八ヶ岳ファーマーズマーケットでの園芸教室2日間、無事に終わりました!




ありがたいことに2日とも立ち見の方もある程の盛況ぶり。

八ヶ岳ファーマーズマーケットの主催者の皆さん、そして講演を聴いてくださった方々に感謝の気持ちでいっぱいです!

東京の友人や八ヶ岳の庭友さん達も大勢駆けつけてくださいました。

参加者の中には、ブログや「無農薬でバラ庭を」を愛読されてるという方もいらっしゃって。

さらに、本の内容通り実践され東京のハーブ園で成果を得ていると言うお二人や、無農薬でのバラ栽培をYouTubeで発信されてる方もわざわざ東京からいらっしゃっていてびっくりでした。

私が知らない所でも、自分がやってきたことが少しでもお役に立っているなら嬉しいことです。


今回の講演に使ったプレゼンのアウトラインを文字起こしして以下にまとめてみました。


すごーく長文ですが、何かしら参考になることがありましたら幸いです。




八ヶ岳ファーマーズマーケット講演アウトライン


オールシーズン楽しむ庭造り  〜生き物達と一緒に    楽々ガーデニング〜


 1 自己紹介 

 

「無農薬でバラ庭を」2009年築地書館 著者 

 ・オーガニックな庭造り歴30年
・2020年春 東京郊外から八ヶ岳南麓に移住 

 ・宿根草主体の八ヶ岳の庭(200坪)を無農薬無肥料で営む 庭造りを始めたのは2012年から

・自然に色同士がにじむ印象派のパレットのような既視感の無い庭がめざすイメージ 

・四季折々、主役が自然に入れ替わって庭景色を作るローメンテナンスな多層プランティング ガーデン




 2 今日のお話で言いたいこと 


『生き物たちと一緒の庭づくりはラクで楽しい!』 


 今注目の「ナチュラリスティック ガーデン」の視点から 



 3 昨年はナチュラリスティックガーデン元年? 


趣味の園芸10月号で特集記事&放送 


オランダのナチュラリスティックガーデンの第一人者ピート アウドルフさんの宿根草図鑑(1990年) の翻訳本が出る 


 

◯そもそもナチュラリスティック ガーデンとは? 


「自然の植生からインスピレーションを得て 人が自然に触れた時の感覚を呼び起こす風景を構築していく」


産業革命以来、失われ続ける自然に対する危機感から生じた人 の手によって自然を守り、自然の風景に根ざした庭をつくるという思想に基づく庭造りの潮流 


 「ナチュラリステッィク・ガーデン 十勝千年の森」新谷みどり著より



 ◯その具体的な方法とは?

「趣味の園芸」2023年10月の記事から


 ・環境に合った宿根草を使い 植物の造型そのものに注目してデザイン 

 ・芽出しから枯れ姿まで 朽ちていく姿にも美しさを見出す 

 ・生態系に配慮した 生き物たちと共にある庭 


 「庭の自然」の在り方を追い求める 庭づくりのムーブメント 



 芽出しから冬の枯れ姿まで オールシーズン楽しめる庭・生き物達と共にある庭 というコンセプトは、私の「オーガニックな庭づくり」と一致!ナチュラリスティック・ガーデンの考え方に大きな感銘を受けた



 4 生き物たちはガーデナー 


今日の副題「生き物達と一緒に楽々ガーデニング 」にもあるように、80歳になっても楽しめる庭を目指したいと常々考えている 


 そのためのキーワードは? 

 「生き物達は皆ガーデナー」 


 ・庭の生き物達は敵対するものではなく、ガーデニングを一緒に やってくれる大切な仲間という発想の転換を!



◯虫や野鳥と共に庭をつくる 


虫の害は、生き物たちにおまかせ!


 人間が意識するとよいこと

 ・庭は生き物の棲みかであること

・庭は生き物が食べ物を得る場所であること

 ・農薬は生態系に影響の無いものを 


☆例えば嫌われ者のアブラムシですが…アブラムシの天敵に任せてください! 


