コラボ連載 『ONE STAR』  Boy's side 4 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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ONE STAR Boy's side 4




「言うてもうたな・・・・・。」




小さな呟きが茜色に染まる空へと吸い込まれていく。

カーと聞こえたからすの鳴き声が、しっかりせいと言うてるようで、俺はパシパシと頬を叩き気合をいれた。


「保留」と言う形で返事を先送りにはしたけど、実質上俺は振られたわけで、そのことに少なからずショックはある。

せやけど思いを告げ、前に進めた事の満足感もあって、悲観的なわけでもなかった。


明日からどうしよう?佐藤はどんな顔で俺を見るやろう?

不安はないと言うたらうそやけど、いくら悩んだところで俺にはもう攻めるしかない。


とにかく今日は頑張った俺への褒美と、明日への鋭気を養うためにたこ焼きでも食いに行くかと部活をサボってたこ焼きへと向かった。




「・・・・・・・・・・・なんでお前らがおんねん。」

「謙也遅かったやないか。」

「部活はどないしてん?」

「自分はサボって俺らには説教ッスか?」




別に説教するつもりもないけど・・・・。


たこ焼き屋では、お馴染みのメンバーが顔を揃えてたこ焼きを食とった。

アホづらでたこ焼きを頬張るヤツらになんやか気が抜ける。


「なんでおんねん」ともう1度心の中で呟きながら、手招きする白石の隣に渋々座った。


俺の代わりに銀がたこ焼きを注文して、小春が頼んでもないのに茶を入れる。

その間にその他のメンバーが俺を囲み、「で?」と白石が代表して聞いてきた。




「『で?』ってなんやねん?」

「だから、それでどうなったん?」

「だから『それで』ってなんやねん!?」




皆して好奇心に目をギラギラさせて気持ち悪い。

やたら顔を寄せてくるユウジの頭を叩き、イタイ子でも見るような財前に爪楊枝を投げつける。


ほんまなんやねんこいつらと苛々が募りかけた時、もう我慢できひんとばかりに金ちゃんが叫んだ。




「謙也好きな子に告白してんやろ?OKの返事貰ったんか!?」

「ぶーっ!!」




飲んでたお茶を思いっきり噴出してしまう。

小石川の顔面が茶で濡れたけど、そんな事気にしてられへん。




「な、な、なんでお前らが知ってんねん!?」




一瞬にして顔面に熱が集まる。

焦りと羞恥で動揺しまくりで、口をパクパクさせるだけで次の言葉が出てけーへん。


そんな俺を生温かい視線が包みこむ。

こいつら・・・・・めっちゃウザイ!!




「『謙也の恋を応援しよう!の会』の人が教えてくれてん。」

「誰やねん!?」

「だから謙也の恋を応援してくれてる人達やろ?」

「よけーなお世話じゃ!!」




勝手に人の恋を応援してくれんでええわ!

怒りよりも、そんな暇人がおるんかと呆れてしまう。


俺が佐藤に告ったんを知ってるとすれば佐藤本人しかおらん。

でも佐藤が自分でそれを俺の部活仲間に報告するはずはないし、俺の恋を応援してるはずもない。

・・・・・・と、なると?




