「いいからお前から渡せって!」
「なんでッスか!丸井先輩から渡せばいいじゃないッスか!!」
やいやいと言い合う俺達に、仁王先輩が呆れたように溜息を落とした。
丸井先輩がお前のせいだぞとでも言うように肘で突いてくる。
自分だって同じ様にわめいてたくせに!!
「悪いがこの後約束があるんじゃ。はようしてくれんかのう。」
ピタリと動きを止めた俺達は、顔を見合わせ同時に渡そうと目で会話する。
うん。と頷きあった後、「お誕生日おめでとうございます!」の声と共にプレゼントを仁王先輩へと突き出した。
「丸井先輩。コンビニの袋って・・・ありえねぇ。」
「お前こそ!なんだよそのダサい紙袋はよ!」
「駄菓子屋のオバちゃんが入れてくれたんスよ!」
「俺だってコンビニの兄ちゃんが入れてくれたんだよ!」
「どっちもどっちじゃろう?」
えー!?
コンビニの袋より俺の方が断然マシじゃね?
だってコンビニの袋だぜ?
だけどこれ以上吼えると仁王先輩に口を塞がれかねないから、俺は丸井先輩に向かってフンッと鼻で笑うだけにした。
プレゼントを受け取った仁王先輩がまず俺の袋を開ける。
どんな顔をするだろう?
なんて言ってくれるだろう?
喜んで・・・・・くれるかな?
丸井先輩との勝負なんて忘れて、仁王先輩の顔をじっと見つめた。
「ほぅ・・・。」
仁王先輩はそれだけ呟き、袋からシャボン玉を取り出すことなく、今度は丸井先輩の袋を広げた。
え?今の反応ってなんだよ?
もしかしてつまらないもの贈りやがってとか思われた?
取り出す価値もないってことかよ!?
焦る俺の隣で、丸井先輩は勝ち誇った顔をする。
悔しい・・・・。
負けたかもしれない事も悔しいけど、喜んでもらえなかった事が悔しい。
グッと唇を噛み締め拳を握る。
そんな俺を気にする様子もなく、仁王先輩はコンビニ袋の中を覗きこむ。
そして俺の時には見せなかったにやりとした笑みを浮かべた。
やっぱ俺の負けか・・・・。
そう思った時、仁王先輩が俺の紙袋と丸井先輩のコンビニ袋を同時に逆さまにして振った。
ボトッと音をたて中身が机の上に落ちる。
それを見て、俺と丸井先輩は「あっ!!」と、同時に声を上げた。
「なんだよお前!?なんでシャボン玉なんだよ!?」
「それは俺のセリフッスよ!なんでシャボン玉なんスか!?」
「俺は仁王と出合った時の事を思い出して・・・・。」
「俺だって仁王先輩との思い出を・・・・・」
「ククッ。二人の気持はようわかったぜよ。そんなにも愛されとったとはのう。」
おかしそうに声を上げて笑う仁王先輩が、いつの間に空けたのか、ふーっとシャボン玉ひと吹きする。
ストローの先から飛び出たシャボン玉が、俺達の頭上でゆらゆら揺れた。
馬鹿みたいに口を開けながらシャボン玉を目で追って見上げる俺と丸井先輩。
シャボン玉なんてそんなに珍しいわけでもないのに、シャボン玉が割れるまで目が離せないでいた。
「せっかくのプレゼントじゃ。大切に使わせてもらうぜよ。」
「お、おう・・・・。」
「なんじゃ?照れとるんか?」
「はぁ?そんなんじゃねーよ!」
「赤也。いい子いい子しちゃるから頭下げんしゃい。」
「い、嫌ッスよ!ガキじゃないんスから・・・。」
たぶんどっちも照れ隠し。
だって3人とも、なんだか嬉しそうな顔をしているから。
男3人で誕生日プレゼントを贈り合って喜んでるなんて、なんか異様な感じもするけど、たまにはこう言うのも悪くない。
「丸井先輩。勝負は引き分けッスね。」
「バーカ。俺の勝ちに決まってんだろ?」
「なんでッスか!?同じものプレゼントしたんだから引き分けっしょ?」
「例え同じもんでも、俺の方が仁王は喜んでた。」
「なに勝手に決めてんスか!?仁王先輩。そんなことないッスよね?」
「なにを言い争っとるんじゃ。くだらん。」
「くだらなくねーだろぃ!?おい仁王!ここはきっちりさせてくれ!」
「そうッスね。ここはきっちりさせてくださいよ!」
シャボン玉が舞う冬晴れの空の下で、俺達の言い合う声が響いていた。
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藍ちゃんからプチメで小説が届いた時、「まさかの友情ものですかい!?」と驚きました。
友情ものって書いたことなかったですから。
でも3人の様子を思い浮かべてみると、ネタが溢れてきましてね。
おかげでスラスラ書けました。
プリガムレッドの3ばかトリオ、いいですよね。
友達のような兄弟のような・・・見ていて楽しそうです。
コラボ企画はこれで終わりです。
応募いただいた3名の方とコラボさせていただきましたが、本当に楽しかったです。
また機会があれば、色々な方とコラボさせていただきたいと思います。
ありがとうございました!!