喜劇な日々
  • 05Apr
    • 雑記のようなもの(研修編14)

      3月21日(水)いよいよ明日が本番なので、この日も準備に明け暮れる。プレイリーディングで使用する台本と同様の、A4サイズの用紙を床一面に敷き詰めようと決めたので、宿の管理人さんに近所の文房具屋を教えて貰う。『Ryman』という色んな所にあるお店。けっこう品数豊富。行ってみたら他にもあれもこれもと思いついて、明日手伝って貰う方々に、あれないですか、これないですか、とメールしまくる。必要なものを買い終え、なんとなくいい音色のする鐘が欲しいかも…と思い、ピカデリーサーカスからソーホーのあたりをうろうろと彷徨う。色々店はあるのだが、それっぽいものは売ってない。風鈴でもいいような気がしてジャパンセンターも見てみるが、さすがに置いてなかった。Aさんが「子どものおもちゃみたいな鈴はあるよ」と返信をくれたので、持ってきてくださいとお願いする。ギリギリまで探して夜はNottinghill gateへ。ご招待いただきPRINT ROOMで『COMET』を観る。とても面白かった。わたしにとってはこれまであまり観たことのないタイプのもの。そういうものを観ると創造力を刺激される。終演後、劇場の地下のバーで行われたパーティで、明日のことなどを少し相談。帰宅後はずっと、台本を読んで妄想を膨らましたり、英語でこれはどうやって伝えるんだと調べたり。結局、あまり寝られず。気づいたら朝。

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  • 03Apr
    • 雑記のようなもの(本屋とか街とか)

      ロンドンの本屋さん、とても居心地がいい。とくにピカデリーサーカスから歩いてすぐの所にある『Waterstones』が、とても好きだ。本がとにかく沢山揃っていて充実している。演劇関係の本も種類があり過ぎてどれにするか迷う。ちょっと読むためのソファもテーブルも置いてあるし、そこで打ち合わせしている人もいるし、地下にあるカフェも居心地がいい。雑貨屋さんも物が豊富で充実している。おしゃれな本の装丁を観ているだけでも楽しいし、日本人作家の本を見つけると嬉しい。Sさんに教えて貰ったボンドストリートから歩いてちょっと行った所にある小さな本屋さんは、本のセレクトが面白い。店内はまるで映画にでも出てきそうな吹き抜けになっていて、可愛らしい。ロンドンで買ったのは前述の『CALL ME BY YOUR NAME』と先日ミュージカルを観た『Matilda』、それからコナン・ドイルのシャーロックホームズシリーズを2冊。好きな本なら英語でも頑張って読めそうな気がしたからだ。もし時間があるなら本屋巡りをしたいと思ったがそこまでの時間はなかった。それからとにかくよく歩いた。いや日本でもけっこう歩く方だとは思っている。が、それよりも歩いた歩いた。駅と駅の間隔が近いから歩こうと思えば歩けるし、ひとたび公園に入ったら広いので歩きまくる。街並みを見ているとゆっくり歩きたい気持ちになってくる。家の形や店のディスプレイなどを見ながら歩いていると、結構沢山歩いたことも忘れてしまう。そういえば雨の時、傘を差すひとはそこまでいない。ロンドンの雨は小降りですぐ止んだりするので、みなフード付きのコートを着ている。何故フード付きのコートを持ってこなかったのかと後悔したくらいだ。そしてやっぱり紳士の街だと感じる。ドアは開けてくれるし、電車が来たら女性に先に乗るよう譲ってくれる。もちろんこちらも「ありがとうございます」と返す。…紳士、素晴らしいよ。面白かったのは、美術館のある駅の地下鉄改札前の階段が人であふれ、詰まっていたので、もしかしてなにか事件でもあったのかな、とか、休みだからこの先もこの混みようのなのかな、とか思っていたら、そうではなく、階段の所が狭くて詰まっていただけだった。それなのに祭りのような混みよう。それなのに誰も文句のある感じじゃない。それなのに誰も追い越していこうとしない。なんなら前がまったく進まなくなっても気にしていない。その階段を過ぎたら、案の定全然混んでなかった。日本との違いを感じるのと同時に、街に癒されている感じがした。

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    • 雑記のようなもの(研修編13)

      3月19日(月)劇団から無事に東京公演を終えたとの報告あり。ほんとによかった。お疲れ様でした。劇団の本公演ツアーにまるまる居なかったことは今まで無かったので、ちょっとドキドキしていたが、劇団員、スタッフの皆様、現地で手伝ってくださった皆様、力をあわせて素敵な公演にしてくれたようだ。ありがたい。わたしも頑張ろう。午前はメールなどをひたすらやり取り。昼から夕方まで前述の大学卒業公演、二番目の演目のリハを拝見。前回と全然雰囲気が違う。芝居の内容もそうだが、学生の在り方も演出の仕方もなにもかも違う。ある意味勉強になった。そのあと来たるプレイリーディングの準備など。夜、近所のスーパーのレジに並んでいたら、ふと嫌な予感がした。わたしが水を買おうとレジに向かうと、アジア系の女性が出口の方じゃなく入口の列を戻ってきたからである。もちろんいるのはわたし。これは…もしや…「Are you Chinese?」そう聞かれたので、いやわたしはジャパニーズですと答えると、女性はがっかりしたようだった。そうか中国の人に聞きたいことがあったんだ、と申し訳ない気持ちになったが、嫌な予感が的中しなかったことにほっとしてレジに再び向かおうとすると、その女性はさらにこう聞いたのだ。「チャイナタウンにはどうやって行ったらいい?」やっぱりいいいいい!そして結局日本人でも聞くんかい!これで3度目の道聞かれ。やはり2度あることは3度あった。偶然にもこの間、チャイナタウンに行ったばかりだったわたしは、彼女にチャイナタウンの行き方を教えた。女性は嬉しそうに去っていった。ええい、こうなったら。4度目も来るなら来なさい!3月20日(火)一日、プレイリーディング準備日にした。台本を用意したり、プログラム校正したり、演出考えたり、必要なものを買いに行ったり。で、ようやく近所のハイドパークに行く。数々の映画やドラマに登場している公園。キングスマン・ゴールデンサークルの冒頭でタクシーが入っていった場所だ。天気が良くて心地よかったので、ベンチに座りコーヒーを飲みながら演出について考える。湖もあり、広くて気持ちがいい。犬の声や家族の笑い声がする中、翻訳台本と日本語の台本を比べ読みしていたら、色々とアイディアが浮かんできた。こうしてのんびり作品について考えるのって大事だ。日本でもこのような時間をしっかりつくるべきだと改めて思う。日本での自分の過密スケジュールを思い返す。

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    • 雑記のようなもの(研修編12)

