ウェブカレ 夢小説 (先生夢) | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

いくつもの「いつも」を重ねて・・・

いくつもの「いつも」を重ねて・・・ ②  の続きになってます。

先にそちらをお読みください。

いくつもの「いつも」を重ねて・・・ ③




「長い間つき合わせちゃってごめんね・・・。」



私が落ち着くまでずっと隣で一緒に夕陽を見てくれた綾川君。

すっかり冷えた体をお互いさすりながら、夜の闇に包まれた校舎の中へ私達は慌てて戻ってきた。



「無理すんなよ。」

「うん。でも本当にもう大丈夫。」



綾川君の優しさにいつまでも甘えてるわけにもいかないと

元気よく答えると、頭をワシワシと撫でられた。



「どっかいこーぜ。」

「ええ!?今から?遅くなるよ?」

「夜はこれからだぜ?」

「うーん・・・・。」

「大丈夫だって。帰りは俺が送ってやるし。」



そんな風に言われちゃったら断れないよ。



「じゃぁ・・・・ご飯でも食べに行く?」

「探しましたよ。」



さっきのお礼も兼ねて・・・と思ってそう提案した時、

私達以外誰もいないと思っていた廊下に思わぬ声が響いた。



「兄貴!?」

「先生・・・・。」



さっき前に進もうって決めたけれど、心の準備もないままに先生を前にして、私は動揺を隠せない。


いつものように穏やかな笑みを浮かべているようで、どこかゾクリとした冷たさを感じて

私は綾川君の袖をギュッと強く握りめてしまった。



「お前・・・・。」



私の様子がおかしい事と、先生の態度に綾川君は何かを察してしまったのかもしれない。

私を背中に隠すように先生の前に立ち、「なんの用だよ?」と、鋭い声を出した。



「準備室まで来てくれますか?」

「え?」

「俺達もう帰るから。用があんなら明日でもいいだろう?」



必死に私を庇ってくれる綾川君だけど、なんとなくいつもの威勢がないように見える。

やっぱり兄弟だから・・・兄である先生には強く出れないのだろうか?


そんな綾川君の肩越しに見える先生と目があってしまった。

何かを訴えるように逸らされる事なく向けられる視線に、心が揺れ動く。


逃げていても仕方ない。

どんな結果となろうとも、前に進むにはこの気持ちをぶつけてしまわなければならない。


これは・・・・チャンス・・・なんじゃないの?

先生から声をかけてきてくれたんだから・・・・。



私は綾川君の袖を離し、先生の前へと進み出た。



「お伺いします・・・・。」

「おい!!」

「ではいきましょうか?」

「ちょっと待てよ!!」



声を荒げた綾川君が私の腕を掴み、自分の方へと私に体を反転させる。

苛立っているというより、不安そうに揺れる瞳に、私は精一杯の笑みを見せた。



「ご飯は・・・また今度でいいかな?」

「なんで・・・・。」

「今日はありがとう。」

「お前まさか・・・」

「綾川君。」



きっともう綾川君にはバレちゃったよね・・・。

私が泣いていた原因が先生であるって事。

だけどその先は・・・・・まだ言わないで。


何か言いたげな綾川君の言葉を遮って彼の名前を呼ぶ。


その先に何か言うべきなんだろうけど、うまく言葉が出なくて

綾川君を見つめ続けていると「はぁ・・・。」と大きな溜息をつかれた。



「あ、あの・・・」

「なんかあったら俺を呼べ。」

「え?」

「んじゃ俺は帰るわ!」



それだけ言い残して走り去って行った綾川君。


本当に優しくて頼りになる男の子。


私はその背中に向かって静かに頭を下げた。












「何か聞きたい事があったんじゃなかったんですか?」



先生の後ろについて準備室までやって来たのはいいが、

どちらも何を言うわけでもなく、沈黙が痛い・・・・。


いつもなら迷わず窓際の席に座るんだけど、

数時間前に私ではない誰かが座っていたかと思うと

とてもじゃないけどそこを見ることもできない。


扉の前で立ち尽くす私を他所に先生がなにやらガチャガチャとやっている音だけが響いて

居心地の悪さを感じずに入られない。


だけどいつまでもこうやっているわけにもいかない。

どうやって切り出しだそう・・・?

そう悩んでいると、先生の方から声がかかった。


聞きたいこと・・・?

そんなの山ほどある。



本当は私の事どう思ってるの?

やっぱりただの生徒の一人・・・?

特別に感じていたあの時間は・・・・私の幻想?



