コラボ連載 『ONE STAR』  Boy's side 2 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は連載です。先にこちらからお読みください。⇒B1G1


ONE STAR Boy's side 2



独特の匂いの漂う理科室で、全員が同じ白い白衣を身に纏っている。

ただ白衣を着ただけやのに、学者気分になる俺って単純なんかもしれん。


壁際に吊られた貸し出し用の白衣には番号が振られとって、自分の出席番号と同じ白衣を借りる。

せやからサイズが全然合わんヤツもおって、袖がチンチクリンやったり、ぶかぶかやったりする。


それはほとんどが笑いに変わるわけやけど、あいつの場合は笑ってる場合やなかった。


袖口を何度か折ってはおるようやけど、それでも長い袖。
膝下まで伸びた裾は制服のスカートをすっぽりと隠してしまってる。

「似合う?」なんてクルクル回っとる姿にズドンと心臓が撃ちぬかれる。

俺は盛大な溜息を吐き出しながら「あれはヤバイやろ」と頭を掻き毟った。

俺のワイシャツとか着せてもあんな感じになるんやろな・・・・。


ワイシャツを着てクルクル回る佐藤を想像して、なに考えてんねんと慌てて打ち消す。

せやけどいくら打ち消してもワイシャツ姿の佐藤が現れて俺の頭を支配する。

しまいにはニコリと微笑んで俺を手招きしてきた。

佐藤があんな妖艶な笑みを浮かべるかい!!とツッコミツツも妄想は止まらん。



「なぁ、忍足。」
「あぁ?」



なんやねん!人の妄想邪魔すんな!
ダルそうに声をかけられた方へ顔を向ければ、ニヤニヤと笑う顔が2つ。
変な想像してる事を悟られたんかと一瞬ぎくりとする。

確か・・・・佐藤と仲ええヤツや。
田中とか・・・鈴木とか・・・・なんやようある名前やったはず。

「佐藤以外の女子の名前も覚えてへんとか、どんだけ他の女に眼中ないねん。」と白石に言われたのを思い出して苦笑いが漏れた。



「あの子めっさ鈍感やし、はっきり言わな絶対気づかへんで?」
「な、なんの事やねん?」
「見つめるだけじゃ伝わらんって事。」
「はぁ?意味わからんし。」



バシッと叩かれた背中を擦りながら眉間に皺を寄せそいつらを睨む。

不機嫌そうな素振りをしながらも、動揺しまくりの俺。


ビーカーを洗う振りをして、逃げるようにそいつらに背を向けた。

俺が佐藤を好きってなんでバレたんや?
もしかしてあいつも気づいてんのか?
いや、今『はっきり言わな気づかへんで』って言うとったやないか。
って事はあいつはまだ気づいてへんって事や。


俺の気持ちがバレてへん事にホッとして胸をなでおろす。
やけどすぐに、友達が気づいてんのに本人が気づかんて・・・・どんだけ意識されてへんねんとガクリとした。






放課後の教室は、休み時間とは違う開放感に溢れた騒がしさが広がる。
意味もなく上がる奇声と笑い声の中、帰り支度をしてる佐藤に声をかけた。



なぁ、お前好きなヤツとかおらんの?」
「好きなヤツ?」
「言うとくけど女友達とかちゃうで。その・・・・恋愛的に・・・・。」
「なに?どうしたん急に?謙也が恋愛とか・・・・キモッ。」



あいつの友達に言われたからってわけやないけど、確かにこのままやと一生あいつは俺の気持ちに気づかんままやろう。
今の関係が崩れることは怖いけど、このままただの『友達』で終わってまう事の方がもっと嫌や。

とりあえず手始めにあいつと恋愛話でも・・・・と思ったわけやけど、『キモッ』の一言で断ち切られてもうた。
佐藤が恋愛に疎い事はわかっとったけど、その反応はないやろ。



「キモッて言うな!」
「だって『恋愛的に・・・』とか、あはは、笑える。」



なにがおもろいねんと手刀を食らわせれば、佐藤は痛いと頭を擦りながらもまだ笑っとる。
人の気も知らんで可愛い顔で笑うなっちゅうねん。


けどまぁあまりに急過ぎたかもしれへん。

作戦を練り直して出なおすとするか。

目的の話はまったくできひんかったけど、とりあえずあいつの笑顔を見れただけよしとしとこ。


俺は、「もうええわ。」とテニスバッグを持って立ち上がった。



「・・・・・謙也は?」



佐藤の声に踏み出しかけた足が止まる。
俺がなんやとまだ座ったままの佐藤を見下ろせば、首を逸らすように俺を見上げながら「そういう謙也は?」と繰り返した。



「は?」
「好きな子とかおるん?」



まさか逆に質問されるなんて思ってなかった俺は面食らったように立ち尽くす。
俺の返事を待つ佐藤の視線に、焦りとときめきが混じって鼓動が変なリズムを刻む。

ここで「お前や」って言うたらこいつはどうするんやろ?
驚く?それとも笑い飛ばす?

