もう1度・・・・
もう2度と・・・・(後編)
もやもやした気持のまんま放課後になってしもた。
このままじゃテニスとかしてられへん・・・。
それでも足は勝手に部室に向かう。
部室のドアを開けば誰の声も聞こえへん・・・。
もうみんな行ってもうたんか?
けどちょうどええわ。
そう思いながらロッカールームの扉を開けば、ソファーに悠々と座る跡部がおった。
なんで1番会いたくないやつがおんねん!
「なんや跡部。一人で何してんねん?」
なんもない素振りで声かけてみれば、そりゃすごい目で睨んどる。
「なんも言う事ねーのか?」
「なにがあんねん?」
「昼間のアレはなんだ!?あーん?」
言葉遊びをするつもりはないらしい。
直球で聞いてきよった。
「昼間って?佐藤との事か?」
「何考えてやがる。」
「なにって・・・彼女とイチャついとっただけやん。」
「彼女?はっ!!お前はどこまで馬鹿なんだ!!」
「馬鹿ちゃうわ!アホ言うてや!!」
「んな事どうでもいいんだよ!本気であの女を彼女だと言ってんのか!?」
「せやで、可愛い子やろ?」
「どこまで目が腐ってやがんだ?お前がそこまで救いようのない馬鹿だったとな!」
「なんやんね!?俺は今佐藤と付きおーとんねん!何しようが勝手やろ!?」
もやもやがイライラに変わっていく・・・
なんで跡部がそんなこと言うてくんねん?
なんで舞の為に怒ってんねん!?
舞とあの後どこ行ってん?
舞とはどういう関係やねん!!
冷静さも忘れて跡部に怒りをぶつけた。
「舞とは終ったんや!!今の彼女は佐藤や!それがなんか問題なんか!?」
「お前は何もわかっちゃいねぇ!!」
「なにがやねん!!」
「お前は舞のどこ見てやがった!!」
「全部見とったわ!!日に日に消える笑顔も、手から零れるようになくなった気持も全部・・・全部見とった・・・。」
「お前は自分の事しか見えてねーんだよ!」
「跡部になにがわかんねん!!」
「佐藤はな!!お前と舞がまだ付き合ってる時から、自分もお前が好きだと舞に打ち明けていた。」
「それがなんやねん!!」
「お前は馬鹿か!!舞の性格考えたらわかんだろう!!
あいつが自分の親友がお前を好きだと知って、普通でいれるのか!?」
「!?」
「なのにお前はそれに気づかずあいつの手を離した!!」
「せやけど・・・。せやけど舞はそんな事一言も・・」
「言うかよ!そんなこと・・・・言うやつかよ。」
跡部が吐き捨てるように言う。
知らんかった・・・。
それで俺と距離おいとったんか?
突然見えんようになった舞の気持。
俺の傍で苦しそうな顔をしてたのも、哀しそうな瞳も、全部俺へのSOS。
なんで気づいたれへんかった!?
なんで舞を責めた?
なんで・・・なんでその手を離したんや?
「そんなとこで突っ立てる暇があんなら、他にやるべき事があんだろ!?」
「跡部・・・・・。」
「舞なら第2会議室で、俺が頼んだ仕事してるはずだ。」
「やっぱ跡部は跡部やな・・・」
「なに訳わかんねぇ事言ってやがる!早く行って来い!」
「・・・・ありがとうな。」
ほんまに跡部にはかなわんわ。なんでもお見通しや。
俺は部活のダッシュより早う走った。
早く!早く舞いに会いたい!!
「忍足君!!」
校舎に向かって走っとる途中で呼び止められた。
振り返らんでもわかる。
佐藤・・・。
「どこか・・・行くの?」
もしかしたらなんとなぁ察しがついてるんかもしれへん・・・。
不安そうな顔・・・。女の勘ってヤツか?