「あっ!!もしかして佐藤の友達か!?」

「それは言われへんな。」

「ほんまウザイわお前!!」




苛々させるやっちゃで・・・・。


せやけど白石がそう簡単に口を割らんのはわかってるから、俺はそれ以上追求はせず、白石の前にあったトレイからたこ焼きを3つ奪い取った。


当たり前やけど、たこ焼き3つじゃ腹も膨れへん。

手近にあるトレイから次々にたこ焼きを奪い取り、みんなの「あっ!」という顔を見て少しだけ気分がスッキリしてきた。




「まぁ、お前らにわざわざ報告しにきたんが誰かなんてどーでもええけど、他に言いふらさんようにだけ言うとけや。」

「その辺は大丈夫や思うけど、一応言うとくわ。」




白石が頷くのを確認したところで俺の注文したたこ焼きが出てきた。

さっきの仕返しとばかりに皆がいっせいに爪楊枝を伸ばしてきて、俺のたこ焼きはあっという間になくなった。




死んでもこいつらに話すかと思っとったはずなんやのに、再度頼んだたこ焼きを食べ終わる頃には、さっきの経緯は全て暴露されとった。

されとったって言うか、俺が全部話したんやけど・・・・。

白石の誘導尋問に引っ掛かったと気づいた時には、すでに洗いざらい話した後やった。

おそるべし白石マジック。




「いやーん!!可愛そうな謙也きゅん。この小春の胸で慰めてあげるわ~ん!!」

「ええわ。」

「やっと告ったんすか?じれったぁてむずむずしとったんですわ。まず攻めん事には相手の気持ちを動かす事もできひんでしょ?それがわからんなんて謙也さんもまだまだガキっちゅー事っすわ。」
「偉そうに・・・・。お前は誰やねん!?」
「けど、財前の言うことも間違いではないやろ?謙也と佐藤さんはやっと今スタート地点に立ったとこや。まだなんも始まってへん。謙也次第で状況は変えれるんちゃうか?」

「頑張ってそれでも振られたらたこ焼き奢りますわ。」

「大丈夫よ謙也くん!謙也くんはそのままでもす・て・き!」



好き勝手言うてくれるわ。

やっぱこいつらウザイ。


けど・・・・・・今日はこいつらがおってよかった。


死んでもそんなこと口にはせぇへんけどな。







――――翌日。

教室の中はいつもと変わらん朝の光景が広がってる。


アホみたいに騒ぐやつ。

宿題を必死に写してるやつ。

机の上でうつ伏せで寝てるやつ。


「おはよう」と掛けられる挨拶も、「よう!」と肩を叩かれるのも、いつもと同じやのに・・・・・。

俺が一番に向けた視線の先。佐藤の席に、佐藤の姿はなかった。


バッグが置いてあるから学校には来てるはず。

トイレにでも行ってるんかと思ったけど、佐藤が教室に戻ってきたんは本鈴が鳴ったのと同時。担任が教室に来る数秒前やった。


髪で顔を隠し、俺を視界に入れんように席に着く。

避けられる事は覚悟しとったけど、こうもあからさまにせんでも・・・。


HRが終わり、担任が出て行くと騒がしくなる教室。

その騒がしさに紛れて、俺は佐藤に声を掛けた。




「佐藤、腹でも壊したんか?」

「・・・・・え?」

「予鈴鳴っても戻って来ぇへんから、下痢でもしてんのかと思ったわ。」

「そ、そんなわけないでしょ!!」

「はは。そんな元気なら下痢なわけないな。悪い悪い。」




声を掛けるだけで肩を跳ねさせる佐藤に、俺はできるだけいつもと同じ様な態度を見せる。

さすがに下痢はないやろうと思ったけど、他に何も思いつかんかった。

せやけどそのおかげで、佐藤はいつもと変わらん反応を示した。

それが嬉しくて、俺は自然と笑顔になった。


ムキになって言い返してきた佐藤やったけど、俺の笑顔に、戸惑ったような困ったような、複雑そうな顔してすぐに顔を逸らしてしまった。

一瞬で消えてしまった温かな空気に、ハハッと乾いた笑いが漏れる。


前と同じ様に戻りたいわけやない。

それじゃ意味がない。

せやけど避けられて、俺を拒絶されたらもっと意味がない。


男として意識してもらいたいけど、まずは俺に対しての恐怖心を拭ってやるとこから始めなあかんやろな・・・・。


背を丸めて俯く佐藤の横姿を見つめながら、俺は改めて気合をいれた。






3時間目の体育で、グラウンドに出る為靴箱へ向かってると、階段を下りてる途中で佐藤の友達と擦れ違った。

その時不意に「謙也君。」と声を掛けられる。

白石達にチクッたんはこいつか?と思うとちょっとムッとして、「あぁ?」と不機嫌な声で返事をした。




「私、忘れ物して教室にとりに行くねんけどな。」

「勝手に行けや。」

「下で玲奈が1人で待ってんねん。」

「・・・・・・だから?」

「べつに。それだけ。」




そいつはそれだけを言い残して階段を駆け登って行きよった。


『玲奈が一人待ってんねん。』


だからどうしろとか、何をしろとか、そんなことは一言も言わず、「あいつが下で待ってる」それだけを伝えてきた佐藤の友達。

このチャンスを活かすか殺すかは俺次第ってことか?


