続き物となっております。先に ① ・ ② をお読みください。
誕生日の試練 ③
何とか終わった2時間目。
私はさっき送れなかったメールを送るために、またまた携帯を取り出そうとしたのだけど・・・・
今度は赤髪の丸井君が私の名前を呼びながら教室に飛びこんできた。
「あぁ~いたいた!」
「どうしたの?」
「いやさ、昨日焼き菓子焼いたんだけどお前食わね?」
まだ返事はしていないのに、バラバラと袋を広げだした丸井君。
私の机はあっという間にお菓子の山ができ、あたりには甘い香りが漂う。
「俺の力作だぜぃ!!」
「うわ・・・すごい。おいしそう!!」
丸井君がお菓子作りが上手なのも知ってたし、何度かお裾分けして貰った事もあるけど
今回のはラッピングまでされてるし、どれも売ってる物みたいに綺麗だ。
「どうしたのこんなに?」
「え?あ・・・・えっと、ほら!今日赤也の誕生日だろ?」
「あ、うん。」
「だからこのブン太様が赤也にプレゼントしてやろうと思ってさ。」
丸井君が人に食べ物をプレゼント!?
しかも相手は赤也君!?
かなりの驚きだったけど、それはあえて言葉には出さず
「そうなんだ。きっと喜ぶよ。」と笑顔を向けた。
「でさ、プレゼントする前に原に味見してもらおうと思ってさ。」
「味見って・・・私が?」
「おう!まぁうまくねぇはずはないんだけど、一応な。」
味見なんてしなくてもおいしいと思うし、多分丸井君はすでに食べてるはずだろう。
それをわざわざ私に・・・・?
不思議に思ったけど、丸井君はそんな私を気にも留めずラッピングのリボンを解きだした。
「俺菓子作りは得意だけどよ、ラッピングとか無理。」
「じゃぁそれ誰がしたの?」
「え?ジャッカルだけど?」
ザッカル君か・・・・・・。妙に納得。
ザッカル君といえば夜の出来事を思いだす。
電話の途中で寝ちゃったんだよね・・・。
結局のところ何の用事かわからなかった。
本当に私の声を聞きたかっただけなのだろうか?
まぁどんな理由にしても電話の途中で寝ちゃうなんて失礼なことしちゃったわけだし・・・謝らなきゃ。
そんな事を考えていると目の前に1枚のクッキーが差し出された。
「まずこれ食ってみろよ。」
「あ、うん。ありがとう。」
チョコチップがたっぷり入ったクッキーを受け取り、ぱくりと一齧りする。
甘さと香ばしい香りが口の中に広がり、頬が緩んでいくのがわかる。
「おいしい!!」
「当たり前だっつーの!」
ニコニコと嬉しそうな笑顔を浮かべる丸井君に私も笑顔になった。
その後も、これもこれもと次ぎ次とお菓子を食べさせられて
結局チャイムが鳴るまで私は口を動かし続けていた。
「う・・・・。おなかいっぱい。」
さっきの休み時間に丸井君のお菓子を食べ過ぎたせいで若干胃がもたれているようだ。
おいしかったけどあの量はない。
もう無理だと言っても「いいから食ってみろって!!」と、グイグイ押し付けてくるし・・・。
苦しさに耐えながら何とか3時間目を終えて、少しトイレに行こうかと教室を出たところで
今度は柳生君に声をかけられた。
「どこかに行かれるところでしたか?」
「いや・・・別に大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
柳生君が突然私のクラスに来ることは珍しい。
だいたい来る前にメールとかで私の予定を聞いてきてくれるから。
わざわざ休み時間に教室に来るだけで大袈裟な・・・ってな気もしなくはないけど
柳生君らしいし、そういうやり取りも結構面白いと思ってきていた。
そんな柳生君が突然やって来たわけだ。
何か急ぎの用事とか・・・?
「この間お話していたミステリー小説を読み終えたので、お貸ししようと思いまして。」
「あぁ~。あれ?もう読んだの?」
「はい。実に面白い作品でしたよ。」
差し出された本を受け取る。
かなりの厚さがある超大作だ。
この間買ったばかりだといっていたのに・・・・読むの早すぎ!!
でもすごい面白いと話題の本だし、早く読みたいと思っていたからすごく嬉しい。
「ありがと!!今晩帰ったら早速読むよ。」
「夢中になりすぎて夜ふかししないように気をつけてください。」
「あはは。ありえるね。気をつけるよ。」
本は受け取ったし、もう用事はすんだだろう。
だけど一向に柳生君は帰る気配はない。
えっと・・・・・まだ何か?
でも「帰らないの?」とも言い辛いし・・・・・
「出来るだけ早く返すからね!!」
「気になさらなくてかまいませんよ。ゆっくりと読んでください。」
「あ、うん。ありがとう。」
「読み終えたら感想を聞かせてくださいね。」
「もちろん!」
よし!きりよく会話も終わったし・・・・
「じゃぁ・・・本鞄にしまってくるね。」
「あ、原さん。」
背を向けて教室に入ろうとすると、優しい声で呼び止められた。
「その本の中に、こんなシーンがあるのですよ。」
「え・・・?」
振り向いた私の顔に、スッと手が伸びてきて、
肩にかかる髪を一掴みすると、なんとその髪に口付けた。
「っ!?」
「顔が真っ赤ですね。」
「や、柳生君!?」
「やはりそのような反応の方が男性としては嬉しいですね。」
「は?」
「本の中の女性は照れる事無く微笑んだだけだったので・・・・」
だからなんだというんだ!?
そんな事、私を使って確かめないで欲しい・・・・。
「あ、そろそろチャイムが鳴りますね。ではアデュー!!」
軽やかに手を上げて去っていく柳生君の背中を私はただ呆然と見つめていた。
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変態じゃないぎゅ様を書くのは苦労します。←
前の七夕企画ではブンちゃんが甘々やったんで、今度は甘さナッシングです!!
後2人!!