      3月16日(金)この数日ちょっと頑張りすぎて、ちょっと疲れた模様。今日はとにかく休むと心に決める。研修生活、それは自己管理の生活。自分で休むと決めないと毎日なにかしらやってしまう。午前はいつものカフェでゆっくりして、午後はピカデリーサーカスの映画館へ。どうしても観たかった『CALL ME BY YOUR NAME』を観る。とても居心地のいい映画館。チケット売り場のおねえさん、優しくて面白い。映画はとても良かったので、この近くの本屋で原作小説も買った。その後、今日は日本食でも食べてみるか、とそこから歩いてすぐのJapan centreへ。色々売ってたのだが…まあまあ高い。カップ焼きそばが£3.75は高いなぁ。インスタントラーメンと舞茸を購入。家に残っている野菜と一緒に野菜ラーメンでも作ろう。3月17日(土)また雪がちらつく。どうしたロンドン。とっても寒い。寒すぎる。14時30分からNationai theatreで『The Great Wave』を観る。北朝鮮拉致事件を扱ったもの。現在進行形の大きな問題だが、イギリスではあまり知られていないことらしい。ほとんどは英語で進むが、たまに日本語も出て来る。前述のAさんは、このカンパニーで日本語を少し指導したとのこと。Aさんとこのカンパニーのアシスタントディレクターのご厚意で今回観られることに。終わった後、これを書いた作家のフランシスと話す機会を貰えた。自分なりに感想などを話したが、上手くは伝えられたかは自信なし。でも直接話したり、話が聞けたりして良かった。3月18日(日)Aさんに誘われ、朝11時から有名なバービカンセンター(ヨーロッパ最大の文化施設)で子ども向けのワークショップを見学することに。Aさんのお子さんが参加するそうで、それを観るのも楽しみだ。ところが宿を早く出たにもかかわらず、遠めの駅で降りてしまったせいで、たどり着けない…。マップが指している通りに行くと…道がない。そんなバカな。川の向こうに建物は見えているのに!そんなわけで回りに回り道して大幅に遅刻。入れて貰おうと受付の方に話しかけると、始まってしまったら途中では入れないらしい。しかもこの日こども向けワークショップは沢山あり、どれかがいまいち分からない。だが受付のblackのお兄さんはとても優しく対応してくれた。申し訳なさそうに「日本語は今勉強しているんだけどまだちょっとしか分からないんだ、本当にごめん」と英語で謝られた。その後、お兄さんが沖縄に行った話とかを聞きつつ、コーヒーを飲んで待つ。Aさんとそのお子さんと合流!さっきま参加していたのは粘土細工するものだったらしい。いざアクティングのワークショップへ。このワークショップ、教えているのはバービカンの俳優さんだから演技も教え方もしっかりしている。Aさんのお子さんMくん、とても上手だったし可愛かった。それからいくつかのワークショップに参加し、バービカンを去る。夜はやはりAさんのおかげでこちらも有名なロイヤルアルバートホールへ。宿から歩いて行ける距離に存在していたことに初めて気づいた。早く着いたので、Sさんとクレープ屋さんに。わたしが頼んだのはTraditional。シュガーとレモンのシンプルなクレープ。凄く美味しかった。再びAさんも合流し、オーケストラのクラシックコンサートを観る。ジュピターも良かったし、スネアドラムもかっこよかったが、一番感心したのはイギリス国民の郷土愛。あんなにノリノリで国歌を歌い、あんなに国旗が上がり国旗を振りまくり、なんならオーケストラも国歌をアンコール演奏しちゃう。大砲も鳴り花火も吹き出し最終的になにを観に来たのか分からないくらい凄いことになった。その後、お腹のすいたSさんとわたしはお店を探す。ロンドンは日曜日に店が閉まるのが本当に早い。みんな、日曜日はあまり働かないのだ。芝居も休演のことが多い。開いてる店を探し、二人で寒い夜の街をさまよい歩く。なんとか見つけたのはもう0時を回るというのにがっつりたっぷりのステーキハウス。美味しかったからよしとするけどね。帰り、初めてロンドンのバスに乗る。Sさんに教えてもらったのだが、バスもオイスターカードで乗れるし、しかも地下鉄よりずっと安い!むろん、せっかくだから二階に乗る。流れていくロンドンの景色。心地よい。

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  • 30Mar
    • 雑記のようなもの(研修編11)

      3月15日(木)朝、カムデンタウンでのぞみさんと待ち合わせ。贅沢にも俳優さんにリーディングして貰い、翻訳を確認することになったのだ。前述のわたしの女神(いつから)Aさんも観に来てくれてなんだか心強い。読んでくれたのはラファエルとゆりり。ラファエルは日本にいた経験があり、日本語が結構上手い。ゆりりは日本人でロンドンで活動している女優さんで、英語が美しい。で、いざ読んで貰ったら…物凄く面白い。翻訳してもわたしが考えていたのと同じ面白さになっている。そしてラファエルもゆりりも面白い。一回リーディングしたあと、なんとなくゆきさんからnotesがあればと言われたので、俳優さんにちょっとだけ言って再リーディング。やばい。ゆりりが怖い、怖くなっている。面白い!声に出して読んで貰ったことで、プリントルームでのプレイリーディングのイメージがかなり広がった。のぞみさんと一緒にお昼を食べて飲んで、色々と話して別れる。午後はリハーサルを見学した大学の卒業公演を観る。やはり演出が俳優を魅力的に見せていて好感が持てる。特に派手なシャツの髭の子が上手かった(誰か分かりませんね)。そのあとこの芝居の照明デザインをやった男前照明家(女性)Sさんとごはん。感想などを話す。夜はトラファルガースタジオへ。トラファルガー広場のすぐ近く。そしてジェームズ・マカヴォイがマクベスをやったところですよ。飾ってありましたよポスター。とてもいい劇場。ここで『グリニングマン』を見る。人形の使い方が最高。ダークファンタジー。帰り道、夜のトラファルガー広場を初めて見た。

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    • 雑記のようなもの(研修編10)

      3月14日(木)いよいよロンドン大学SOASでの阿部のぞみさんの翻訳ワークショップ当日。『いけない』の翻訳を読みながら、その翻訳のポイントを参加者が検証し、その後、翻訳家が解説するというもの。そしてこの日はやること盛りだくさん。だいぶ移動したがや。まず、朝イチで受け入れ先のプリントルームへ。プレイリーディングに使う部屋を見学させて貰う。とても雰囲気がいい。とても絵になる。とても色々と思い浮かぶ。とてもかっこいい。とても担当のジュリアにお礼を言い、劇場を出る。その後、勧められたV&A美術館に行ってみる。ああ、こことても好きだ。絵や昔の銀食器、タペストリーなどもさることながら、演劇コーナーの充実感よ。昔の衣装、小道具、仮面、美術模型、queシートなんかが展示してある。しかも女優さんの楽屋までまるごと展示。ここをくまなく観るだけで一日居られそう。その後、ラッセルスクエアに移動。この駅がSOASがある場所。少し早めに到着し、公園を歩く。おや、ここは……あのドラマの最初でジョンとマイクが再会した場所じゃないですか。いいようのない興奮をしつつ、のぞみさんと合流。日本語で戯曲の冒頭を読んでくれる日本人の女優Rさんとはじめまして。Rさん可愛らしい。いざ大学の構内へ。わたしの役目は、自己紹介と最初にどういうきっかけで今回の戯曲を書いたのかを説明すること。その後も質問受けたりちょこちょこと。生徒さん、結構来てくれて良かった…。英語でたどたどしく自己紹介をし、きっかけの話についてはのぞみさんに通訳して貰った。そして、いざ翻訳の深いところへ。自分の戯曲をそんな風に分析してみたことがなかったので、翻訳家って凄いなぁと感心。意識していなかった作風の手触りまで洗い出され、思わず「へぇーっ」と言ってしまった。無事にワークショップが終わり、その後ダッシュで、わたしのプレイリーディングに出演してくれることになったレベッカの舞台を観に行く。川沿いの初めて訪れる場所だがなんとか辿り着いた。一階がカフェバー、二階に小さな舞台、そして客席にテーブルがある。もちろん下で飲み物、食べ物を買って上がっていい。わたしの席は1番前。短い会話劇の4本立て。レベッカはとても素敵だった。彼女ならきっと面白くやってくれると思った。終演後は、役者とお客さんがカフェバーで交流していて、わたしはレベッカに挨拶しに行った。レベッカは日本語が分かるわけではないので、わたしの辿々しい英語で通じるか不安だったが、なんとかかんとか挨拶。その横にいたアメリカ人の俳優さんが、日本に2ヶ月いたらしく、高野山の写真をやたらフレンドリーに見せてくれたのが、結構ありがたかった。このカフェ、わたしの宿に結構近いことが分かったので、帰りは夜風にあたりながら歩いて帰る。

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  • 28Mar
    • 雑記のようなもの(研修編9)

      3月12日(月)今日もまた先週と同じ現場の見学。Sさんのつくり方を見ているのが面白い。よい作業するひとというのは、どの場においても美しいなと思う。役者たちもこの劇場に入ってからどんどん良くなっているように感じる。しかしこの日は残念なことに演出不在。けれど、役者は真面目かつ考えてしっかりやっていた。遠く離れた劇団のみんなが、ツアーで回っていることに思いを馳せる。みんなありがとう。3月13日(火)初めて翻訳家ののぞみさんと顔を合わせる。とても素敵な女性。明日の翻訳ワークショップの流れなどを打ち合わせ。わたしも最初に戯曲を書いたきっかけなどをしゃべることに…緊張。夜は『Matilda the Musical』を観る。Upper circleという遠いけれどお値打ちの席に座る。すると座った途端、隣のおじいさんが話しかけて来た。もちろん英語で。「ここのチケット○ポンドするのを○ポンドで手に入れたんだ。今度はハリーポッターも挑戦してみるつもりだよ」というようなことを言っていたので、「お、すごいですね!」などと相槌すると、おじいさんはさらにしゃべりたくなってしまったのか、なんだかとても話しかけて来る。もちろん英語で。しかもおじいさんの英語はクリアな英語ではない。もふもふしている。なにを言ってるのか分からない。でもわたしは相槌を打ち続けた。おじいさんが楽しそうならそれでいい。いいんだ。休憩中はさすがにいったん席を離れたけど。さて、これはイギリスでは有名な物語でマチルダという子が主役。マチルダはもちろん子どもが演じる。他にも子どもが沢山出ている。子どもはみんな天才だな。とても面白かった。最後のポーズが決まった瞬間、思わず「ひゅーっ!」と言ってしまった。いや、周りのひとも言ってたんで。