でも、もう誤魔化す事は・・・できひん・・・。
それに・・・・前に進む為にはちゃんとケリつけなあかん。
ゆっくりと佐藤と向き合う。
こんな風に面と向かってちゃんと目を見たんは初めてやな・・・。
「佐藤・・・。俺の話聞いてくれへん?」
「・・・・・・」
もうわかるわな・・・・。
笑顔も消えて引きつった顔した佐藤。
ごめんな・・・・。けど、もう嘘つかれへん・・・・・
「佐藤に告白された時な、舞の友達の佐藤と付き合ったら舞がどんな反応すんねやろって思ってん」
「・・・・・・」
自分のつまらんプライドが邪魔して否定しとったけど、確かにあん時そう思った。
「傷ついた顔見て安心したかったんやと思う。まだ俺に気があるんちゃうかって・・・。」
「・・・・・・」
めっちゃ勝手なエゴや・・・。
佐藤使って舞の気持ち確かめようと思ったんやから・・・。
「結局怖くて会われへんかってんけど・・・。今日久々に会ったのに舞めっちゃ普通やしな・・・
俺ん事『忍足君』とか言うしな・・・。めっちゃショックやった・・・。」
「・・・・・・・」
ほんまは期待しとった。
俺が自分の親友と付き合って知ったら必死で俺を取り戻しに来るんちゃうかって・・・。
せやけど、俺のとこに戻るどころかめっちゃ平気で俺の話してるし・・・・。
「けど、佐藤の事抱きしめて名前呼んだ瞬間・・・。舞今にも泣きそうやった・・・。」
「・・・・・・・」
今まで俺の前でも1度も涙なんて見せた事ない舞が・・・。
あんなに人がおんのに涙浮かべとった・・・。
「俺な、なんで俺の腕の中におんのが舞ちゃうねんって思った・・・。」
「・・・・・・・」
あんなに泣きそうな舞を目の前に、俺は誰を抱きしめてんねんって・・・。
俺がこの胸に抱きたいんは・・・・佐藤じゃない・・・。
「ごめんな・・・。めっちゃひどい事言うてるし、めっちゃ勝手やってわかってる。
でも・・・もう佐藤と付き合うていかれへん。」
今までずっと黙っとった佐藤が1筋の涙をこぼした・・・。
けど・・・舞の時のような思いはない。
その涙は俺のせいやろうけど・・・拭ってやる事はできひん・・・。
「ごめんな・・・。ほんまに・・・・・ごめん。」
深々と頭下げて謝る。
こんなんで許されるはずないやろうけど、今俺ができることなんてこれくらいしかない。
佐藤は何も言わず、ただ嗚咽だけが聞こえてくる・・・。
俺は頭を下げたまま・・・佐藤がなんか言うまでそのまま待った。
「・・・・・違うの・・・・。」
「え?」
突然発せられた言葉に驚いて顔を上げる。
違うって?・・・どう言う事や?
「舞と忍足君を先に引裂いたのは私なの・・・。」
「私が・・・舞に忍足君が好きって言ったから・・・。」
そう言えばさっき跡部が言うとった・・・。
「舞がそれで別れを選ぶかもしれないって・・・期待してた。」
「ううん。・・・・早く別れればいいって思ってた!!」
「友達なのにひどいでしょ?舞の性格わかってて利用したんだよ・・・。」
悲痛の叫びの中に佐藤の想いが見える・・・。
そうやったんか・・・。
でもそれを俺に責める権利はない・・・。
「舞は・・・。佐藤の事大事に思ってるんやな・・・。」
「うん・・・・。なのに・・・私は・・・。」
俺を好きになってくれた佐藤。恋を選んだ佐藤が決して悪いわけじゃない。
佐藤を大事に思う舞。友情を選んだ舞が悪いわけでもない。
舞を信じきれんかった俺が全て悪いんや・・・。
佐藤の気持ちを利用した俺が最低なだけ・・・。
結局舞も佐藤も傷つけた。
でも・・・・。許されん事やとは思うけど・・・
今度こそ選択間違わんから・・・
「舞に会いに行って来るわ、」
「うん・・・。私が言えることじゃないけど・・・幸せにしてあげて・・・。」
「それと・・・ごめんなさいって伝えて・・・」
「それは、佐藤が自分で言わなあかんのちゃうか?俺も必死こいて謝ってくるし。」
「そう・・・だよね。私も舞の友達でいれるように・・・謝るよ。」
佐藤は涙を拭い、俺に微笑みながら手を出してきた。
「今までありがとう。そして・・・・舞をよろしく。」
「こっちこそ、ありがとう。」
別れの為のさよならの握手・・・・・
そして・・・すべての始まりの握手。
俺と佐藤は、ここからまた歩き出す・・・・
佐藤と別れ、会議室目前まで来た。
もう、迷いはない。
コンコン。
中からの返事は待たず中に入った。
夕日に照らされ、逆光で顔は見えへんけど驚いてるであろう舞。
そりゃビックリするやろな・・・。
しばらく2人とも見つめあったまま、静寂が流れる・・・。
舞と2人きりになったんは・・・あの別れ話をした日以来や・・・。
「舞・・・聞いて欲しい話しがあんねん。」
ビクッと舞の肩が震えた。
怖がってるんやろか・・・?