だけど・・・・そんな事を聞いても、先生は絶対に答えてなんてくれないだろう。



「先生は・・ずるいです・・・。」

「・・・・・・。」

「先生は何も言ってくれないくせに・・・・私には言わせるんですね。」



答えるつもりもないくせに、私の気持ちだけは引き出そうなんて・・・



「いつも私ばっかり必死で・・・・先生の一言に、ほんの些細な態度に・・・一喜一憂して・・・。」



いつもそんな私を見て、先生は微笑むばかり。

決して言葉になんてしてくれない。

何を考え・・・どう思っているのか・・・

その笑顔だけじゃ・・・・わからないよ・・・・・。



「私ばっかり・・・・・・・・・・バカみたい・・・・。」

「困りましたね・・・・」

「!?」



1つ1つの思いを振り絞るように吐き出した言葉に、返ってきたのはあまりに非情な言葉・・・。



―― 困りましたね ――



大きな声ではなかった。

寧ろ呟きのような声で、聞こえたのが不思議なくらい小さな声だった。


なのに耳の奥で大きく鳴り響くように、何度も何度もこだまする。


そう・・・・・・だよね・・・・。

何を期待してた・・・・?

こんな気持ち、先生にとっては重いだけなんだ・・・。

ただちょっと優しくしただけなのに・・・・・・。

勝手に思い上がって・・・勝手に特別なんて思っちゃって・・・。


悲しみよりも恥かしさと悔しさで体が燃えるように熱くなり

私は逃げ出すように扉の方へ手を伸ばした。



「わ、私帰ります!!」

「だめですよ。」


ぴしゃりと言い放たれた言葉と共に、後ろから伸びてきた手が私の手と重なる。

男の人の手にしては細くて長い指が私の手を軽く握り締め、耳元には生暖かい吐息・・・・・。



「離してくだ――」

「そんな可愛い事を言われたら嬉しくてどうにかなってしまいそうです。」

「え・・・・?」

「あまり困らせないでください。」



それってどういう意味・・・・?


言われた言葉が理解できず、先生の顔を見上げた時、

ピーッと、お湯の沸騰する音が聞こえその瞬間先生はパッと離れてしまった。


触れられた手がヤケドしたように熱く、吐息のかかった耳がジンジンと痺れる。

言葉の意味を理解しようと考えてみても、思うように頭が働かない。


一人扉の前で顔を赤くしながらパンクしそうな頭を必死で整理していると、

フワリと嗅ぎ慣れたコーヒーの香が漂ってきて、

熱くなった顔や頭がサーッと冷たくなっていくのを感じた。


さっきの言葉で忘れてしまうとこだった・・・。

そうだ。

事の始まりはこれだった・・・・。



「コーヒーが入りましたよ。まずは座りませんか?」

「・・・いりません。」

「麗華君?」

「もう・・・先生のコーヒーは・・・飲めません。」



勝手な事を言ってるのはわかってる。

こんなのただの私のワガママだ。

だけどあのコーヒーは・・・・私にとって特別なものだったから。

私と先生を繋ぐ・・・唯一のものだったから・・・・・・。


でも先生はそうじゃなかった・・・。



「もう・・・・飲めません・・・・・。」



机に置かれた2つのカップ。

そこから立ち上る湯気の向こうに先生の顔が見える。


必死に大人ぶってきたけれど、そんな偽りの仮面なんて脆い物だ。

先生に近づきたい一心で、背伸びをし続けていただけで、

本当はこうやって泣く事しかできないただの子供。


こんな姿を見られた今。もうどう取り繕っても元には戻れない。


コーヒーが飲めないなら、ここに来る意味もない。

それ以前に、こんな私にもう・・・・・お誘いもないだろう。


これで私と先生の秘密の放課後は終わり・・・・。

夢の時間は・・・・終わりなんだ・・・・・。


零れだした涙が頬を伝い、床に模様を描いていく・・・・。



付き合っていたわけでもないのに、「さよなら」なんておかしいかもしれないけれど

最後くらい見栄を張らせて欲しいと、唇を噛み締めながらも涙を拭い

先生の方をしっかりと見据えると、なぜか先生は笑っている・・・・・・。



「すみません。度が過ぎたみたいですね」



突然謝罪の言葉を受け、まったく意味がわからない。

しかも謝りながらも先生の顔は笑っているのだから。


馬鹿にされているのだろうか・・・?

それに『度が過ぎた』とは・・・・どういうこと?


きっと私の顔は怪訝な表情が浮かんでいると思う。



「先ほどキミがそこの窓から中を覗いているの・・・・実は気づいてました。」

「え・・・?」



どういう・・・・・事?

じゃぁ・・・あんな風に私の前で女子生徒をこの準備室に招き入れ、

コーヒーを入れたのは・・・・・・・わざと?


なぜ・・・・?



「思い上がるなって言いたかったんですか・・・?」

「違いますよ。」

「私だけが特別じゃないと気付かせたかったんですか!?」

「麗華くん。」

「こんな時だけ名前で呼ばないで!!」



悲鳴に近い叫び声をあげた私を、先生は悲しい目で見ていた。


どうしてそんな目をするの・・・?

悲しいのは私だよ。

泣いてるのは私だよ!!



「私はキミが思っているほど大人じゃありませんよ。」



ポツリと吐きだされた言葉が、私の胸に大きく響く。


私が思ってるより大人じゃない・・・・?