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  • 26Mar
    • 雑記のようなもの(研修編8)

      3月11日(日)日本との時差は9時間だが、震災の時間には必ず黙祷をしようと決めていた。明け方に黙祷。それから実家の母にメールしたら、母も黙祷したといっていた。実家は福島県の会津若松市。いまだ解決していない問題が沢山ある。どこにいても、あそこが故郷であることに間違いはない。ところで、朝はいつも近所のカフェに行くと決めている。至る所にある店なのだが、うちの近所のは特に感じがいいのだ。中で食べていくほうが若干高くなるのだが、それでもカフェでその日やることを整理したり、ゆっくり芝居のことを考えるほうが、そこからの動きがスムーズになる。この日も朝はコーヒーを飲みつつあれこれ。そういえば数日前、このカフェでも道を聞かれた。ロンドンに来て2回目だ。っていうか、おかしくないか?道聞かれ率、高くないか?年配の男性で英語の感じからするとイギリスの方ではない。彼は住所の書いてある紙を見せ、こう聞いてきた。「このChiltern streetは右ですか?左ですか?」…分からない。「すみません、分かりません」と言おうとした時、思いとどまった。そういえば前回も分からないと言ってしまった。特に前回はロンドンに来て2日目。ふいに道を聞かれたので、そう答えてしまったのた。わたしはこれからの先の自分のことを考えた。これだけ道を聞かれるわたしのことだ。もしかしたらこの調子で、これからも道を聞かれるのではないか?その度に「すみません、分かりません」と言っていたら、やがて罪悪感に苛まれていくのではないか?わたしはさっとスマホのマップを見た。Chiltern street……左だ。左に間違いない。「ここを左です」わたしはそう答えた。すると年配の男性は、「ありがとう!イタリアから来て道が分からなくてね!」と言い、嬉しそうに去っていった。2度あることは3度あるのだ。まだこれは序章に過ぎない。そんな気がした。というわけで、この日も道を聞かれないかびくびくしていたが大丈夫だった。夕方、前述のSさんに誘われて教会でやるオペラを観に行く。初めてのゾーン2だ。ロンドンはセントラルから円状にゾーンで分けられていて、真ん中エリアがゾーン1、そこから離れてると、ゾーン2、ゾーン3となっていく。地下鉄、つまりundergroundではなく、初めてovergroundに乗る。やはりなんとなく雰囲気が違って面白い。かなり歩いて道を間違えたかな、と思い始めた頃に辿り着いたのは、とても古い教会。セットのようないい雰囲気だ。オペラは『ヘンゼルとグレーテル』。とても面白かった。ステージがない分、色んな工夫がされていた。内容を知っているだけに、次のあのシーンはどうやってやるのかなという楽しみも。そして歌がめちゃくちゃ上手い。まわりのお客さんはおそらく地元の方が多めのようで、休憩中は社交の場の雰囲気。いわゆる地元感も感じられて面白かった。観に行って良かった。帰りは身体がとても冷えたのでトムヤムクンを食べた。美味しかったのだが、ちょっとだけ日本料理が食べたくなった。

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  • 25Mar
    • 雑記のようなもの(研修編7)

      細かいことはさておき、気になったことをつらつらと数日分。3月8日(木)前述の事件でほとんど寝られなかったので、午前中は少し眠る。そして、今日は何事も慌てずにゆっくりゆったりやろうと心に決める。昼間は食材などの買い物とリハーサルのためのメールやり取り。あと日本での仕事を進める。締め切りがあるやつ。その後、大きな映画館に行ってみる。チケットをネット予約したのだが受け取り方が分からず、そのまま入りそうになったら、お掃除のおねえさんに止められた。ポップコーン買う所とチケット受け渡しが一緒だったのでスルーしてしまった。夜は、劇団の作風を話したらぜひ観たほうがいいと色んな方に勧められた『The Woman in Black』をFortune theatreで観る。会話の掛け合いが面白い。かなり好きだ。そして劇場だからこそ出来る怖い演出が満載で良かった。客席からやたら本当の悲鳴があがっていたので、正直悲鳴が怖かった。ちなみに英語は早ければ早いほど分からないのだが、この話にはなんとなくついて行けた。3月9日(金)トラファルガー広場とその目の前にあるナショナルギャラリーに行ってみる。こっちはホントに美術館と博物館が充実している。え、こんな凄い物がこんな間近で観られるの!と感心する。モネが最高だった。あとゴッホ。夕方、翻訳家ののぞみさんと初めて電話。それまではメールのやり取りだったので、声を聴けて嬉しくなる。14日の翻訳ワークショップについて打ち合わせ。ところでトラファルガー広場には日本でおなじみのあの生き物がいた。が、途中で公衆の面前でお脱ぎになり始めたので、子どもの夢はどうなる!とハラハラした。3月10日(土)念願のリハーサル見学。大学の卒業公演だが、演技の専門学科だけに期待が高まる。そして前述の照明家Sさんがライティングデザインしているのだ。Baker street(あのベイカー街)から程近い、Marylebone theatreにて。テクニカルの合わせが頭から通しで観られて面白い。なにより役者がみんな上手い。Directorが役者と良いコミュニケーションを取り世界をつくり上げている様も小気味よい。自分ならどうするかも含め、ずーーーっと考える。やはり現場にいるのは心地よい。特にいい現場であれば尚更だ。ひとの仕事を観るのは飽きないし、想像力を掻き立てられる。その後、Sさんと『Brief Encounter』というお芝居を観る。クラシックの映画『逢引き』を舞台化したものだ。そしてこの上演もEmpire Cinemaという映画館で行われるのだ。これがもう…とてもいいのだ。はじまる前の生演奏からして、とても雰囲気がいい。また映画館の特性を活かしている。映像をつかっていてあんなに好ましいことは、なかなか無い。それからあのシャンデリアのつかい方…最高。大胆さの中にある繊細、もろ好み。『逢引き』そのものがシンプルな話なのだが、そのシンプルさが際立つように、胸に響くように、無駄のない演出がなされている。演出研修なので色々メモしているのだが、席が遠かったのでもう一度観て細部まで確認したいリストに入った一本だ。

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  • 24Mar
    • 雑記のようなもの(研修編6)