昨日白石が言うとった「謙也の恋を応援しよう!の会」の事を思い出す。

あいつもその会員なんやろか?

ほんまに・・・・・俺の周りも佐藤の回りもお節介なやつばっかりやな。


すでに姿のない階段を見上げ軽く舌打ちをした後、俺は一気に階段を駆け下りた。



佐藤は靴箱にもたれるように立とった。

自分の足元に視線を落とし、爪先を地面に擦りつけてる。


きっと俺の顔を見たら体を固まらせてしまうんやろうなと思いながら、俺はゆっくりと佐藤に近寄った。




「なにしてんねん?はよ行かなチャイム鳴んで?」

「っ!?」




靴箱にはもう俺ら以外おらんくて、変な静寂が広がる。

驚いたように見開かれた目に映った俺は、すぐにその瞳から外された。


今日はコイツの顔、全然まともに見てへんな・・・・。


身長差もあって、佐藤が俯いてしまったら、俺からは佐藤の頭部しか見えへん。

笑顔を消してしまったんは俺のせいやけど、顔まで見られへんのは辛い。


漏れそうな溜息を飲み込んで、俺は言葉を捜した。




「あ・・・・・・・・・・・そこ、俺の靴箱やねんけど・・・・。」

「え?あ・・・・ごめん。」




飛び退くように体をずらした佐藤に、「違うやろ!なに言うてんねん俺は!!」と、髪を掻き毟る。

そんな事が言いたいわけやないのに・・・・。


とりあえず、せっかく退いてくれてんから靴を履き替えようと、佐藤の左頭上にある自分の靴箱に手を伸ばした。


その瞬間、佐藤の体がビクッと震えた。

自分の体を抱くように胸の前で両腕を組む姿に、『怖がられている』と悟る。


俺が傍に寄るだけで、こんなに怖がられるなんて・・・・。


意識して欲しかった。

男として意識して欲しかった。

でもこれは・・・・・違うやろ?


ズキリと胸が痛みだして、俺はグッとした唇を噛み締めた。




「そんな怖がらんでも、取って食う足りせぇへんし。」

「ぁ・・・・・」

「まぁ・・・しゃあないか。今のお前にとって、俺は未知の生き物やねんやろな。」




傷ついてるのは俺やのに、俺の言葉に佐藤までもが傷ついた瞳をしていて、そんな顔すんなやと抱き締めそうになる。


攻めるしかない。そう思とったけど、こんなにも怖がられとったら傍に寄る事も出きひん。

冗談言うたり、笑わせたりして、その恐怖が拭い去れるもんならいくらでもピエロになったる。

せやけど、俺を見ようともせん佐藤に、そんなことをしても意味がないやろう。


「俺が怖いなら、必要以上に話しかけたりせぇへんし近寄らん。」

「・・・・・ぇ?」

「お前にそんな顔させたいわけでもないしな。」




授業の開始を知らせるチャイムが鳴る。

佐藤の耳に聞こえてるんかどうかはわからんけど、焦る様子もなくただ俺をじっと見つめる。


やっとまともに顔見れたわ。

そんな悲しそうな顔やなくて笑顔がええんやけどな・・・・。

まぁ、悲しそうな顔をさせてるんは俺やけど。



「その代り・・・・・・・俺を視界から消すんはやめてくれへんか。」

「え?」

「必要以上に話しかけたり近寄ったりせんから、お前に好意抱いてる俺の存在と、俺のお前への気持ちから、目逸らさんとってくれや。」




チラリと見えた佐藤の友達の影。俺が話終えるまで待っててくれたんやろう。

すまんなと心で礼を言い、もう1度佐藤を視界におさめた後、俺は静かに背を向けた。


グラウンドに向かって一気に掛け出す。

背中に佐藤の視線を感じながら―――――――

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大変遅くなりました。

お待たせしちゃってすみません。


次回どうなるんでしょうね・・・?

なっちゃん楽しみに待ってるよ!!!


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