桜の季節になると思い出す。
仕事仕事仕事でちっともゆっくりしなかった夫と、癌の治療に通う2時間のドライブの途中に桜が綺麗に咲いている住宅街があった。
初めのうちは車の中で見ていたのだけど、外に出てみようかと夫が言うので、ある時からお昼を作って病院に出掛けるようになった。
病院の日の朝はサンドイッチを作り、治療がおわると車を走らせ公園で車をおりて食べた。
最期の日が近づくにつれて、車を降りはするものの「後で食べるね」と言って彼はほとんどサンドイッチに口をつけなかった。
外に出て空気を吸って、何を喋るわけでもなく2人で桜色の空を見ていた。
夫と眺めた桜。
来年はきっと2人で見ることはないんだろうなと、ある種の覚悟をもちながら見た空。
だから桜の季節はなんとも言えない気持ちになる。
夫は今何をしているのだろうか。
今年も桜を見たかな。
そう思いながらひとりで見る桜。
苦しくなる。