      3月7日(水)事件はとうとう起こったのだ。自分のおっちょこちょいぶりを知っていたので危ない危ないとは思っていたが、とうとうやってしまったのだ。まずこの日は夜に受け入れ先の劇場にご招待していただき、ダンスの公演を観に行った。ただ、直前まで色々と作業していたので、少し慌てていた。はっきり言っておく。どんなときも、慌てたらダメ。「スマホ持った財布持った鍵持った大丈夫」と確認したはずだった。ちょっと前に(昔の雑記を読んでみてね)、鍵をゲストハウスの玄関に置く、というのをやらかしていたので、わたしは鍵や貴重品に慎重になっていた。いや違う。慎重になり過ぎていたのだ。なり過ぎて、今までやったことのないことをやってしまった。部屋のセキュリティケースを使ったのだ。セキュリティケースにはもちろん、鍵がある。今日は夜出かけるだけだし、持ち歩く荷物を減らそう。だからセキュリティケースに必要ない物を入れていこう。ああ。それが地獄への入口だった。セキュリティケースの鍵が、部屋の鍵とそっくりだということに無頓着だったのだ。ここで、部屋を出る前の確認作業まで戻る。「スマホ持った財布持った鍵持った大丈夫」鍵持った大丈夫。鍵持った大丈夫。…大丈夫じゃなかったのだ。そいつはセキュリティケースの鍵だったのだ。それに気づかずダンス公演に感銘を受け、終演後のパーティで食事までいただいたわたしは意気揚々とゲストハウスに帰ってきた。そして鍵を玄関に入れようとして…あれ。入らない。もういちど。入らない。そうして気づいたのだ。自分がとんでもない間抜けちゃんだと。鞄をいくら探しても玄関の鍵はない。無頓着に部屋のどこかに置いたことは明白だ。なんてこった!入れない。しかも外はめちゃくちゃ寒い。今からホテルを探すかそれともどこかファミレスみたいな…いやデニーズはないんだここはロンドンだ。そう悩んでいると同じゲストハウスに泊まっている方々が帰って来たではないか。「あ、こんばんはー」そう声をかけられ、わたしは何事もなかったかのように一緒に玄関を通った。けれどダメだ。部屋にもうひとつ鍵があるのだ。入れないわたしは仕方なく共同キッチンに行った。ここは部屋にミニキッチンがあるのだが、親切に大きなキッチンもある。夜は誰も使ってなくてとても静かだ。セントラルヒーティングのおかげで、ちょっと暖かい。わたしは帰りがけにスーパーで買ったペットボトルの水を見つめながら、ここで朝まで過ごそうと心に決めた。本来なら管理人さんが最上階に常駐しているのだが、この日は運悪く不在だともともと連絡を貰っていた。だから次に管理人室が開くのは明朝の8時から9時の間。約8時間。これはもう寝るしかない。そう思い、わたしはセントラルヒーティングの近くの床にマフラーを敷いて横になった。もしこの状態で誰か入ってきたら、マジやばいひとだと思われる。それも分かっていたので物音がするたびにたまに起き上がり律儀に椅子に座る。全然寝られなかった。羊も数えたし眠くなる動画も観たが一向に寝られない。しかも…いくら暖かいと言っても、底冷えがする。窓から外が見えるのだが、なにも面白いことはない。午前4時の段階で少々トイレにすら行きたくなってきたが、ここには共同トイレはない。もしトイレに外に出たら、再度入るのは無理だ。我慢できないほどではなかったので、我慢した。ああ、どうしてこうなんだろう。わたしは今までの自分の人生を振り返った。いつも親に、気をつけろ気をつけろと言われ続けてきたことだ。劇団のみんななんか、わたしがスマホを無造作に置いた場所を覚えていてくれる。みんなのおかげでまともに生活できていたんだ。みんなありがとう。そして案の定やらかしました。ごめんなさい。そんなことを思っていると、次第に空が明るくなってきたではないか。ああ。朝だ。希望の朝だ。そうして8時過ぎ。とうとう玄関の開く音がした。管理人代理の方がいらしたのだ。涙が出るほど嬉しかったが、ちょっと待てよと考えた。ちょっと待てよ。こないだのゲストハウスの入口に鍵置いちゃった事件からまだ時間は経っていない。これで鍵を部屋に入れたままにして夜からずっとキッチンにいました、などと言ったら、こいつに部屋貸してて大丈夫かと思われるに違いない。それはまずい。このロンドンで追い出されたらどうしたらいいんだ。そう思ったわたしは、こう話しかけた。「あの、さっきちょっと、インロックしちゃって」さっきっていつだ!8時間前だわ!凍えそうになりながら耐え忍んだ8時間を、さっきって!すると、管理人代行のおねえさまはこうおっしゃった。「なんだ電話してくれれば開け方があったのに」え…電話…あ、緊急電話があったんですね…しかも開ける技が…どうしてそういうの調べなかったんだ、わたしは。二度と同じ間違いはおかすまい。そう思った7日から8日。ああ。自分の部屋ってありがたい。そう感じたロンドンの朝。

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  • 19Mar
    • 雑記のようなもの(寄り道)

      ちょっと話がずれる。ロンドンには、メニューにブレンドコーヒー、ホットコーヒーという表記はない。名古屋の喫茶店では席に座るなり当たり前のように「ホット、ブラックで」と言っていたわたしだ。モーニングの時間であればこの後に「モーニングおつけしますか?」という店員さんの言葉がついてくる。最高だぜ名古屋。ところがどんなに目を凝らしてメニューを見ても、ブレンドコーヒー、ドリップコーヒー、ホットコーヒーは無かったのだ。わたしは真夏の暑い日でもホットコーヒーを飲む人間だ。砂糖ミルクは一切入れない。カフェラテなんか飲んだ日にゃ「あま!」と叫んでいた人間だ。それなのに、どれが【普通の】ホットブラックコーヒーだか分からず、こちらに来てから4日間、ラテを飲み続けるという屈辱的な行為を繰り返していたのだ。まったく。恥ずかしがらずに聞けばよかったのだ。だが5日目、ようやく謎は解けた。わたしの前のお客さんが頼んだものがどう見てもホットのブラックコーヒーだったのだ。それは…アメリカーノ…なんてこった。わたしが狂おしいほど欲しかった物の名前はアメリカーノだったのだ!日本で『アメリカン』と言えば、薄めのコーヒーだ。味仙で台湾ラーメンのアメリカンと言えば辛さが薄まったヤツだ。だからなんとなく見落としていたのだ。調べたら出て来た(もっと早めに調べろ)。アメリカーノは【エスプレッソをお湯で割ってドリップコーヒーと同じくらいの濃さにしたもの】だそうだ。ブレンドとは違うが、ホットのブラックであることに間違いはない。盲点。ちょっとだけアメリカに感謝した。ありがとう自由の女神。ところがだ。4日間ラテを飲み続けた結果…なんとラテが好きになってしまったのだ。で、それからもラテを頼むようになってしまった。それからのカフェでの注文頻度。3回ラテ、1回アメリカーノ。背徳行為のように感じないでもないが、はっきり言おう。ラテは美味い。

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    • 雑記のようなもの(研修編5)

      3月6日(火)朝。久しぶりに少し遅めに起きた。とは言っても8時なのだが。それまで何故か5時起きしてたのでこれが普通だろう。わたしの戯曲『いけない』を翻訳してくださった阿部のぞみさんが、それを題材にして翻訳ワークショップというものを3月14日にロンドン大学で開催してくださることになった。で、そこに作者として呼ばれ、翻訳されてみてどうだったかを生徒さんの前で話すことに。翻訳ワークショップ。なんと面白そうな響きだろうか。これは翻訳する時に大事にしているポイントなどを、わたしの戯曲を読みつつ紐解くというもの。研修の身として、なんとありがたいことか。ふと中学生の頃、あたしゃ通訳か翻訳家になる、と言っていたのを思い出した。そうだ。わたしはマイケル・J・フォックスの通訳をするはずだったのだ。戸田奈津子さんの後継者になる予定だったのだ。『日本語字幕 鹿目由紀』と映画の最後に記されるはずだったのだ。おや。なにを間違えたのだろう。なにを間違えたら、壁に横に立ったり走ったりする芝居を書くひとになるのだろう。わたしは通訳で、いい感じにマイケルと出会って、マイケルと恋に落ちて…という夢のような話を友だちがノート一冊の小説にしてプレゼントしてくれたのを思い出した。そういうのが流行っていたのだ。わたしも確か別の友だちに、いい感じに子安武人さんと恋に落ちる話を書いてあげたわ。授業中にみんなでまわし読みして、感想を交換したりしてほくそ笑んだものだ。先生ごめんなさい。あ、話がかなりずれました。昼間は翻訳ワークショップのための自分のバイオグラフィーを英語でつくったりして。夜はNational Theatreで『マクベス』観劇。客席を見渡して、ああこれ映画館で観た場所や、と一人テンションを上げる。そして幸運なことにかなり前の席。役者の表情までバッチリ見えた。あのマクベス夫人の女優さん観たことあるなぁと思ったら、アンヌ=マリー・ダフ。ジェームズ・マカヴォイ(これもわたしの試験によく出る言葉ですよ)の元奥様…いやはや演技が…上手い。今回は演出の研修なので、とにかく演出について色々メモしている。劇場の形、特性を活かしたつかいかた。ぴたりとはまる、つかいかただった。それは本当に大事なことだと改めて思う。ちなみに開演前に劇場のバーで飲み物を買った。美味しいよ。コーラ。

