平成22年第二回定例会 本会議 一般質問(平成22年6月4日) | 上田ゆきこのブログ

平成22年第二回定例会 本会議 一般質問(平成22年6月4日)

○上田由紀子議員  新風会の上田由紀子です。第二回文京区議会定例会に当たり、区長並びに教育長に質問をいたします。

 文京区議会は、みずから議会改革を進めていくため、議会基本条例の制定を目指し、全会派で話し合いを進めています。そこで、新風会でも、わかりやすい区議会の実現のため、五月二十二日、区政セミナーと意見交換会を主催いたしました。その際の企画として、新風会が説明者役、区民の方が仕分け人となって、文京ふるさと歴史館について、模擬事業仕分けを行いました。今回は、その中で出た区民の方の意見を参考に、一、聖域のない行政評価制度について、二、文京ふるさと歴史館の見直しについて、三、新たな公共の担い手育成について、この三点について質問させていただきます。どうか誠意ある御答弁をお願いいたします。

 一つ目に、聖域のない行政評価の仕組みについてお伺いします。

 現在の事務事業評価は、実施計画の項目に関してのみなされる仕組みになっており、評価が必要だと思われる事業についても評価されていないものがあります。また、文化事業などは評価になじまないとして、評価対象外とする聖域があるのではないかとも感じました。

 例えば文京ふるさと歴史館に関してなされている事務事業評価は、友の会支援に関する項目だけであり、歴史館本体の運営については評価がなされていません。文化施設に関しても、何かしらの成果や評価を設定し、目標を立てて事業を行っていただきたいと思うのですが、いかがお考えでしょうか。

 事務事業評価は改善されてきているとの御報告をこれまでも何度か委員会で受けていますが、実施計画に載っていないが、評価が必要な事業の洗い出しも必要と考えます。また、単に事務事業のみならず、施設そのもののあり方や経常事業となっているものについても見直しをしていく仕組みが必要であると考えます。施設のあり方そのものなどについては、行財政改革の区民会議などで扱われるべき問題なのかもしれませんが、今の区民会議は、事業の重複をきちんと整理できていないと感じます。もちろん、議会は、予算委員会や決算委員会などを通じて、その部分をチェックしていかなければなりませんし、議員の仕事の重要性を再認識しました。しかし、財政状況が厳しい中、内側の論理でできないと思い込んでいるものに関しても、客観的な視点で行革を進めるには、やはりさらに外部評価機関にも指摘してもらう必要があると考えます。

 世田谷区は、これまで行ってきた外部評価委員会のほかに、世田谷版事業仕分けとも言える政策検証委員会を立ち上げ、事業見直しを提言してもらう仕組みづくりに取り組むそうです。今のところ、区民会議の協議内容になっていないものなど、どこで扱われるか、どこなら扱えるのかという問題を解決するために、文京区でもこのような会の設立を検討されてはいかがかと思います。お考えをお聞かせください。

 政策検証委員会の検証に当たって、世田谷区は、一、生涯学習などを行う世田谷区民大学など行政と民間の役割分担について、二、外郭団体の福祉事業団や世田谷サービス公社などサービス提供体制のあり方について、三、がん検診、子供医療費助成など受益と負担の関係についての三つの視点で行い、二十三年度の予算に反映させる考えです。文京区では、次の予算編成に向けて、今後どのような視点で区の事業を見直していくおつもりか、お考えをお聞かせください。

 二つ目に、文京ふるさと歴史館について質問いたします。

 私、上田由紀子は、「文の京」にふさわしい文化・芸術事業を応援しています。新たなる基本構想では、日本一の生涯学習を目指すことが明記されており、だからこそ、文京区の文化施設の運営に関して、より厳しい目で、より高い目標を達成していっていただきたいと考えています。

 そこでまず、生涯学習日本一を具体的にどのような目標を立てて評価していくおつもりか、お聞かせください。

 先ほど申し上げた模擬事業仕分けにおいて、文京ふるさと歴史館について仕分けを行いましたが、これはあくまで新風会独自の模擬事業仕分けの結果ではありますが、区民の方の意見は想像以上に厳しいものでした。私自身、準備に当たって調べるほどに、歴史館の意義や魅力なども見えてまいりましたし、区民の皆さんの意見でも、郷土資料の保存・研究の必要性にはほぼ全員が賛成をしていましたが、展示スペースに関しては、見直してほしいという意見が多数でした。以下、その際の区民の方の意見をもとに質問を行っていきます。

