仁王誕生日企画 夢小説 『First love』 最終話 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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First love ~最終話~



手を繋ぎながら、ごろりとベッドの上に並んで仰向けに寝転ぶ。

なんだかマー君の顔を見るのが恥ずかしくて、天井に向けた視線を動かす事ができない。


いまさらながら、マー君に告白したこと。マー君も私を好きだといってくれたこと。そしてキスした事を思い出して赤面してしまう。

静かな部屋に心臓の音が響きわたってしまいそうなほど、繋いだ手から早い鼓動が伝わってしまいそうなほど、全身がドキドキしている。


すぐ隣にいるマー君の存在が恥ずかしくて、だけど嬉しくて、ホッとした気持ちになる。

これ以上近づいたら心臓が持たないと思うのに、もっと近づきたくて、繋いだ手に力を込めた。




「ねぇ、マー君。」

「ん?」

「マー君が彼女を作ったのって、私を忘れるためだったって・・・・本当?」

「まぁ、そういう事になるかのう?」

「どうして・・・忘れようとしたの?」




好きだと言う気持ちを消さなくちゃいけなかった理由はなんなんだろう?

やっぱり親戚だから・・・・・?

それとも私がマー君のことをまったく異性として見ていなかったから?


天井に向けていた視線をマー君へ移す。

マー君は何かを考えるかのように切れ長の目をそっと閉じ、そしてゆっくりと瞼を開きながら顔をこちらに向けた。




「もし俺との交際を、オバサンに反対されたら・・・・・悠はどうする?」

「どうって?」

「俺と親との板ばさみになって、苦しむ事になるじゃろ?」

「ぁ・・・・。」

「もちろん、反対されたからって悠を諦めるつもりも引くつもりもなかったが、家では親と気まずい思いをして暮らし、俺と会うたび罪悪感を抱えんといかん。そんな辛い思いをさせたくなかったんじゃ。」




付き合う事前提の話に、私の気持ちを振り向かせる自信はあったんだ・・・と苦笑いしそうになったけど、

「悠の泣く顔は見たくないからのう」と言ったマー君の表情の方が辛そうで、ズキリと胸が痛んだ。


お母さんが反対するかどうかなんて、考えた事がなかった。

でもマー君は、そんな事をずっと考え、悩んで、苦しんでいたんだ。

私のために、自分の気持ちを押し殺して・・・・。


仰向けの体を横に倒し、マー君の胸に顔を寄せた。

存在を確かめるように、ぎゅっとマー君を抱き締める。




「ごめんね・・・・・マー君。」

「なんで謝る?」

「ありがとう・・・・マー君。」

「なんの礼じゃ?」




マー君の手が、優しく私の髪を撫でる。

チュッと音を立てながら頭に落とされたキスが、大丈夫だとでも言うように、私を安心で包みこんでくれた。




「あーあ。じゃが、悠のせいで今までの俺の苦労もぶち壊しじゃのう。」

「え?私のせい!?」

「悠が俺の理性を飛ばすようなこと言うからじゃろ?」

「なにそれー!!じゃぁなかった事にする?」

「それは無理じゃ。1度手に入れたもんは二度と離せん。」




マー君の体がくるりと反転して、私の上に覆いかぶさる。

意地悪く笑いながらもその瞳は優しくて、胸が高鳴る。


近づく顔に目を閉じれば、瞳と同じ優しいキスが降ってきた。

好きだよと伝え合うように、啄ばむようになキスを何度も何度も繰り返した。







「仁王も松尾も、女見る目ないんじゃない?」

「だよね?なんで悠?」

「立海七不思議に入る怪奇だよね。」

「どう言う意味よ!?」




私達が付き合ったという事はナイショにしておこうかとも思ったけど、色々考えた結果隠すことはやめた。

私達が親戚関係だという事はかなり知れてるみたいだし、マー君も私もついこの間まで恋人がいた身。

「俺はいいが、女は色々怖いからのう。あと数ヶ月で卒業じゃし、それまで黙っときんしゃい。」って、マー君は言ってたけど、私を忘れる為に付きあった彼女達や松尾君の事を考えると、それくらいの罰は当然のように思ったから。