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    • 雑記のようなもの(研修編4)

      3月5日(月)ロンドンに来る前からNational Theatreでどうしても芝居が観たいと思っていたのだ。池袋の映画館でNational Theatre Live(芝居を映画館で観るあれ)の『フランケンシュタイン』と『ハムレット』を観てから、絶対に行ってみたいと思っていたのだ。『フランケンシュタイン』はベネディクト・カンバーバッチ(これ、わたしの試験によく出る言葉ですよ)と、ジョニー・リー・ミラーが、フランケンシュタイン博士と怪物(クリーチャー)を日替わりで交互に演じるというもので、わたしはどっちのバージョンも観て、とても心動かされた。National Theatreの中のOlivier Theatreでやったのも知っていたので、その劇場でなにか観なければ話にならない。いや、話にならないことはないが、とにかく観てみたいと思っていた。で、劇場のサイトで予約しようとしたのだが、何度やっても上手くできない。ええ何度もやりましたよ何度も。でも出来ないんですよ。だってここに来てね、ああわたし、よくスマホの地図を観て電車を間違えずに行動できてるなぁ、といつも自分に奇跡を感じているんですよ。そんな人間はアナログに頼るしかありませんよ。というわけで直接行って買ってみることに。くしくも現在上演しているのは『マクベス』。わたしが一番初めに読んだシェイクスピアではないか。午前中、Embankmentという駅で降り、テムズ川にかかる大きな橋を渡ってしばらく行くと、劇場が見えてきた。初めてのBox Officeで直接購入。だがその日のチケットは無いと言われる。ちょっと考えます、とその場を離れソファに座っていると、がっかりしていたのがあまりに分かりやすかったのかおねえさんが駆け寄ってきて「明日ならあるけど観る?」と言ってくれた。なんて優しいんだ。それで見事予約。その後は、かの有名なグローブ座の場所を確認しに行き、隣の美術館を覗いてみる。美術館、博物館にタダで入れるって本当に凄い。もちろん寄付は募っているし、ショップでついつい色んなものを買ってしまうのだが、あんなに素晴らしい絵や彫刻、貴重な物がタダで観られるって。さて午後は、本日のメインイベント。わたしの短編戯曲のリハーサルとプレイリーディングに興味があるという俳優さんに会う。Aさん宅のご近所にあるカフェで会うことに。マークはありがたいことに日本語もできて陽気で、実験的なことを面白がってくれるひとだった。聞けば、色々考えていて、大きな舞台にも出演していて、とても意識が高い。話を聞けば聞くほど俳優の仕事、権利が守られている国、それがイギリスだと感じる。彼ならいい感じかも…話してみてそう思った。今回つかう戯曲は『いけない』という20分の短編だ。それをこちらに住む翻訳家に訳していただいた。日本では香川の『カブフェス』でしか上演していない。オリジナルキャストはうちの劇団の松井真人と川本麻里那。その松井の役の候補がマークなのだ。そこではっと思い出した。旗揚げ公演の時の松井の役は……マーク。彼で間違いない。意味のない自信を持ってマークと別れた。マーク、よろしく。夜は噂の(?)フィッシュアンドチップスを近所の店で購入してみた。お店のおにいさんに一人前?と聞かれたので、一人前ですと答えた。…え、これ一人前ですか。でかすぎません?夜更けに油ぎとぎとになりながら食べて、その日は就寝。

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  • 18Mar
    • 雑記のようなもの(研修編3)

      3月3日(土)早朝からどうしても行って見たかった所に行き、どうしても食べたかった朝食をとる。ここだけは絶対に行きたいと思っていた場所だ。おかげで元気が出た。いや、どこかは言わないが、わたしのテンションが上がる場所だ。いずれ分かるでしょう。で、朝10時からから張り切って仕事。メールをひとつ送るのもなかなか時間がかかる。何せ、英語なんで…いや時間はかかるけど頑張れば行ける。頑張れ。とまあ、それなりにきちんと。…いや違う。暴露する。事件は、早朝の時点で起こっていた。ゲストハウスの玄関横の棚に何気なく鍵を置いて外に出たのだ。そしてドアが閉まった瞬間に気がついた。あ、鍵!オートロックなのだ。ゲストハウス入口のドアも部屋もオートロックなのだ。ああ、なんでだ。なんでわたしはこんなにダメなんだ。まだ管理室の開く時間じゃないし。で、朝食からの帰宅後、玄関ごしに管理人さんと話し、ドアを開けて貰うという始末。安定のダメさ。昼からは気を取り直して、情報交換のため、お世話になっているAさんのご自宅に向かう。途中時間があったのでビッグベンを観ようと寄ってみたのだが見事に工事中。残念。Aさんのご自宅は閑静な住宅街。そこで同じ海外研修で一年来ている照明家Sさんとご挨拶。メールでしかやり取りしたことなかったのだが、Sさんはとてもかっこいい(女性)。さらにこちらで活躍する日本人の女優さんであるMさんにも会い、情報交換。Aさんのネットワークの広さにはただただ感心するばかりだ。夜、とうとう初めての観劇。St Martins Theatre。アガサ・クリスティーの小説を舞台化し、物凄くロングランをしている舞台『The Mousetrap』。昔からのクリスティーファンとしてまずこの舞台から、という気持ちだった。こちらは始まる前にみんなけっこう劇場内のバーで飲んでいる。いや逆にね、日本がそういうの少なくておかしいのかもしれないと思うんですよ。それはまぁ、大きな声では言いませんけどね。だからわたしもバーに寄って、飲みましたよ。カプチーノを。芝居はコミカルな所もありつつ、後半の謎解きはもちろん読んでいるから犯人を知っていたのだが、それでも楽しめた。気持ちよく外に出ると、夜のウエスト・エンドは劇場の明かりで華やか。改めて演劇の街に来たのだなぁと感じる。3月4日(日)昨日Sさんがチケットを取ってくれて、アリーナの立ち見で『ジュリアス・シーザー』を安く観られることになった。アリーナの立ち見?どういうことか分からなかったのだが、とりあえずロンドンブリッジステーションにある、Bridge Theatreに向かう。タワーブリッジの真向かいにある新しい劇場だ。写真でしか観たことのなかったタワーブリッジ、とても素敵だった。Sさんと昨日話した女優のMさん、そして演劇関係のところに就職前に旅行に来ているYさんと女性ばかり4人で入っていくと、とにかく荷物を預けたほうがいい、と強く言われる。なんだかベリーホットになるらしい。わたしは慌てて、母親からこれだけは絶対に手放すなと言われたものだけを身体にしっかりと身につけ、他の荷物と上着を預けた。そして理解した。アリーナの立ち見。中から聴こえる激しい歌声。入ると、客入れ中のそこは…ライブ会場だった。本当の客席はちゃんと周りにある、しかもちょっと高みに。つまりわたしたちが入ったのは…舞台の中。セリが出ていてそのうえで激しいロックを歌っているひとびと。その周りをわらわらと囲み、見上げるアリーナ立ち見客。なるほど最後までこのままで観ろと、そういうことか。いや立つくらいは平気だよ。そう思ったのは甘かった。上演が開始するとセリがどんどん形を変える。そのたびにいつの間にかいる芸達者な係のひとに誘導されるパターン。面白い。でもとりわけ良かったことがある。あのベン・ウィショーを物凄い近距離で観られたこと。セリの出方によってはすぐ目の前にベン・ウィショー。たまに思いもよらないとこから群衆(わたしたち)をかき分けて出て来るベン・ウィショー。ブルータス素敵だったよベン・ウィショー。とにかくわたしたちは終始、翻弄される【群衆役】だった。その後、帰り道がたまたま一緒だったSさんとごはんを食べる。Sさんの行きつけのお店。ロンドンの食事、全然まずくない。むしろ美味しい。あれ。わたしロンドンでやっていけるかも。そう思ったその瞬間から、油断という名の魔物が現れるのだと、どうして誰も教えてくれなかったのか。教えてくれないな。

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  • 10Mar
    • 雑記のようなもの(研修編2)

