笑顔を届けたい企画!! 真田SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

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妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

「真田先輩・・・・・」

「なんだ?」

「私の事・・・・・好きですか?」




こんな事を自分から聞くなんて、すごく恥ずかしい。

それに真田先輩は、こういう事を言う女の子は嫌いそうだから・・・・・・ずっと我慢していた。


でも、もう我慢の限界。


付き合おうって言ってくれたのは真田先輩からだ。

傍にいて欲しいって言ってもらえた時は涙が出るほど嬉しかった。


だけど考えてみれば、『好き』と言う言葉は、最後まで出てこなかった。

そして付き会い出して今日までも、1度だってその言葉を聞いた事がない。


真田先輩のような人が、中途半端な気持ちで女の子と付き合うはずがないって事はわかってる。

相変わらず厳しいけど、ふと見せる優しさや微笑に、「私は特別なんだ」と感じられる。


ちゃんと真田先輩は私を想ってくれている。


それはわかるけど、わかるんだけど・・・・・・・

どうしても『好き』って言葉を、真田先輩の口から聞きたい。




「な、なにを急に・・・・」

「私は真田先輩の事好きです。大好きです。」

「玲華・・・・・」

「真田先輩は・・・・私の事どう思ってますか?」




私は強欲で我が侭だ。


付き合おうって言ってもらえて、誰よりも真田先輩のそばに居る事ができて、

他の人には与えられる事のない優しさや温かさを貰っておきながら、さらに『好き』という言葉まで欲しいなんて・・・・・・。



ちょっと慌てたように目をキョロキョロとさまよわせていた真田先輩の視線が、やっと私の元で止まる。

自分で聞いておきながら、なんて言われるのかと思うと怖い。


震える手をきつく握り締め、歯を食いしばり、逃げ出しそうな足を踏ん張って、真田先輩の目をじっと見つめた。




「俺は・・・・・・」




緊張で唇が乾く。

心臓の音がやけに大きい。




「テニスが好きだ。」

「え?」

「真っ白な半紙に筆を置く瞬間が好きだ。」




な、なんなの・・・・?

真田先輩はなにを言ってるの?





「肉ならなんでも好きだが、特に牛が好きだ。」

「あの・・・・」

「味噌汁はなめこの味噌汁が好きだ。」

「真田先輩・・・・?」

「歴史や時代を感じるものが好きだ。」




ちょっと待ってよ。

私は「私の事好きですか?」って聞いたんだよ?

もしかして真田先輩には、「先輩の好きなものはなんですか?」って聞こえたんだろうか?




「えっと・・・」

「そしてお前が・・・・・」

「え?」




若干小さくなった声。

みるるみる赤く染まる先輩の顔。


もしかして・・・・・・・

もしかして・・・・・・・




「俺はお前が・・・・・」

「はい。」



期待で膨らむ胸。

高まる緊張感。

ドキドキが大きくなっていく。




「俺は・・・お前を、す・・・・・。」




だけど・・・・・その次の言葉はいくら待っても出てこない。




「す・・・・?」

「す・・・・・素晴しい人間だと思っている!!」

「へ?」




やっと意を決して言ってくれるのかと思ったら、『素晴らしい』って・・・・・。




「えっと・・・・・?」

「いや、そうではなくてだな・・・・。す・・・す・・・素敵な女だと・・・・」




素敵?

真田先輩の口から「素敵」なんて言葉が出るとは・・・・。




「す、素直・・・ではない。いや、素直だとが思うが、今はそういう事を言いたいのではなくてだな・・・。」

「はぁ・・・・・。」

「す、す・・・・・す・・・・・・・・・・・・・。う、うむ。どうにもまくいかんな。」




うんうん唸りながら眉間に深い皺を寄せる真田先輩。

その顔は正直かなり怖いけど、私にはとても可愛く見えて、思わずプッと拭き出してしまった。




「な、なにが可笑しい?」

「いえ・・・・・、あはは。」

「む。なにを笑っている!?」

「そんなに怒らないでくださいよ。怒りたいのは私の方ですよ?」

「なに?」

「だって・・・・全然好きって言ってくれないんですもん。」




拗ねたように唇を尖らせると、真田先輩は申し分けなさそうに帽子のつばを下げる。

そんな仕草もやっぱり可愛らしくて、また笑ってしまった。




「もういいです。今日はこれで許してあげます。」

「いや・・しかしだな・・・・。」

「先輩の気持ちは伝わりましたから・・・。」




『好き』って言って欲しくて、真田先輩の口からその言葉が聞きたくて、

ずいぶん悩んだし、今日だってすごい勇気を振り絞ったわけだけど、

一生懸命『好き』って言おうとしてくれてる真田先輩を見てると、私は何をそんなに拘っていたんだろうって思えてきた。




「今でもやっぱり『好き』って言って欲しいけど、真田先輩が自分から伝えてくれなきゃ意味がないですよね。」

「玲華・・・・」

「先輩が『好き』って言いたくなるよう私も頑張りますから、いつかちゃんと『好き』って言ってくださいね?」

「そ、それ以上頑張る必要は・・・・ない。」




帽子で完全に隠れた顔。

そこから覗く耳は真っ赤に染まっている。



『好き』って言葉は聞けなかったけど、こんなにも赤面させられたなら十分かな?



いまだ俯いて顔を上げない先輩に、寄り添うように並んだ私は、その赤く染まった耳にそっと唇を近づけた。




「カッコいい先輩も、厳しい先輩も、怖い先輩も好きですけど、今日みたいにちょっとヘタレで可愛い先輩も私は大好きですよ?」




好きって言ってよ?

     (『好き』がダメなら『I LOVE YOU』とかどうですか?)

               (た、たわけが!!)


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✤くぅ✤サマリクの真田SSでした。


真田先輩しっかりしろよ!ですね。ww