 まず、全区民が来やすいように、シビックセンターの地下一階のアートウォールや二十五階レストランなどに歴史館の展示スペースを移してはどうでしょうか。これまで展示スペースの移設などの御検討をされたことがあったでしょうか、お伺いします。

 他区でも、廃校舎などを利用して、教育センターや図書館との複合施設になっているところがあります。建物を保育園や特別養護老人ホームなどのニーズの高い施設に転用したり、他の施設との複合化などで区有地を活用する検討などはなされたことがあるのか、お聞かせください。

 収蔵場所の不足の問題に関しては、現在の資料収集の基準はどのようになっているのかお聞かせください。また、民間倉庫の活用や文化財の整理が法的に可能か、お聞かせください。

 常設展がマンネリ化してきていると言われますが、今の展示品やレイアウト、コンセプトは適切とお考えでしょうか。再訪していただく方のために、どのような工夫をされているのかお聞かせください。

 特別展に関しては、年一回か二回しか実施されていません。企画の工夫や広報などの努力はされているようですが、入館者数の伸び悩みに対する対策は適切であるとお考えでしょうか。今後、どのような対策をとられるおつもりか。例えば企画そのものによる集客力アップを図るため、外部のキュレーターなどに企画を委託することなど検討されたことはあるでしょうか。ミュージアムネットなどとのタイアップ企画が一度あったようですが、他の公共施設や区内の観光地やイベントとのタイアップはされているのかお聞かせください。

 また、接客に関して、チーム文京スピリットで重視されているホスピタリティー、おもてなしの心は、歴史館のどの部分にあらわれているとお考えか、お聞かせください。また、類似の役割を持った施設や組織として、各区立学校の校歴室や、今度建設予定の鴎外記念館、教育推進部庶務課文化財係などがあると考えられますが、現在、役割分担をどのように行っているのでしょうか。文化財係の文化財に関しては、歴史館とは全く別に保存されているとのことですが、貴重なものが出たときには、ぜひ歴史館での展示なども検討していただきたいと考えますが、展示可能な文化財はどのくらい発掘されているのでしょうか。

 次に、各区立学校にある校歴室についてお伺いします。

 校歴室がある学校、ない学校があるかもしれませんが、校歴室の中には、卒業生の作品や賞などのほかにも、民具や寄贈を受けた備品などさまざまな文化財も展示されている場合があるようです。文化財の状況が、各学校でとまるのではなく、学務課まで上げてもらって、区全体で把握できるようにする必要があると考えますが、いかがでしょうか。また、もし貴重なものを保管していることがあれば、好ましい保存環境を整えるためにも、歴史館の専門員による指導があった方がいいと考えます。機会があれば、区内のほかの学校の生徒にも触れさせてあげてほしいと考えますが、いかがでしょうか。

 三つ目に、新たな公共の担い手育成についてお伺いします。

 区長は、マニフェストの中に、「地域への分権によるコミュニティの再生、地域の問題は地域で決めていただくよう自治体内分権を進め」「区民の自立的な活動と地域のさまざまな問題に対応するための制度を検討します」と書かれていますが、協議会などを立ち上げて、どんどん分権していくことだけでなく、担い手側の様子を見て、抱え切れる負担なのか、担い手が戸惑ったり、わからないことがないか様子を見ていただきたいと思います。

 「新たな公共の担い手」「区民協働」などの言葉のもとに、避難所運営協議会や学校支援地域本部など、地域の方たちに御負担をおかけしていることは事実です。もちろん地域の方も、公の仕事の一部を担いたいという思いは強くお持ちですが、区から期待されている役割が、これまでとは質的にも量的にも違うものになってきており、戸惑っていらっしゃるように感じます。本当に自治体内分権を目指されるのであれば、急ぎ過ぎず、もっと新たな公共の担い手育成に係る手間や時間を十分に確保する必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 また、今は町会役員など一部の方たちが中心になっているものを、さまざまな区民の方にも参加していただきたいと思います。今後、区民の参加モチベーションアップのための取り組みはどうしていくおつもりか、お聞かせください。

