~ 年とともに新しく・・・・ ~
晦日の今日。
毎年恒例のように、大量のお菓子を持って俺の部屋にやってきた功。
こうやって毎年来るのはいいが、一緒に新年を迎えられたためしは1度もない。
いつも年を越す少し前に目がトロついてきて、そのまま爆睡・・・・。
今年もどうせ寝るんだから自宅で年越せよ!!と言ってみても
「今年こそは大丈夫だもん!!」なんて言いながら、俺の部屋のコタツに足を突っ込んだ。
そんな事言いながら絶対寝るだろうと思っていたけど、案の定俺の隣で爆睡中・・・。
「無理に起きて年越さなくたっていいじゃねえか。寝てたって年は勝手に明けるんだしよ。」
そう言った俺に、「亮兄は何もわかってない!!」と怒られちまった。
意味わかんねぇ・・・。
そこまでして年を越す事に何の意味があるんだ?
それになんで俺の部屋なんだよ。
別に予定もねぇし、断る理由もないからいいけどよ、
年越したいだけなら自宅でもいいし、俺以外の女友達だっているだろう?
なのになんで・・・・・?
TVの向こうの司会者が年越しまであと30分だと言っているのが聞こえ
そろそろ起こしてやるかと眠りこけてる功に声をかけた。
「おい、功?起きろって!」
すっかり寝入ってしまった功は、いくら揺すって声をかけてみても起きる気配はない。
昔からコイツは1度寝ちまうとなかなか起きねぇんよな・・・・。
仕方ねぇな。と、コタツから出ている肩に布団をかけてやれば、
気持ちよさそうな顔でその布団に顔を埋める。
もう何年も一緒に過ごしてきて、寝顔なんかも見慣れちまったけど、
最近なぜかふとした瞬間にドキッとさせられる事がある。
まだまだガキで、色気なんかより食い気が勝っている功が、時々女に見える。
いや、女なんだから女に見えて当たり前なんだけど、そういう意味じゃなくて・・・・なんつーか・・・・
俺の知ってる功じゃなく、全然違うやつに見えるっていうか・・・・。
顔にかかる髪をそっとかき上げてやると、なんとなく嬉しそうに微笑んだ気がした。
もう少し・・・このままでいてくれよ。
変わらぬお前のままで・・・
そう思いながら、いつしか俺も夢の世界へと落ちていった―――
「きゃ~~~!!!!!」
耳の奥まで響く叫び声に、俺は勢いよく跳ね起きれば
さっきまで寝ていたはずの功が、両手で頭を押さえながら悲愴な顔をしている。
なんだ?何があった!?
「おい、どうし―」
「年越えてる!!また年越しできなかったぁ~!!」
そう叫びながら俺に突きつけてきた携帯には『1:32』と表示されている。
なんだ。そんな事か。俺もいつの間にか寝ちまったんだな・・・なんて考えていると
隣で啜り泣きが聞こえてきた。
「え?ちょ、何泣いてんだよ!?」
「だって・・・・・だってぇ~!!」
「ったく・・・寝ちまったもんは仕方ねぇだろ?そんな事で泣くなんて激ダサだぜ!」
「激ダサでもいいもん!!」
「はぁ・・・。ほら、お前の好きな抹茶ムース取って来てやるから泣きやめよ!」
「抹茶ムース・・・?」
「兄貴が今年も年越しにお前が来るんだろう?って買ってきたんだよ。」
「食べる・・・。」
食うのかよ!!と心でツッコミながらも台所から取って来てやれば
あんなに泣いてたくせにおいしそうな顔で抹茶ムースを食べる功は本気で幸せそうで、
単純なヤツだな・・なんて思いながら見てると
「亮兄も食べる?」とムースを乗せたスプーンを俺に向けてきた。
「い、いらねーよ。」
「おいしいよ?」
「ならお前が全部食え。」
俺にスプーンを向けた功に、胸の奥がドキンと跳ねたような気がして、
それを誤魔化すように、さっき思った疑問をぶつけてみた。
「お前さ・・・・何で毎年俺んとこ来んだよ?」
「・・・・・迷惑だった?」
「そうじゃねーよ!でもお前の友達だっているだろう?何も俺と過ごさなくたって・・・」
「亮兄と一緒じゃなきゃ意味ないもん。」
「だからなんで・・・・」
「だって・・・・好きな人と一緒に年を越して、新年を迎えたと同時に告白したらうまくいくって教えてもらったから・・・・」
「なんだそれ・・・・?」
「また1年待たなきゃ・・・・。」
深い溜息を落とす功に、また来年も懲りずに挑戦するのか?なんて思ってみたが
ん・・・?
今なんか引っかかる事があったような・・・・?
―― 好きな人と一緒に年を越して、新年を迎えたと同時に告白したらうまくいく ――
好きな人と一緒に・・・・?