      3月2日(金)朝4時過ぎ。起床。この早起きは、きっと時差ボケというものなのだろう。あと、なんだかお腹の調子がよろしくない。これはどちらかというと、長時間の飛行機移動によるものだろうと解釈。朝6時半。近くのスタバに行ってみる。ああ、スタバはどこでもスタバだ。裏切らない。だがやはり普通のコーヒーが上手く頼めずカフェラテのショートサイズを頼む。窓際に座ると目の前には教会。そこでとりあえず今日の作戦を練ることに。まず、この近辺の街に慣れよう。そう思い、最寄り駅を確認した。駅は二つあり、歩いてすぐの所にあった。こちらで地下鉄を利用する時に必要なOYSTER CARDは、日本で心優しい劇作家教協会東海支部のSさんに頂いた。しかも残額入り!ありがたい!だが実はまだ怖い。ので使わない。それで、今日の13時に挨拶に行くつもりの劇場を前もって確認しに行く。劇場の名前はプリントルーム・コロネット。ノッティングヒルズゲート駅のすぐそばにある。そこまでは歩いて行ける距離だ。地図で行き方は確認したので、冷たい風に立ち向かいながらぐんぐん歩いていく。すると途中で年配の男性に話しかけられた。嫌な予感がした。まさか…彼は英語でこう言った。「すみません、オックスフォードストリートはどっちですか?」聞かれたーーーっ!わたしはとにかく、よく【道を聞かれる】のだ。それは旅行先だろうが自分が道に迷っていようが関係なく。それはもう、反対車線にいた車がUターンしてわたしに聞きに来るくらい。それはもう、新宿駅で自分もこれからどう行ったらいいか迷っていたのに、海外の方に2組立て続けに聞かれるくらい。そう、わたしは道を聞かれるのだ。だがまさかロンドンに来て2日目で聞かれるとは。「アイムソーリー、アイドントノウ」わたしは申し訳なくそう答えた。まだ昨日来たばかりなんだよ。さすがにわたしも知らないんだよ。ごめんよ。彼は「ありがとう」と言って歩いて行った。なんだか申し訳ない気持ちとともに、再び歩き出した。そうしてプリントルーム・コロネットに到着。とても素敵な外観。それもそのはず、ここは映画『ノッティングヒルの恋人』で登場した映画館だった場所だ。よし、これで迷って遅刻することもない。さて次は自炊のための買い物を、と思い、元来た道と違う道を歩いて宿のほうに帰る。ロンドンはその街並みを観て歩いているだけで豊かな気分になる。建物が好きだ。そして建物の入口が好きだ。Sainsbury’sという日本のナフコみたいな所で野菜などを買い物をして、まだ約束の時間まで間があったので、今度はパディントン駅まで歩いてみることに。ちなみに外はとてつもなく寒い。雪もちらついている。だがその障害は今日のわたしの足を止めるほどのものではない。パディントン駅といえば、アガサ・クリスティーの『パディントン発4時50分』だ。ミス・マープルシリーズの傑作だ。今日はホントに寒い。かなり歩いて手の感覚が無くなった頃、ようやくパディントン駅に着く。ここはヒースロー空港にも行ける駅なので確認しておいて正解だ。その近くに英語の先生に日本の成城石井だと聞いていたマーク&スペンサーがあった。ちらっと確認したが、セルフレジのやり方が難しそうで買うのは諦める。そもそもセルフレジ、日本でだって上手くできる自信がない。で、とうとう地下鉄へ。パディントン駅からDistrict lineに乗り、宿の最寄り駅まで。ちゃんと乗れた!やった!初OYSTER!13時。プリントルームに到着。そうしてアートディレクターのアンダに会う。メールではやり取りしていたが、いざ会ってみると、なんとおしゃれ可愛い大人の女性だろう。そしてそこでとうとう色々とお世話になったAさんとも会えた!なんて素敵な笑顔の女性だろう。そこで紅茶をいただきながら、研修計画について相談。最終的に自分の英訳した戯曲を1日だけ稽古してプレイリーディングするという計画。戯曲は20分の短編二人芝居で、香川のカブフェスで上演した『いけない』というもの。Aさんに通訳していただきつつ、アンダにやりたいことを伝える。そのあとAさんとお茶をしつつ、俳優さんのことを相談。Aさんはホント親身になってくださり、何人か会ってみることに。あまりに雪が酷いので、その後は吹きすさぶ風に立ち向かいながら宿に戻り、明日の芝居のネット予約をしてみることに。せっかくアガサ・クリスティーの国に来たんだからと、超ロングランで有名な『The Mousetrap』(ねずみとり)を予約した。中学生の頃、アガサ・クリスティーが大好きで出ているものは全部読んだ。もちろんコナン・ドイルも好きで全部読んだ。あの時に想像していたイギリスの雰囲気が今ここにあるのが不思議でならない。もちろん時代は違うが、確実に小説の雰囲気がある。相変わらずお腹の調子が悪く、この日は中元志津から貰ったゆず煎茶と、大屋愉快から貰った鮭雑炊で、お腹を休める。

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  • 09Mar
    • 雑記のようなもの(研修編1)

      3月1日(木)とうとうロンドンの宿に着いた。わたしの宿は日本の企業がやっているので、日本人が管理人さんでとても助かる。しかもお部屋がとても素敵で快適。ベッドカバーが可愛いし、ミニキッチンまで付いている。ああ、ここなら30日間過ごせそうだ。時刻はまだ夕方の17時。荷物を置き、ちょっと安心を得たわたしは、早速、街に繰り出してみることに(古いな)。建物が本当に素敵だ、観るだけで飽きない。だがとにもかくにも、ロンドンは5年ぶりの本格的な雪。今日いきなり寒くなったらしい。ホントに『雪女』のわたしのせいかもしれない。わたしのせいかもしれないくせに、会津に生まれ育ったゆえ自分は寒さに強いという…。ごめん、ロンドンの人々。「カバンは身体の前」という母の言葉を忠実に守りつつ、周りを歩いてみた。ここでもう一度母に教わったいくつかのワードを思い出してみた。「カバンは身体の前」「粉はやめろ」「あんこは喜ぶ」母は偉大である。さて、まず重要なのは、近くに快適なカフェがあるかどうか。これ重要、だって名古屋人だもの。いやコメダとは言わないよ、モーニングも無くてもいいよ。だけどカフェは重要なのだ。快適なカフェが見つかれば、ホンだって書ける。そうだ、こっちに居たってホンは書かなきゃ。ロンドンに来たから締め切りが無くなるなんてことはない。締め切りは万国共通。キョロキョロしてたら、まずスタバを見つけ、安心。もっと歩いてみると、なんかさらにいい感じのカフェが。とりあえずそこに入ってみる。よし、英語でやり取りだ。わたしはその時まで当然、ドリップコーヒーとかブレンドコーヒーなるものがメニューに書いてあるものだと確信していた。ところが…無い。おいおい、普通のブラックコーヒーはどれなんだ。探しきれないうちにわたしの番が来てしまった。なんだか陽気なお兄さんが応対してくれた。わたしは仕方なく一番上書いてあるものを頼んだ。「すみません、ラテをください、テイクアウェイで」英語でそう頼むと、お兄さんは陽気にオーダーを通す。違うんだ、ラテが飲みたいわけじゃない。日本でもどこでもホットのブラックしか飲まないのに。するとお兄さんはわたしの慣れない様子に気づいたようで、「どこから来たの?」と聞いてきたので、「アイムフロムジャパン」と答えるとお兄さんはさらに陽気さを増し、「Oh!ゲンキデス!」と言った。だからわたしもつられて「元気です」と答えた。するとお兄さんは満足そうに、「ゲンキデス!ゲンキデス!」と連呼してきた。たぶん「元気ですか?」と聞きたかったのだろう。おそらくわたしの英語もこっちのひとにはこれくらいにしか聞こえないだろうな、と思うと、なんだかお兄さんにとても親近感を持った。ありがとうお兄さん、ゲンキデス!宿に戻り、飲みなれないラテを飲みながら、わたしは今後の対策を練った。研修計画を遂行するためのやることリストを作った。明日はいよいよ、受け入れ先の劇場に挨拶に行く。ちなみにわたしにはここに来る前からお世話になっている日本人の女性、Aさんがいる。その方のおかげで今回の受け入れ先も見つかったのだ。そのAさんとも明日劇場で会えるかもしれない。いよいよ動き出すという緊張と、いまだ別世界にいるようなふわふわ感。明日こそは普通のホットコーヒーを飲んでやる。そう心に決めて眠りについた。