 企画政策部等が事務局の協議会は、もともと全庁的な視点で区民意見を吸い上げることができています。しかし、各所管がつくる行政計画に関して出た区民意見が所管外のものであった場合、必ずしも十分な回答を得ることができているとは限らず、せっかく参加された区民の方たちの中に、「どうせ意見を言っても変わらないのでしょ」という思いが出てくることになり、参加の動機づけが弱まる場合があります。各行政計画で出た意見などで所管が違う場合には、区民意見を共有化する仕組みづくりが必要であると考えます。

 例えば、広報課の区民の声に出された意見は、各課に振り分けられて、質問者に回答をされています。所管で答えられなかったものを、一たんここに一元化して振り分けてもらい、回答する仕組みをつくってはどうでしょうか。

 以上で質問を終わります。御静聴ありがとうございました。


<答弁>


○区長(成澤廣修)  上田議員の御質問にお答えします。

 最初に、行政評価制度に関する御質問にお答えします。

 まず、文化事業・文化施設への事務事業評価の実施についてのお尋ねですが、現在の事務事業評価は、基本構想実施計画事業を対象としているものであり、「文の京」文化発信プロジェクトを初め、各種文化事業も当然に評価対象であり、聖域とはしておりません。また、施設のあり方については、これら個別事業の評価を積み重ねる中で検証されるものもございます。

 今後、新たな実施計画の策定や行財政改革推進計画の進行管理や改定に向けた作業の中で、施設そのものの評価のあり方についても議論してまいりたいと考えております。

 次に、事業見直しの仕組みづくりについてのお尋ねですが、事業の必要性や有効性などについては、予算委員会や決算委員会等で十分御議論いただいているものと認識しており、現時点では、いわゆる事業仕分けを実施する予定はございませんが、同様の役割を担う方策については、議論してまいりたいと考えております。

 次に、来年度の予算編成に向けた区の事業の見直しについてのお尋ねですが、予算編成に当たっては、事務事業評価の結果も考慮しながら、各事務事業の必要性を厳しく見きわめ、必要に応じて抜本的な見直しを行うなど、スクラップ・アンド・ビルドの視点を徹底してまいりたいと考えております。

 次に、文京ふるさと歴史館に関する御質問にお答えします。

 まず、生涯学習日本一の具体的な目標や評価に関するお尋ねですが、基本構想で掲げている「生涯学習日本一のまち」の目標等の具体化については、現在策定中のアカデミー推進計画の中でその方向性をお示ししたいと考えております。

 次に、展示スペースの移設や建物の転用についてのお尋ねですが、ふるさと歴史館の展示につきましては、特別展の関連企画や、第二会場として、シビックセンター一階ギャラリーシビック等を一時的に使用しております。

 しかしながら、シビックセンター内の展示室等は、区民の展示利用等のニーズが高く、設置の目的が異なるものであり、歴史館機能を恒常的に移設することは考えておりません。また、他の施設との複合化等の検討は行っておりません。

 次に、資料収集の基準や民間倉庫の活用等についてのお尋ねですが、ふるさと歴史館における資料収集につきましては、文京ふるさと歴史館資料取扱要綱を定めて運用しております。

 また、民間倉庫の活用等は、法的には問題がないと考えております。ただし、現在、実際に民間倉庫を活用することは検討しておりません。

 次に、常設展のレイアウトや入館者の増加策についてのお尋ねですが、現在の常設展示は、レイアウトが固定されているため、大規模な展示がえが困難な状況にあります。このような中で、再度来館していただくためにも、適宜展示資料の入れかえも必要であり、平成十八年度より順次可能な範囲で文学コーナーの展示がえ、全体の資料の入れかえ、ミニ企画コーナーの新設などを行っております。

 次に、集客力アップの対策に関するお尋ねですが、集客力のアップを図るため、ふるさと歴史館では、これまでさまざまな工夫をしてまいりました。

 他の公共施設とのタイアップ事業として、十八年度に、千代田区、新宿区との同時開催による特別展「徳川御三家江戸屋敷発掘物語」を、二十一年度には豊島区との連携による特別展「実録!『漫画少年』誌」を開催いたしました。