テントウムシは成虫も幼虫も大食漢 


ヒラタアブもアブラムシの天敵

ヒラタアブのさなぎと卵の紹介   


クサカゲロウもアブラムシの天敵 


生態系の底辺でたくさんの生命を支えているのがアブラムシ(海のプランクトンみたいな存在)

アブラムシが居なければ、天敵達は生きていけない


☆アブラムシ以外の植物に害を与える虫の天敵は他にもたくさん居て… 


イモムシを狩るコアシナガバチ 

カマキリも肉食の昆虫 

アキアカネ 飛翔昆虫を食べる 

カナヘビ 虫を食べる 


☆頼もしいのはシジュウカラ等の野鳥たち  子育て中は何万というイモムシを狩って幼鳥に与える 


☆このように、庭があるとその中でいのちがめぐる


生き物を呼び込める多様な植栽にすると、生態系のバランスが取れていつの間にか虫の害が少なくなる!



☆ただし、どうしても困ったときは? 


 テデトール(手で捕る) 

 インドセンダンの実から抽出されたニームオイル(草食性の虫に作用し食欲や脱皮を疎外、日光・魚毒性に注意)


 ペットボトルを使った手作りの捕虫器の紹介 


 テッポウムシの穴には、ニームオイルを噴霧器で吹き込むと、生きたまま這い出てくるのでそれを捕殺 



◯大切なのは、庭が生き物の棲みかになる喜び・楽しさがあること


バラの枝にホオジロの巣 、シモツケの繁みにホオジロの卵 

冬に庭に来る野鳥たち 

特に冬枯れの庭は、 虫の隠れ家・野鳥の餌場になる 

早春にカットバックしてるとやってくるジョウビタキは虫がお目当て


早春に真っ先に吸蜜に来るハチやハナアブ 

タンポポも大事な蜜源 

タンポポの綿毛を刈り倒すとカワラヒワやスズメが食べに来る 


初夏に現れたウスバシロチョウの食草は、 早春に咲くムラサキケマンだった

"FUJI 8/12"とマーキングされた
アサギマダラがブッドレアに! 


庭が生き物達を通して周囲の自然とつながるのはとても大切なこと!

どんな小さな都会の庭でも緑ある場所は周囲の自然をつなげる生き物たちのホットスポットになる

庭は生物多様性の立役者!!


◯ 生き物たちと共にある庭っていっても、鹿対策はどうする?...鹿と一緒に庭づくりできるの? 


・自分の庭でかじられにくい植物を見極める(うちの庭の場合はキンポウゲ科 セリ科等) 

・かじられても復活する植物を選ぶ(鹿剪定と考えて) 

・ユリ科バラ科は食べられやすいので植えるのを我慢する?!か、囲う等の物理的な対策をしている

・木酢液を散布してみる(獣は山火事の臭いを嫌う!) 


☆鹿剪定

オーバーグロウ カットバックと言って夏秋に大きくなる宿根草には初夏に切り戻しの作業をして開花時の高さを調整している。フロックスパニキュラータやアスターは、春先に鹿に齧られても剪定してもらったと考えれば気が楽になる

☆バラの鹿対策は、ラウンドトレリス等で物理的に囲ったり、高い位置で咲かせる等の仕立て方を工夫している




5 土作りも生き物達にお任せ


土壌改良も、土の中の生き物達に土をつくってもらえばよい

・土壌生物(ミミズ、ダンゴムシ等)は、有機物を食べて分解

・土壤微生物は、有機物の分解を進める、植物の根と共生して植物の成長を助ける

土づくりは耕さずに これらの土中の生き物達におまかせ!


◯土に棲む生き物たちは 地球のいのちを支えている

 
有機物を分解する土壌生物は常に土を耕している

植物の根と共生する菌類は、4億年前に植物が陸上に進出した以来、共進化し続け今に至る


◯「菌類を可視化してみよう」

バラと共生している土壌菌が元気だと、無農薬で夏も葉を保つ東京のバラ庭を写真で紹介

八ヶ岳の庭でも米ぬかを撒いたり有機物マルチをしたら、5月に菌のコロニーであるはんぺん、10月に土の団粒化が見られた 気候が違うので、菌類の働きは暖地より時間がかかる印象


◯豊かな土壌にするには森林を見習う

・土壤生物の餌となるもので常に土の上を覆っておく 有機物でマルチ

・菌と共生している生きた根を保つ

・耕さない!

◯なぜ耕さないのか…土は腸と同じだから!

腸内細菌と人間が 共生しているのと同様に、植物の根も土壌菌と共生して成長に必要な養分を得ている

「土と内臓」2016年デイビッド・モンゴリーより

腸内細菌と人間が 共生しているのと同様に、植物の根も土壌菌と共生して 成長に必要な養分を得ている

比喩的な言い方ではあるが、よく噛まないで飲み込むと おなかをこわすのと同じで、未熟な有機物を 土の中に 直接入れてはいけない!