毎年俺の部屋に年越しにやってくる功。
俺とじゃなきゃ意味がない・・・・?
それって・・・・・・
「お前・・・・俺のこと好きなのか?」
「え~!?なんでわかったの~!?」
気付いてないのかよ!?
自分で告白まがいの事しておきながら気付いたのは俺だけ!?
つーか・・・マジかよ・・・・。
顔を真っ赤にして「どうしよう!!一緒に年越ししてないのにバレちゃうなんて!」と慌てふためく功に、
嘘じゃねーんだ・・・と段々実感がわいてきて、俺まで顔が赤くなってきた。
幼馴染という枠の中で長年一緒に過ごしてきた俺達。
こいつが俺を兄のように慕ってるって言うのはわかってたけど、まさかそれがそういう好きだったなんて・・・。
俺だって功が可愛くないわけじゃない。
ちっこい頃からずっと俺のそばにいた妹みたいなヤツだ。
すぐ泣いたり、わがままだったり、手のかかるやつだけど、それを支えてやるのが俺の役目だと思ってた。
だけどそれは兄としてなのか・・・・?
さっき、こいつが成長していく様子を、見るのが嫌だと思ったのはなんでだ?
このままでいて欲しいと思ったのはなんでだ・・・・?
無意識に考えないようにしていた疑問を心に問えば、答えなんてすぐに出た。
俺の傍から離れていくのが嫌だと思ったからだ。
俺の手を離れ、いつしか俺の役目を誰かに取られるんじゃないかと思ったから・・・。
なんだ・・・。
こんな簡単な事だったのか。
俺はとっくの昔に、コイツに。功に惚れてたんだな。
自覚してしまえば、なんだかこの空間がくすぐったくて、
功も俺を好きなんだという事実が嬉しくてたまんねぇ。
いまだに「どうしよう」を繰り返す功に、俺から想いを伝えてやろうかと思ったけれど、
何年もこうやって俺に気持ちを伝える為に、1年に1度の年越しを俺の元へとやって来ていた訳だし
ここで俺が告っちまったら、この数年を無駄にしたとか言い出しそうだしな・・・・。
しばらく俺は考えて、ベッド横に置いてある目覚まし時計の針を23:59まで戻してやった。
「ほら、お前の携帯時計狂ってんじゃねぇのか?見てみろよ。まだ年越えてねえだろ?」
「・・・・・・・そんな子供だましな嘘を信じるほどバカじゃないもん!!」
「お、俺がそうだって言ってんだからそうなんだよ!俺のこの部屋だけは・・・まだ年越えてねーんだよ・・・・。」
なんだか自分で言ってて恥ずかしくなってきちまった。
こんな事なら普通に告った方がよかったかもしんねえ・・・。
そんな事を言い合ってる間に、時計の針は綺麗に重なり合ってしまった。
いまだに何も話し出そうとしない功に、もう俺から言っちまうか・・・と口を開きかけた時、
急に正座をしだした功が、俺の手をギュッと握って真っ直ぐに俺を見てきた。
「あのね・・・・私・・・・りょ、亮兄が・・・・す・・・・・す・・・・好きなの!!!」
口端に抹茶ムースを付けたまま半泣き状態で俺に思いを告げる功が可愛くて、
その頭をガシガシと撫でてやりながら「俺も好きだぜ。」と、言ってやった。
「え・・・?うそ・・・・。」
「嘘じゃねーよ。」
「ほんとに?」
「本当だって!俺も功が好きだ!」
「・・・・・・・・・・私も、亮兄が好き。」
ポロポロ零れ出した涙をシャツの袖で拭いてやれば
「痛いよ・・・」なんて言いながらも嬉しそうに微笑む功。
「好きな人と一緒に年を越して、新年を迎えたと同時に告白したらうまくいくって本当だったね?」
「ああ・・・。そうだな。」
「亮兄?」
「あ?」
「明けましておめでとう!」
功のその言葉で、俺達はやっと二人で年を越せた気分になった。
新しい年の始まりは
俺たちの新しい関係の始まり――――
今年もよろしくな・・・・・功。
A Happy New Year
**************************************
ありがとう&お正月企画の最後は~!!会長リクの宍戸さん!!
一個下の幼なじみで、恋人一歩手前状態。
宍戸さんの部屋で年を越すはずが、ヒロインのミスで一緒に年越せなくなり、
凹んでるのを宍戸さんが励ましてくれる。
ってのがリク内容でした!
リクに当てはまってんのか自分でもようわかりませんが(オイ)
会長~!!こんなもんでどうッスか~!?
あっと、これにてありがとう&お正月企画は終わりなんですが
お年賀ドリームをあと数本、今日と明日にUPする予定です。
皆さんお正月を楽しんでますか~!?
私はちょっと食べすぎたようで苦しいです・・・。