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わたしが中高生時代、妹の別冊少女コミックを奪って愛読していた渡辺多恵子先生の初連載漫画「ファミリー!」。物語の終盤に、「ハイヒール・スプリンター」というエピソードがありました。

「ハイヒール=女性らしさ、窮屈」「スプリンター=男性らしさ、自由」の隠喩といえましょう。

 

主人公のボーイッシュな少女フィーは、彼女に恋する青年レイフ(フィーは彼を親友だと思っている)に、女の子だからとスポーツで手加減されているのを知って面白くない。

そんな時、レイフの母親ルイスに出会ったフィーは、ハイヒールに象徴されるルイスの女性らしさに反発するのだが。

「フィーが今思ってること全部わかるわよ」「女なんてつまんない、ヒールはいて息詰まる化粧して…これはあきらかにハンディキャップだ」そしてルイスはこう続ける。

「あこがれてた陸上部の先輩がいきなり真っ赤なハイヒールをはいてきた時はもうショックだったわ」「でもある日気づいたの、そう思ってる自分はまぎれもなくつまんない女だなって」

「(ボーイフレンドにかっこよく見られたくてハイヒールをはくのは)バカみたいだけど、それってすごくいじらしいなって思ったの」

ルイスがかつて、自分と同じ思いをしていたのを知ったフィーはレイフに言う。

「素敵なお母さんだね、ウソつきだけど。〝女の子はスプリンターになれないかわりに別のものを手に入れる〟って。だってあの女(ひと)はヒールでだってスプリンターだもの、今だって走ってる」

「あんな女(ひと)になりたいな」

 

ユッコこと岡田有希子さん。憧れのステージに立つ夢を叶えて、そして真っ直ぐに駆け抜けていった彼女もまた「ハイヒール・スプリンター」だったのではないでしょうか。

 

…いま唐突に、ユッコさんがまだ空の下にいた頃に描かれた漫画のエピソードを思い出したのは、もちろん理由があります。

 

五十肩を言い訳にサボっていたランニングを再開したのですが、先日ハイヒールにスーツ姿の女性に追い抜かれてしまったんです。

あちらはヒールで足早な歩き、こちらはランニングシューズで走ってる、にもかかわらず!

 

そして。あろうことかどうしても追いつけない、決して手加減しているわけじゃないのに。明らかにその女性よりわたしの方が足も長いのに。激しく響くヒールの靴音とともに、歩き去る彼女の背中が小さくなるのを見送ったのです…。

 

というわけで、現実のハイヒール・スプリンターにわたしは完敗したのでありました。

おしまい!

 

赤い靴はいてた女の子ならぬ、親父のランニングシューズはいてた幼いわが子。

photo by yukikostarlight