 今後はさらに外部人材の活用などにより、魅力ある企画に努め、さらに集客力の拡大を図ってまいります。

 また、御指摘の文京ミューズネットでは、合同イベント開催の中核を担うほか、各施設で相互にPRを行うことにより、より多くの方が来館していただけるような取り組みを行っております。

 次に、ホスピタリティーについてのお尋ねですが、来訪された方々に、来てよかったと感じていただくため、例えば区外からの史跡めぐり等の団体に対しては、ふるさと歴史館友の会と協力し、御要望に合わせた個別のまち案内などを行ってきております。また、高齢者等への配慮として、展示解説作成に当たっては、文字を拡大するなどの取り組みを行っております。

 今後とも、区民感動の実現に向けて、質の高いサービスを提供できるよう努めてまいります。

 次に、区の類似施設等との役割分担についてのお尋ねですが、(仮称)森鴎外記念館は、鴎外を中心に、文学に特化した資料の収集等を行うこととしており、今後、ふるさと歴史館との役割を調整して連携を図ってまいります。

 一方、区立小中学校の校歴室は、各学校の歴史や保管している資料等を展示し、学校で活用されることを前提としております。また、教育委員会においては、主に区内で出土した埋蔵文化財を保管しておりますが、これらの施設等は、ふるさと歴史館とは異なった役割を担うものであると考えております。

 次に、森鴎外記念館において、歴史館の教訓をどう生かすかとのお尋ねですが、森鴎外記念館では、可動式の展示設備を用いることで、常に新たな空間との出会いを演出し、繰り返し来館者に楽しんでいただける施設を目指してまいります。

 最後に、新たな公共の担い手育成に関する御質問にお答えします。

 まず、新たな公共の担い手についてのお尋ねですが、新たな公共の担い手については、このたびの基本構想の実現のために中核を担うものであり、その確保と育成は区政の重要な課題の一つであると考えております。

 担い手としての人材を育てることは、一朝一夕にできることではありませんが、本区の有する豊富な人材の発掘と活用を着実に行ってまいります。

 また、今年度から新たに地域活動への参加を後押しする事業として、地域貢献講座を開催いたします。本講座を通じて、地域の課題解決に向け、区民一人一人が参画意識を高め、知恵を出し合う協働社会の基盤の構築につなげていきたいと考えております。

 次に、各行政計画における区民意見の共有化に関するお尋ねですが、言うまでもなく、さまざまな協議会などでいただいた区政に対する意見等を分析し、区政に生かしていくのは、第一義的にはそれぞれの協議会を運営する所管課であります。

 御指摘の区民意見の共有化については、庁内で十分に連携が図られていると認識しておりますが、今後より一層、区民参画が進展していくことを踏まえて対応していきたいと考えております。

 なお、教育に関する御質問には、教育長より御答弁申し上げます。



○教育長(根岸創造)  教育に関する御質問にお答えをいたします。

 初めに、埋蔵文化財の展示等についてのお尋ねですが、現在、ふるさと歴史館の常設展示や汐見地域活動センターにおいて、区内から出土した埋蔵文化財を展示しております。

 ふるさと歴史館では、適宜特別展などを開催しておりますので、今後とも貴重な埋蔵文化財等について、展示の機会が設けられるように協議してまいりたいと存じます。

 また、埋蔵文化財は、AからEまで五段階に区分しておりますが、資料的価値の高いAランクとBランクの出土品は、保存箱の数が五千箱ほどになっており、区内五カ所の収蔵庫に保管しております。

 次に、校歴室についてのお尋ねですが、各学校の校歴室には、長い歴史の中で寄贈を受け、学校の備品となったもののほか、在校生や学校を訪れる卒業生、地域の方々に見ていただきたいと一時保管を依頼されている物品などがございます。これらは、当該学校で活用されることを期待して保管されているものであり、それぞれの学校で保管・管理することが望ましいと考えております。

 また、保管・管理に当たりましては、文化財調査員の指導等を受けることもございます。

 なお、他校の児童生徒の校歴室利用については、各学校間の連携や協議により行うべきものと考えております。