今すぐ抱きしめたい思いに駆られながらも、
この気持ちだけはちゃんと言葉で伝えなければ・・・と言葉を紡ぐ。
「俺な、最低な男やねん・・・。」
「舞に別れよう言うたんは、舞に否定して欲しかってん。俺と別れたないって言うて欲しかった・・・。」
ドアの前から1歩舞の方へ近づく。
「佐藤と付きおうたんは舞に俺んとこ戻ってきて欲しかったから・・・。」
「舞が何を思って俺の傍におったんかも・・・。
舞がどんな思いで俺からの別れを受け入れたんかも・・・
舞が俺と佐藤の事、どんな目で見てたんかも・・・。
そんなこと全然知らんと・・・・ただ戻ってきて欲しいって気持ちだけで・・・佐藤と付きおうたんや。」
また1歩踏み出す。
舞は何も言わずただ俺を見上げてる・・・。
「けど・・・そんなんで舞の気持ち取り戻そうなんて・・・アホもいいとこや・・・。」
「結局佐藤も傷つけてしもた・・・。舞が大事に思う佐藤を傷つけてしもた・・・。」
もう1歩。手を伸ばせば舞に触れられそうなところまで歩み出る。
佐藤の名前が出た途端、明らかに動揺しだした・・・。
「さっき佐藤と別れてきた。」
「え!?・・・・・・。なん・・・・で・・・?」
「もう逃げへんって決めたから。」
揺れる瞳を捕らえ、目を合わせる。
しっかりと・・・俺のこの想いが届くように・・・。
「舞。・・・・好きや。舞が好きやねん。」
「佐藤の事も含めて、舞が抱える不安は全て俺が受け止めるから。」
「だから・・・・俺の傍におって・・・。」
舞は何も言わんと俺を見とる。
せやけど、その瞳からは大粒の涙が零れてる。
言葉はないけれど、その涙が俺を受け入れてくれてるようで・・・。
久しぶりに舞の気持ちが流れ込んでくるような感覚。
俺の勘違いではないはずや。
舞・・・。自惚れてもいいんやろか?
「ゆ・・う・・し・・・」
舞が名前を呼ぶ。
俺の名前や。
あん時みたいに『忍足君』やない。
舞・・・・。
舞・・・!
舞・・・!!
「私っ・・・私本当は・・・本当は・・・・・・」
ぐいっ。
「もう何も喋んなや。」
「ゆ・・うし・・・・・」
「もうなんも言わんでもええから。こうやって俺に抱きしめられといてや。」
「・・・うん・・・・うん・・・・」
「言葉じゃなく・・・舞の心を感じていたい。」
「うん・・・。」
「信じてやれんでごめん。」
「ううん。」
「傷つけてごめん」
「ううん・・・。」
「一人にしてごめん」
「ううん・・・。」
俺の胸で泣きじゃくる舞が可愛くて、愛しくて・・・。
強く、でも優しく抱きしめる。
「舞・・・。好きやで」
「侑・・・士・・・」
「もう2度と傷つけへんから・・・」
「もう2度とその手離さんから・・・」
「もう1度俺にチャンスくれへんか?」
少し体を離し舞と向き合う。
ちゃんと目を見て言いたい。
「舞が好きや。俺と付きおうてくれませんか?」
「うん。私も侑士が大好きっ!!」
再び胸に閉じ込める。
舞の温もりと香りが俺の胸に染み渡っていく・・・。
もう1度ここから始めようや。
もう2度と間違わんように・・・・。
もう1度ここで誓うわ。
もう2度と離さへんて・・・・。
指を絡め・・・・・
瞳をそっと閉じたなら・・・・・
その唇に・・・・・
今、誓いを・・・・・
「愛してるで。舞・・・・。」
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終わったー!!!
完結です!!
舞さんお誕生日おめでとうございます!!
侑士との切ないラブストーリーで迎えた誕生日いかがでしょう?(笑)
リクでは「落として↓上げて↑の切ない系」という事でした。
しかし、ぶっちゃけ・・・って言うか毎度言うてますが、シリアス系はどうも苦手でして・・・
ちゃんと切なくなってますでしょうか?ww
あと、気づいていただけたかわかりませんが、以前ブログで
「萌えたセリフ」って言うのを書いてらしたので、勝手に使わせていただきました。
侑士の「もう何も喋んなや。」です。シチュ的にどうでしょう?ww
今回キャラ視点で書いたのは特に理由はないんですよ?
ただ侑士視点で書いてみたかっただけです。(笑)
大阪弁には苦労しましたが(大阪人のくせに)書いてて楽しかったです♪
思った以上に長くなっちゃって2日間にわたってUPさせていただきました。
無駄に引っ張るな!!て思われた方もいらっしゃるかもしれませんが
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
最後になりましたが舞さん本当におめでとうございます。
舞さんにとって素敵な年となりますように・・・。
゚・*:.。. .。.:*・゜Happy★Birthdayヽ((◎´∀`◎))ノ゚・