田舎の高校生だった頃、わたしの家には一匹の猫がいました。
家に来たばかりの頃はちいさくてかわいくて、冬の朝、新聞配達のバイトのために布団から這い出るわたしの横で、子猫を抱えてぬくぬくと眠る中学生の妹が妬ましかったのを覚えています。
一年も経たないうちに、ちいさくてかわいかった子猫は尻がお餅みたいにまん丸い、ふてぶてしい猫に変貌しました。時々ふらりといなくなっては、数日すると何事もなかったかのように帰ってくる不良猫。いま思えば、ほかの家でも餌を貰っていたのかも。近所の猫と喧嘩したのか、耳を噛まれ、血を滲ませて戻ってきたこともありました。
わたしが昼寝をしていると、猫はなぜかおもむろに仰向けのわたしの胸の上に乗ってくる。重い。そしてどういうつもりか、わたしの顔をベロベロ舐める。猫に舐められると、ひりひり痛いのをご存じでしょうか。
なんとなくそばにいるのがあたりまえだった、わたしの猫との日々。
そんな毎日がどれだけ続いたでしょうか、
ある日いつものようにふらりと家を出た猫が、帰ってくることはありませんでした。
猫の一生は、人間の一生よりはるかに短いもの。
なのにわたしより猫のほうが、ずっとのんびり構えて、すっかり悟ったような顔をしていました。
ユッコこと岡田有希子さん。彼女はそれこそ成長期の猫のように早熟だったのでしょう。そして、猫の生涯のように、凝縮された時の流れのなかを生きていたのかもしれません。
願わくば、彼女には成長期を過ぎた猫のようにのんびりと、穏やかに生きていて欲しかった。
人間の寿命が猫の寿命とは違うように、空の上にいるユッコさんと空の下のわたしたちは同じ時間を過ごせません。彼女はいつまでも18歳のままだし、わたしたちはどんどん歳をとっていきます。
それでも、わたしはユッコさんがファンに望んでいた「いつまでも、一緒にいてね。」との願いに応えて、ずっと彼女の微笑みを胸にとどめておこうと思います。
あなたのぶんも、生きていくからね。
photo by yukikostarlight
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