予想通り冷たい視線や後ろ指を刺されることはあるけど、ずっと仲のいい親友達は、からかいつつも祝福してくれている。

松尾君は、まるでこうなる事がわかっていたかのように、「おめでとう」と笑顔で言ってくれた。

ついでに「もし仁王に泣かされたらいつでも来ていいから」とも言っていた。

冗談なのか本気なのかわからないブラックジョークに苦笑いを返しながらも、松尾君の優しさに感謝の気持ちでいっぱいだった。


そして心配していた親の反応はというと・・・・。


マー君ママを初め仁王家のみんなは、それはそれは喜んでくれて、報告した次の日には、私の食器一式と、パジャマや歯ブラシなどのお泊まりセットが用意されてあった。

「これでいつでもお泊りできるわね。」なんて言われて、赤面したのは言うまでもない。

「悠は感情が顔にも態度にもでやすいからのう。これから何かあるたびに、どうした?なにがあった?って検索されそうで面倒じゃ・・・」とマー君がぼやいていた。


私の親はと言うと、「やっぱりね・・・・。そうなる気がしてたのよ。」の一言だった。

マー君が一緒に話をしに行くと言ってくれたのを、まずは私から話すと強がってみたものの、本当は緊張と不安でどうにかなりそうだった。

だからお母さんの反応には、なんだか拍子抜けしてしまった。

でも、なんとなくお母さんの顔は寂しげで、本当は複雑な気持ちだったのかもしれない。




「悠。」

「あ、マー君!」




教室まで迎えに来てくれたマー君が扉から私を呼ぶ。

「嬉しそうにしちゃって・・・」と茶化す友達に手を振って、マー君のもとへ駆け寄った。


前までは、校内でほとんど顔を会わせる事なんてなかったけど、付き合うようになってからは、こうして私の教室まで来てくれる事が多くなった。

マー君の家でも会ってるんだから学校でまで会わなくても・・・なんて口では言ってるけど、本当は凄く嬉しい。


首にマフラー。

左手には手袋。

右手は・・・・・マー君の手。


茜色に染まった西の空に、北風に巻き上げられた落ち葉が舞い上がっていく。

吐き出す息は白いのに、包み込むように握られた手は寒さを感じないほどに温かい。


優しく握られれば優しい気持ちになって、ぎゅっと握られれば胸もギュッと締め付けられる。

マー君の隣で手を繋いで歩く事にはずいぶんと慣れたけど、胸がこのときめきに慣れる事はなさそうだ。



「1度家に帰ってからマー君の家に行くね。」

「このまま来ればええじゃろ?」

「でも色々用意もあるし・・・・。」

「なら出る前にメールしんしゃい。迎えに行くきに。」

「うん。ありがとう。」




今日は焼肉をするからと仁王家にお呼ばれされた。

ついでに・・・・というか、こっちがメインかもしれないけど・・・・・マー君の家にお泊まりする事になっている。


まだ早いでしょ?って思ったけど、マー君ママは大喜びだったし、なによりマー君が、「誕生日当日は丸1日一緒にいたい。」なんて言うから、断るに断れなかった。

私だってマー君の誕生日を1日かけてお祝いしたいし、1日一緒に過ごせるなんて嬉しい。


だけどOKの返事を出してから、ハッと気づいた事が一つ。

1日一緒に過ごすって・・・・それは起きてる間だけ?

それとも寝てる間も・・・・?




「マー君。あの・・・・私はどこで寝るのかな?」

「俺の部屋に決まっとるじゃろ?」

「き、決まってるんだ・・・・。」




それってやっぱり・・・・・そういう事なのかな?

ちらりとマー君を見上げれば、ニヤリと艶めいた笑みを返された。

サッと顔を逸らすと、耳に息を吹きかけるように「プレゼント、期待しとるぜよ」低く囁かれる。
ゾクッと甘いシビレが駆け抜けて、火がついたように全身が熱くなる。




「えっと・・・・が、頑張ります。」

「ククッ。楽しみじゃのう。」

「お手柔らかに・・・。」




ドキドキしたり、あたふたしたり、マー君に振り回されてばかりの毎日。

だけどそんな毎日がたまらなく幸せで、幸せを感じるたびにマー君への想いも大きくなる。


ねぇ、マー君。

恋って切なくて、苦しくて、涙を流す事もいっぱいあるけど、

甘くて、温かくて、全身を幸せで満たしてくれる素敵な魔法だと思わない?


・・・・なんて言ったら、マー君は笑うかな?



私に恋を教えてくれた人

私に恋を与えてくれた人


これからも一緒に、お互い初めての恋を、ゆっくりとゆっくりと育んでいこう―――――



~END~

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思った以上の長編。

最後までお読みいただきありがとうございました!!


ひとはさんとのコラボが約1年振りに叶ってテンション上がりまくりで、張り切りすぎちゃいました・・・。(テヘッ)


転勤族の仁王と幼馴染の設定は難しいので、親戚と言う設定にしてみました。

まぁ、よくあると言うか、王道なストーリーですよね。

攻める仁王も好きですが、こういう純情な仁王も私は好きです。


そしてひとはさんのイラストですが、いかがでしたか!?

私は見た瞬間叫びましたよww

どうしても仁王のキスシーンが見たくてひとはさんにお願いしたのですが、もう想像通りどころかそれ以上でヤバイ!!

ヒロインに嫉妬しそうでした。←



最後になりましたが、ひとはさんのサイトをご紹介させていただきたいと思います。

どちらの二次創作サイト様でも同じですが、必ず『About 』などを御一読の上、御入室、御観覧ください。