ただし、たとえ未熟な有機物でも、 土の表面にマルチするだけなら 土壤生物や菌類が 自然に分解して土を豊かにするので 耕さなくていい!


◯有機物でマルチしておくとよいことが3つ

・土を乾燥や紫外線、浸食から守る
・草が生えにくくなる
・耕さなくても自然に土が団粒化する


◯有機物マルチの具体例

・ウッドチップでマルチ
主に通路 防草・水はけ

・バーク堆肥でマルチ(萌木の村)
花壇の美観向上 防草 土壌改良

・牛ふん堆肥でマルチ
多肥を好むものに適

☆「牛ふん堆肥でマルチする場合


・バラにはたっぷり施してもOK
(他の肥料との併用については加減する)
・花壇には薄っすらと地面が隠れる程度に

※発酵鶏糞は、肥料分が高すぎるのでマルチには向かない(有機肥料として使う)



◯植物残渣でマルチは、究極の楽々ガーデニング!

「カーボン ファーミング」
有機物を持ち出さず その場で土にマルチすると 炭素を固定できる
「土を育てる」 2022年 ゲイブ・ブラウン著より

・アーリースプリング カットバック(積雪がある地方は晩秋に行うが)
冬の間に枯れた植物を早春にカットバックして出た残渣で花壇一面をマルチしている


・生の植物残渣もマルチに使える

ただし…

 抜いたオルラヤでマルチした翌年、敷いた場所が一面こぼれ種から育ったオルラヤで覆われてしまった!

こぼれ種の心配が無いキャットミントは花後に刈り込んだ残渣をマルチに使える

花壇の縁を植物残渣でマルチしておくと草が侵入しない

・刈った草もマルチに使える


種が付く前の草でマルチをした場所は、草が生えにくくなる 昔、地元の農家さんはこのやり方で土を肥やしていった



・生きている草も有機物マルチ


ハコベ等の春の草は、適宜むしってコントロールするとマルチとして活用できる。

・もちろん、植栽も大事なグランドカバー(生きたマルチ)

宿根草の花壇は、植えて数年たつと地下にもゆるぎないネットワークができ、草が生えにくくなる

うちの庭ではモグラも遠慮して!?花壇には入らない
こうなると、外から有機物を持ち込まなくても花壇の中の有機物を土に返すだけで土が年々よくなる


◯ただし、いきなりこうはならないので、最初だけは堆肥をすきこむ

花壇を新たに造る場合
痩せた土に苗を植えこむ
早く成果を得たい・・・ような場合は?


・完熟堆肥を使って

① 苗の根が張っていくスペースをシャベルで掘って、完熟堆肥をすきこむ

②植えた後、株の周りや花壇全体を堆肥でマルチしておく


・完熟堆肥が手に入らない場合

① 植え付けの前に花壇に堆肥をすきこむ。

② しばらく熟成・分解させてから苗を植え、堆肥で花壇をマルチする。



6 宿根草の庭造りのヒント


ナチュラリスティック・ガーデンの考え方(以下の三点)を庭づくりのヒントにしてみよう

◯環境に合った宿根草を使い 植物の造型そのものに注目してデザイン

○芽出しから枯れ姿まで 朽ちていく姿にも美しさを見出す

○生態系に配慮した 生き物たちと共にある庭(ここまでの話で説明済)



◯「環境に合った植物選び」が大事
環境に合っていれば、丈夫で長持ち
リライアブル、信頼できる

楽々ガーデニング!のためには適材適所で植物を選ぼう

植物に合う環境は植物によって違う
・耐寒性・耐暑性
・日当たり 日向・日陰 半日蔭(朝日・西日)
・乾燥した土壌・湿り気のある土壌
・水はけ
・風通し

☆わからないときはとりあえず、 違う環境の三か所に植えてみる!

・同じ庭でも場所によって環境が違う
・庭の中でも環境が違う場所に試しに植えてみるとうまくいくことがある
・気候変動が進む中でのチャレンジ

☆植物選びで気を付けたいこと

〈侵略的に広がるもの〉
・こぼれ種で広がるもの

オルラヤ ルドベキア ヘリアンサス等
・地下茎や根で拡がるもの

青花フジバカマ等、グラスの一部

〈支柱が必要なもの〉

デルフィニウム シャクヤク等

〈そもそも短命なもの〉

アガスターシェ アルケア アンチューサ アキレギ アセントランサス ジギタリス... 枯れても私のせいではない!?