「私が誘えば君はいつも嬉しそうにここにやってくる。

だけどキミからここにやって来た事は1度だってない。

いつも言葉の裏に隠された想いを必死で探っていましたが

それも本当は私の自惚れでしかないのでは・・・・?そんな不安が日々募るばかり。

今回は頑張って1週間近くも声をかけなかったのに、やはりきみは来てくれんばかった・・・。

あの生徒を招きいれたのはキミに妬いて欲しかったからです。

窓を開けたのは偶然でしたが、君が聞いているだろうと思って利用させてもらいました。

キミが走り去っていく後姿を見て、嬉しいと思った私を・・・・最低だと思いますか?」



何・・・・言ってるの・・・・・?


先生はいつも余裕で・・・。

私なんかの1歩も2歩も先にいて・・・・。

私の気持ちなんてお見通しで・・・・。



・・・・・・・そんな事・・・・・・・誰が言った・・・・・・・・?



涙で霞む視界の中で、弱々しく微笑む先生に胸が張り裂けそうに痛い。

それと同時に、先生も私と同じ痛みを持っていたんだという事実に、嬉しさを隠せない。



「そんな事言われたら自惚れちゃいますよ。」

「自惚れてもらってかまいませんよ。」

「先生がそんな事言っていいんですか?」

「そんな事ってなんですか?」

「ふふ。やっぱり先生はずるいですね。」

「私はキミが思っているより、よっぽどずるいですよ。」



やっと先生の本当の思いに触れられたと思ったのに、

またいつものように余裕のある微笑みに戻ってしまったのが寂しくて

私はわざと先生を困らせるような事を言ってみた。



「でもやっぱり・・・コーヒーはショックです。」

「どうしてですか?」

「・・・・どうしてもです。」
「ふふ。・・・あの豆は私が特別に頼んで作ってもらったオリジナルで、私の為の私だけのブレンドコーヒーなんです。

「知ってます。前に教えてくれたじゃないですか。」

「では、今のところ他の誰にも飲ませた事がないというのも知ってましたか?・・・・・・・・キミ以外にはね。」


え・・・・・?


「この部屋にはあのコーヒー以外にもコーヒーはたくさんあるのですよ。インスタントとかね。」
「インスタント・・・・?」

「もともと特別なコーヒーでしたから、誰にも飲ませるつもりはありませんでした。
だけどあの日、なぜかキミに飲ませてあげたいと思った。
あの日から・・・・このコーヒーは特別なコーヒーから、さらに特別なコーヒーになったんです。
この意味がわかりますか・・・・・?」



わからない。

そんなの全然わからない。

ちゃんと言ってくれなきゃわかってあげない。


だけど先生は何も言葉にしてくれないから・・・。



「言葉にできないのなら・・・・せめて態度で示してください。」

「・・・・・いけない子だね。」

「先生の前だけです。」

「キミは本当に可愛いですね。」

「可愛い・・・生徒ですか?」

「可愛い女性です。・・・・麗華は。」



初めて呼ばれた「さん」付けではない名前にドキドキしながら

私は初めて先生の腕の中に抱きよせられた。


「今はまだ・・・ここまで・・・・。」

そう言いながら、大切なものを守るように抱き締められた先生の腕の中は

涙が出るほど幸せで、どんな言葉なんかよりも私の心を幸せにしてくれた。


欲を言い出せばキリがないけれど、今はまだこうやって抱きしめてもらえるだけで十分だから・・・・・


その温もりを・・・・


この腕の力を・・・・


そして先生の甘い香を・・・・


忘れないようしっかりと胸に刻み付けた ―――――








「いつも」なんてものは簡単に変化するし、消えてしまう事もある。


それでもまた新しい「いつも」を作り、重ねていけば・・・・


そこから何かが産まれてくるはずだから。


だから今日も繰り返す。


先生と私の二人だけの「いつも」を・・・・。













「放課後・・・準備室でお待ちしてますね。」



                                「放課後・・・準備室に行ってもいいですか?」




                今日の「いつも」はどっちのいつも・・・・・?


*****************************************


終わったぜ~!!!

長かったな・・・。やっぱ続きもんは時間空くとあかんわ・・・。

感覚とか世界観を忘れてしまう・・・。

こういうのは一気に書かんとね。


でも何とか完結♪


もち子。弟君とバトらせられなくてごめんね・・・。

それはまた次回に!!ww

今回はまとめるだけで精一杯だわ(笑)


補足入れなくても・・・わかりますかね?

最後の会話みたいなの。


これは意味わかる人いないですよね・・・・。

まぁ色んな思いを込めて書いたんですけど、理解できなきゃ意味がない!?ww


これは・・・・ヒロインちゃんも「いつも」を作り出すきっかけを自分自身で動き出したって事です。

待つだけが特別じゃないと気付いたんでしょうね。

二人で築いていくからこそ・・・って事ですよ!