ともに人生を過ごしてきた仲間のひとりが、空の下からいなくなった。
享年54歳。
倒れてから、息を引き取るまで一カ月。
彼の厳しい状況を聞くにつけ、ただ祈るしかなかった。
そして、その知らせが来たあと、葬儀に行くのを迷いに迷った。
行けば、あいつの死を認めることになると思った。信じたくなかった。
でも行くことにしたのは、高校時代の友人が亡くなった二十代に葬儀に駆けつけられなかったことを今でも悔やんでいるという、ツレさんが背中を押してくれたから。いまは彼女に感謝している。
賑やかな通夜だった。彼は小さいながらも会社を率いる経営者だったから。
彼の命を奪ったのは、脳溢血と腎不全とのことだった。倒れた日も直前まで、精力的に仕事をしていた。その日昼飯を終えたあと、突然倒れた際に口走った「やばいやばい」が最期の言葉だった、と。
わたしが最後に彼を見たのは今年一月。あのとき一言でも、言葉を交わしておけば。「次」はいつでもあると遠くから目を合わせただけだったのが、返す返すも残念でならない。
わたしがツレさんと一緒になることになったとき、すぐに宴を開いて祝ってくれたのはあいつだった。誕生日が二カ月しか変わらなくて顔立ちも背格好も髪型もよく似ていたので、最初のころはよく周囲にあいつとわたしは間違われた。でも残念ながら、あいつのほうがイケメンで足も長くて、なによりも、ほんとうにいいやつだった。
棺に横たわるあいつの顔を見た。お互いさまだが、あの頃にはなかったこめかみの白髪が目につく。
静かに永遠の眠りについたあいつを目の当たりにしても、現実感がなさすぎて涙もでない。
わたしは真っ白なその顔に向かって、ただ掌を合わすことしかできなかった。
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