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  • 08Mar
    • 雑記のようなもの(出発編5)

      飛行機が飛び始めて、すぐに機内食のアナウンスが聞こえてきた。そうだ。考えてみたら飛び始めたらすぐお昼の時間。そりゃもう出るわ。機内食。もちろん、わたしはスープでお腹がいっぱいだ。どうやら隣の老夫婦は、旅慣れしている様子で、旦那様のほうはカズオ・イシグロなどを読み、なんだか余裕の体だ。訳の分からないアウェイ感に襲われる。ダメだ。わたしも慣れている雰囲気を醸し出さないと。今、悪目立ちしているようでは、現地に行った時にひったくりの格好の餌食になる。というわけで、機内食を老夫婦の見よう見まねで受け取る。それからランディング・カードもさも書いたことがあるかのような顔で受け取る。これは入国審査の時に必要なものだ。機内食は有名シェフ監修のなにかだったみたいだが、もはやお腹がスープのわたしはあまり味わうことが出来なかった。それより…やばい。トイレに行きたい。考えてみたら、お抹茶を飲んでスープを飲んでコーヒーを飲んだのだ。当然の結果だ。しかしわたしの隣では老夫婦が…いい感じにゆったりしている!旦那様はカズオ・イシグロを読み、奥様は映画を観ようとしている。わたしがトイレに立つとなったら、このゆったり感を台無しにしてしまう。しかも乗る時のあの汗だく事件があってからまだ一時間半しかたっていないのに。でもトイレに行きたい。わたしは機内食の膳が下げられるタイミングに合わせて、席を立とうとした。予想通り、迷惑をかける作業。もう二度とトイレには立ちたくない。それからわたしは飲み物を飲まない作戦を遂行することに決めた。そうだ、母がくれた首枕がある。あれをやろう。そう思い、鞄から出した途端、椅子と壁の間になにかが落ちた。…首枕を膨らます口のところだ。わたしは老夫婦に嫌がられない最小限の動きでそれを拾おうとした。が、無理だった。もはや口は後ろの座席の方に行ってしまった。ダメだ。諦めよう。それから映画を観たり(ダンケルクとラ・ラ・ランド)、アガサ・クリスティの紹介番組を観たりしつつ、ようやくちょっとだけ機内に慣れてきた。外を見ると、腕時計ではもう夜のはずなのに、明るい。改めて時差というものの不思議さを考えた。まさに時間旅行だな。これは。翼ちゃんたちも凍えそうな感じで頑張っている。時間はどんどん過ぎ、二度目のトイレを、すみません、すみません、言いながら済ませに行き、二度目の機内食を食べ、窓の外に見える雄大な氷の世界を抜けた。そして、ヒースロー空港に到着。ようやく到着。いや到着しただけでまだなにも始まっていないのだが。一歩、降り立った瞬間に感じた。あー。ここは日本じゃないな、と。いやいや当たり前のことなのだが、わたしには当たり前じゃない。日本じゃないな、と感じたのが初めてだからだ。ところが驚いたことに…雪。ロンドンは5年ぶりの本格的な雪だそうで。晴れ女もしくは雪女のわたしは、ここでもか、とため息をついた。さて、あんなにびくびくしていた入国審査もすっと通り、荷物も無事に受け取った。近衛兵のイラストが出迎えてくれた。そしてとうとうロンドンタクシーに。乗せてくれたお兄さんはとてもいい人だ。わたしは流れていく景色がホントに不思議で、建物が違うのが、街並みが違うのが本当に不思議で、とにかく窓に張り付くようにして外を見た。お兄さんとは英語でなんとかかんとか話せた。観光者慣れしているのか、ゆっくり話してくれた。時々、通る場所の説明をしてくれた。国が違うということは、素晴らしいことだ。コミュニケーションの原点だ。改めてそう感じた。ロンドンにたどり着き、30日間宿泊するゲストハウスにたどり着いた。長い長い出発編がようやく終わろうとしている。っていうか研修のこと書き留めたかったはずなのに。おかしいな。次回からは研修編です。

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    • 雑記のようなもの(出発編4)

      急いで二階に駆け上がると、そこは明らかに国内線ロビー。イギリスに旅立てそうな雰囲気は、一切ない。近くの職員の女性に話しかけると、他のお仕事中で険しいお顔。「少々お待ちください」とのこと。ああ。時間は刻一刻と迫っている。しばらくして職員さんがお仕事の連絡を終え、わたしの方を向いてくれた。「あの、国際線に乗り継ぎをしなければならないのに、どうやら間違って外に出ちゃったみたいなんです」すると険しい顔の職員のおねえさんがたちまち笑顔になった。「大丈夫ですよ。それで合ってます。一階に降りて外に出てください。それから8番乗り場から国際線ターミナル行きのバスに乗ってください」合ってたやーーーーーんっ!やはり搭乗口は搭乗ロビーだったのだ。ああ。おねえさんが菩薩に見える。おねえさんに祈るように感謝すると、わたしは再び駆け足で一階まで降り、8番乗り場からバスに乗り、見事、国際線ターミナル行きにたどり着いた。…いや、まだそれだけだ。全然イギリスに着いてない。それなのに、見事たどり着いたぜ、と勝ち誇ったのが裏目に出た。国際線ターミナルに降り立ったところで時間を見ると、まだ余裕があることに気づいた。ここはひとつ、最後に日本らしいものを味わっておこう。そう考えて、ザ・日本、という雰囲気の茶寮に入った。ひとつ言っておく。この時点でわたしは汗だくだ。なんせ広い空港内を走って行ったり来たりしたのだ。にもかかわらず、わたしはあったかいお抹茶を飲んだ。もちろん汗が引くわけがない。でもわたしには「余裕」が生まれていた。そのあと出国手続きをするっと済ませると、お手洗いに行きボサボサになった髪を直すほどの余裕を見せていた。まだ汗は引いていない。でもまあ、ここからは焦ることもないし、汗は引く一方だろう。そう思っていた時、はたと思い当たった。待てよ。今から12時間半も飛行機に乗るのに、なにか食べておかなくていいのか。機内食とかいうヤツが出るのはなんとなく分かっていた。だがそれがいつ出るのか分からない。もし乗ってから5時間後とか言われたら、それまで耐えられる自信がない。ふと時間を見ると、機内への案内を開始する5分前。やばい。なにか食べなければ。そう思いあちこち見て回るが、なんだか作るのに時間のかかりそうな食べ物しかない。そこで、見つけたのだ。スープストック…なんちゃら。巷でよく見かけるおしゃれな某スープ販売店である。スープストックなんちゃら。そうだスープだ。スープなら早い!わたしはまたダッシュでそこまで行くと、クラムチャウダーとごはんのセットを注文した。おまけにホットコーヒーも。考えが浅い。全部、熱い。だが5時間の空腹を考えれば熱さなんてと思い(というか、何故この時、機内食は何時に出ますかと聞けなかったのだろうか、つくづく浅い)、わたしは凄い勢いでクラムチャウダーを飲み、ホットコーヒーを飲んだ。さながら罰ゲームだ。結果どうなったか。すこぶる、汗だくだ。まるで真夏のようだ。だが、なんとか食べ終えて機内へ。わたしの席は52Aだ。ハンカチで汗を拭きながら席に座る。よし、もう汗は引く一方だろう。そう思っていたら、若い女性に声をかけられた。「あの、52Aの席の方ですよね」「あ、はい」「実はわたし、52Bなんですけど、友だちが51Aしか取れなくて…よかったら換わって貰えませんか?」51Aの「友だち」と目が合い、彼女がぺこりと頭を下げる。普段のわたしならこの流れに動揺はしない。だが、今は違うのだ。汗だくなのだ。しかもプレミアムエコノミーと言えども席はとても狭い。前を見ると、もはや51B、Cの老夫婦はゆったりと座っている。席を換わるには、物凄く無理やりねじこむように入るか、いったん席を立ってもらうしかない。だが席に座ろうと通路を移動するひとの流れはとどまることを知らない(ミスチル的に言うと)。どうしよう。一瞬考えたが、わたしは満面の笑顔(満面の汗だく)でこう言った。「いいですよ」そうして、老夫婦にすみません、すみません、と頭を下げながら席を換わった。汗がまた半端なく噴き出した。これから12時間半。この老夫婦はずっと隣にいるのだ。関係を悪くするわけには行かない。もっと言えば、この若い女性たちに席を換わらなくて12時間半恨まれ続けるのも嫌だ。わたしはすみません、すみません、と言いながら汗を拭いた。手間をかけたことを謝っているのか、止まらない汗について謝っているのか、もはや分からない。ようやく外を見た。小さな翼ちゃんたちはこの飛行機でも健在だ。11時半過ぎ。翼ちゃんたちがパタパタと仕事をし、ようやく飛行機が日本の地を離れた。さようなら。日本。イギリスまであと12時間半。いつになったら研修の話になるのか。