どう考えても後者の方が可能性が高い気がする。

告白して笑い飛ばされるとか、さすがの俺でもしばらく立ち直られへん。
でもこれはチャンスかもしれん。

1歩までいかんでも、半歩くらいは進むかもしれん。
見ただけじゃわからんくらいの変化やとしても、あいつとの関係が少しは変わるかもしれへん。


そう思うともう止まらんくて、「おるで」とはっきりした声で言葉にしとった。



「え?」
「好きなヤツ・・・・・おるで。」



ぐりっとした目がさらに大きく見開かれて、驚いた顔で静止する。
笑い飛ばされるんちゃうかと思ったけど、あいつは笑いもせず固まったまま俺を見上げた。

俺に好きなヤツがおる事がそんなに驚くことか?



「知らんかった・・・・。」
「そりゃそうやろ。」
「そうなんや・・・・謙也にも好きな子おるんや。」



なんやその反応。
まさか俺に好きなヤツがおってショックとか?

いやいや。変な期待は禁物や。

たぶんこいつの事やから、俺も自分と同じ様にまだ恋愛に興味はないとでも思っとったんやろう。
それが俺に好きなやつがおると聞いて、自分一人が置いて行かれたような気持ちにでもなってるんやろう。

そのまま恋愛について考えろ。
そして俺を男と意識せぇ。

打ちひしがれた様にボーっとする佐藤の横をすり抜け、俺は教室を後にした。
教室を出る寸前1度振り返ると、佐藤はさっきと同じ姿勢のままボーっと宙を見つめとった。



次の朝。いつも以上にドキドキしながら教室に入った俺は、これまたいつも以上に佐藤を意識しながら座席についた。

まずなんて声かけよ?もしかしてめっちゃ意識されて無視とかされたらどないしよ?

不安と期待で胸をいっぱいで、いつもみたいに話し掛けられへんかった。


そやのに・・・・・



「謙也!英語のノート見せてくれへん?」
「は?」
「今日当たりそうやねん!!」
「い・・・いやじゃ!!そんなもん自分でせーや!!」
「なんなんよこのケチ!!今度居眠りしとっても起こしたれへんからな!!」



居眠りなんてしてへんわ!お前に起こしてもらいたくていつも寝た振りしとるだけじゃ!!と心の中で叫びながら、俺はバッグを乱暴に机の上に置いた。

なんやねんあいつ。
昨日までとまったく変わってへんやんけ!
帰り際に見たあの呆然とした顔はなんやってん?
あれからなんも考えへんかったんか?
どんだけお気楽やねん!!

別にあいつが悪いわけやないんやろうけど、これっぽっちも変化のないあいつに苛々する。


なにを焦ってんねん。あいつがこうなんは今さらやろ。
せやけど俺はほんのちょっと期待しとったんや。
あいつも異性について考えるんちゃかと。
そして俺を『男』として意識してくれるんちゃうかと・・・・・






どて焼きの残り汁を白飯にかける俺に、白石の視線が突き刺さる。
なにが言いたいんかなんて言われんでもわかるからあえて無視しとったわけやけど、あまりの凝視に段々と我慢しきれんようになってきた。



「なんやねん!見てくんなや!!」
「八つ当たりはみっともないで?」
「誰も八つ当たりなんかしてへんわ!」
「ふーん、そうか?佐藤さんさっきからずっとこっち見てんで?」
「え!?」



後ろを振り向いてヤラレたと舌打ちをする。

俺の後ろは壁やんけ!!

大きな溜息を付きながらゆっくりと体勢を元に戻す。
俺の悔しがる顔を見て嬉しそうにする白石に、もう1度チッと舌を鳴らした。



「今のは嘘やけど、佐藤さんずっと謙也のこと気にしとったで。」
「あいつが俺のこと気にするはずがないやろ。」
「いつも騒がしいヤツが静かで、しかもなんや怒ってるみたいや。それがもしかしたら自分のせいかもしれん。それでも気にせぇへん思うか?」



授業中あいつが俺をチラチラ見とったんも、話しかけようとする素振りを何度か見せとったんも、ほんまは気づいとった。
いつもと違う俺に戸惑っとったんも、それが自分のせいかもしれんとへこんどったんも知ってる。


無視するとか陰険やと思うし、あいつが不安なそうな顔をするのを見たいわけでもない。
それに俺は本気で怒っとったわけやない。ちょっと・・・拗ねとっただけや。

それでも態度を改めへんのは、あいつが俺を意識してくれてるのが嬉しかったから。

どんな理由やとしても、俺を意識してるのがわかって俺は嬉しかった。
異性を見る視線やないとしても、いつもとは違う視線にドキドキが止まらんかった。

今あいつの頭ん中は俺の事でいっぱいなんやと思うと、嬉しくて嬉しくて仕方なかったんや。




「謙也の気持ちもわからんでもないけどな。あんま苛めとったら嫌われんで?」
「苛められてんのは俺の方やっちゅうねん・・・。」
「ははっ。本人にその自覚がないとこがやっかいやけどな。」



いつまでもこのままでおられへん事はわかってるけど、今日1日くらいは許してくれや。

もう少しだけでええから、俺の事を考えとって・・・・・。


届くはずもない身勝手な願いを、心の中で繰り返した。



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乙女な謙也を書くのも楽しいけど、ちょこちょこ現れる白石を書くのが楽しいです。ww


これからの展開は、私もなっちゃんもわかりません。

なっちゃんがこの話を読んでヒロイン視点をどう書いてくれるのか、めっちゃ楽しみです。


なっちゃんよろしく~!! ⇒ Girl's side 2  (なっちゃんのブログに飛びます)