☆こぼれ種で広がった失敗例

オルラヤやこぼれ種で広がるルドベキアタカオ等

侵略的に増えるものは、シードヘッドを放置しないことが大切

☆侵略的に地下茎や根で広がった失敗例

青花フジバカマや斑入りクサヨシ等

こういったものは、植え場所をよく選ぶ

☆支柱が必要なものは倒れにくい品種を選ぶか構造物の側に植える 
シャクヤク デルフィニウム等

☆短命なものは種で繋げられる傾向がある
ヤマオダマキ(こぼれ種で移動して景色をつくる) 

ジギタリス(2年草 毎年苗を補充する)


◯「植物の造型そのものに注目して
デザインする」って?

・人工的な構造物に頼らず庭を構成する ※実際にはこれにこだわらず、自由に庭表現を追及してよいと思 いますが...

・植物そのものを建築的な構造と捉える

・植物の花色というより、全体の大きさや葉の形・質感の組み合わせに留意する


まず、とっかかりとしては?


☆形や質感が違うものを組み合わせる


・丸いもの尖ったもの ふんわりしたもの
・曲線を描くライン ドット
・直立した線 横に広がる面
・背が高いもの低いもの中間のもの
・質感が硬いもの柔らかいもの
・重い感じのもの軽い感じのもの


上のような観点でピートさんの図鑑の表紙を改めて見直すと、自然に見える庭風景の中にデザインの意図が見えてくる

ナチュラリステッィク・ガーデンのデザインを追求すると自ずと植栽が多様になる

多様な植栽には多様な生き物たちが集まってくる

土壌環境や土壌微生物も多様になる

生き物たちと共存共栄する 持続的なガーデンが実現する!



◯植物を植えるときに留意すること


☆「3」がキーポイント!

・3株ずつ株間を明けて同じ品種を植える 宿根草が自然に生育した姿に習ってマス(集合体)で構成するとよい

・三角形で配置し、リズムや流れを作る

・3年待つ! (早く景色を作りたければ移植覚悟で密植してもいいけど)


(例)アオチカラシバを三角形で配置して庭景色を作る


☆宿根草の花壇は、とりあえず植えておけば、植物達は互いに折り合い、自然に広がったり動いたりして景色を作ってくれる!




7 芽出しから枯れ姿まで楽しむ八ヶ岳の庭の四季


オールシーズン楽しむ、ナチュラリスティックガーデンの考え方を取り入れた私の庭の四季の紹介

「芽出しから枯れ姿まで楽しむ」


【早春】アーリースプリングカットバック 八ヶ岳は雪が少ないのでカットバックは春先に行っている

刈り取った残渣で有機物マルチ
春を待つ庭での楽しみはクリスマスローズや丸く刈り込んだグラスの切り株


 
【春】春が遅い八ヶ岳では、新春は球根が頼り 球根で彩る

鹿にかじられない水仙は、頼りになります
しゃがみこんで宿根草の芽吹きや背の低い早春の花々を楽しむ


【初夏】バラと一年草・宿根草の共演

八ヶ岳では、バラの時期はまだ宿根草の咲き始めなので、春先に植えた一年草が活躍する


【夏】宿根草とグラスが本番を迎える


アナベル・ヘリオブシス・ルドベキア
フロックス バニキュラータ
などが、うちの庭ではリライアブル

季節ごとに植え替えしなくても、自然に移り変わる宿根草がつくる庭景色は圧巻


【秋】 グラス・秋の宿根草

グラスや宿根草の紅葉が晩秋まで楽しめる 1年で一番カラフルな秋の庭


【晩秋から初冬】


植物のカタチが際立つ晩秋の庭
ここからが、ナチュラリスティックガーデンの本領発揮!
霜との競演 フローズンガーデンはとりわけ美しくて

グラスの魅力例

ディスカンプシア ゴールドタウ


【冬】枯れ庭の楽しみ

庭の植物を束ねてクラフトづくり

庭は虫や鳥が生命を繋ぐ場所に




おわりに…


ナチュラリスティックガーデンに限らず、心にある理想の庭は人それぞれ様々


都会のどんな小さな庭でも植物のあるところには必ず生き物が集まってくる

適地適草を見極めて植物を植え庭造りをするのはとても奥深い作業


「庭の自然」と真摯に向き合うと、たくさんのことを庭から学べる

生き物たちと共に、一番身近な自然である「庭」との暮らしを楽しみましょう