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  • 07Mar
    • 雑記のようなもの(出発編3)

      飛行機が止まって1時間。ブーーーンとエンジンの空しい音が身体に響く。ところでわたしには、心の友がいる。飛行機の翼の上に3つくらい並んださらに小さい羽根のような物体がある。わたしはそいつらをひそかに「小さい翼ちゃん」と名付けていた。これは国内で飛行機に乗る時からそうだった。この小さい翼ちゃんたちは飛行機が飛び立つ時にぱかぱかと開いたり閉じたりしながら、たぶん風を調整しているんだと思っている。(ろくに調べてないけど)いつも健気で可愛い。だが愛しのその子たちもまだ全然動かない。心の友よ、この飛行機は飛び立つのかい。というか、君らが活躍する時は来るのかい。途方に暮れていると、突然エンジン音が大きくなり出した。もしかして…もしかして…小さい翼ちゃんたちが…ぱかぱかしてる!ぱかぱか!頑張れ!負けるな!頑張れ!そうして凄い風にあおられながら、とうとう飛行機がセントレアを離れたのだ。今日ほど翼ちゃんたちが可愛く見えたことはない。ありがとう、翼ちゃん。っていうかまだセントレアだ。朝の9時半過ぎ、ようやく羽田に着いた。よかった。11時半に出発するんだからまだ時間的にも余裕だ。ほっとして、人の波についていく。ところが、ここでひとつ不安があった。荷物って、そのまま飛行機に積み替えて貰えるのか?お恥ずかしながら、マジで海外初めての人間、それがわたしだ。それで不安になって空港の人に聞いた。「すみません、ヒースロー行きに乗り換えたいんですけど…」「ああ、それでしたら、搭乗ロビーを出て、8番のバス乗り場でバスに乗ってください」「分かりました、ありがとうございます」「搭乗ロビーです。お気をつけて」搭乗ロビー、搭乗ロビー…。探してみるが、搭乗ロビーという名前はない。その代わり、「搭乗口」という名前の出入り口を見つけた。もしかして…ここか?どう見てもここしかない。わたしはそこをすっと出た。振り返るとそこにはこう書かれていた。「一度出たらもう二度とここからは入れません」なんだ。この恐ろしい言葉は。おまけに警備員がしっかりと立っている。途端に、とても焦り出した。わたし、もしかして、出てはいけないところを出たんじゃ…。だって名前だって搭乗ロビーじゃない。搭乗口だ。やばい!間違えたんだ。慌てて戻ろうとしたら、警備員に両手を大きく広げて止められた。そんな止められ方、映画でしか見たことない。「もう入れませんよ」「すみません、わたし、乗り継がなきゃいけないのに、出てしまったみたいなんです」「それなら二階に行って、事情を説明してください」全速力で二階に行く。ロンドンにたどり着けるのか。わたし。っていうかこの雑記、いつロンドンに行くんだ。

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  • 06Mar
    • 雑記のようなもの(出発編2)

      窓口の周りにはさっきまで誰もいなかったのに、いつの間にか長い行列ができていた。スーツケースを預け、劇場に渡すお土産でも買おうかな、とみやげもの屋の方に歩いていくと、向こうから知っている顔が…あっ!花植さんだ!そう、照明家の花植さんが見送りに来てくれたのだ。「(家が)ここから近いんですよ」という花植さんだったが、近いとか遠いとかは関係ない。ありがたい。内心じーんとした。そういえば、劇団員の川本麻里那も前日に「行きます」と連絡をくれた。そういえば、大学演劇部の同期のニシムラくんも起きられたら来てくれると言っていた。みんなありがたい。急いでみやげもの屋に行き、受け入れ先の劇場さんに渡す「ういろう」を買った。母が「あんこは喜ぶ」と言ったのを真に受けた。そうだ、あんこは裏切らない。他に母に言われたのは、「粉はやめろ」という言葉だ。粉はそう、鞄を開けられた時にやばい粉だと勘違いされたらコトだからだ。だからわたしは粉系の洗剤をやめ、液体系の洗剤をスーツケースに入れていた。ここで葛藤したのが、花植さんから手作りのどくだみ茶を貰うか?だ。花植さんのどくだみ茶は本当に美味しい。だが、手作りなので個包装されているわけではない。花植さんがせっかく持ってきてくれたのに…そんなこんな悩んでいると劇団員の中元志津が現れた。劇団きってのバイリンガルだ。できるならイギリスについてきてほしい。そしてその志津はわたしに「ゆず煎茶」と「みかん番茶」をくれたではないか。(のちにこのお茶はわたしを助けることになる)なら、花植さんのどくだみ茶も…と思っていると、ニシムラくんが現れた。ニシムラくんは18歳の時から顔が変わっていない。18歳で出会った時から40過ぎのような顔をしていたが、今は40過ぎなので年相応だ。たぶん80になっても一緒の顔だろう。老け知らずだ。ニシムラくんは早朝でも同じ顔をしていた。そこで川本の声がしたのでそっちを見ると、一緒に劇団員の松井真人、木下佑一郎、真崎鈴子が走って来たではないか。みんな、なんていいヤツなんだ。と思ったのと同時にこうも思った。こんなに見送りに来てくれるということは…マジで危ないのか?などとドキドキしていると、川本がわたしの好きなヨーグレットをくれた。これは粉じゃない。大丈夫。するとニシムラくんが「じゃ、これも」やたら大きな包みをくれた。見ると入っていたのはしるこサンド、ういろう、朗読CDなど。これも粉じゃない。が…でかい。スーツケースは預けてしまったし、もう入らない。どうしよう。いつもなら喜んで貰うところだったが、しるこサンド(箱)がでかすぎる。もし入国審査の時に「その中身はなんだ?」と言われて「しるこサンドです」と答えても、「しるこサンド」を上手く英語で説明できる自信がない。だがせっかくのしるこサンドだ。持っていこう。ニシムラくんから貰った袋は手に持っていくことにした。そうして残念なことに花植さんのどくだみ茶だけを諦め、わたしは検査場に入っていった。日本の検査場は通ったことがある。まだここは本番じゃない。わたしの本番はこれからだ。見えなくなるまで手を振ってくれるみんなに手を振り返した後、この渡航のために買った大きなショルダーバッグ(それまでショルダーバッグなど持ったことがなかった)を斜めにかけ、弟から貰った大きなリュックサックを背負い、そして右手に大きなしるこサンドの入った袋を持ったわたしは、いざ飛行機に乗り込んだ。まずはセントレアから羽田へ。さわやかなおねえさんが迎えてくれた。おまけに飴ちゃんもくれた。ああ、とうとう旅立つんだ。みんなありがとう。行ってきます!飛行機が動きだした。ああわたしはとうとう愛知県を離れ…離れ…ない。それどころか止まった。飛行場のど真ん中で。飛行時間はとっくに過ぎている。まさか見送りのみんなもわたしがまだここに留まっているとは思わないだろう。しばらくして、機長の声が聞こえて来た。「えー、ただいまセントレア上空、非常に強い横風が吹いております。この飛行機が耐えられるの風は29ノット、ただいま35ノットの風が吹いております。もしかしたら引き返すこともあるかもしれません」おい、待て待て。戻ってたら間に合わないじゃないか。いや、でも羽田からの飛行機は11時30分。今はまだ8時。間に合う。間に合うはずだ。とにかく飛んでくれれば。飛んでくれさえすれば。風よやめ。やんでくれ。ところがそこから約1時間。飛行機はまったく動く気配がない。まだ愛知県すら出てないのに…ここで早くもロンドン行き断念?

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