第13回 ORIGINE KOBE講習会 | ボヌール☆花粉 松本由紀子オフィシャルブログ



 
去る5月9日、2015年にスタートして4年目、今年初となる

「第13回 ORIGINE KOBE講習会」を開催させていただきました。

ご参加くださいました皆さま、ありがとうございました(*´꒳`*)


2018年第1回目の講師を務められたのは、
『パティスリー エトネ』の多田征二シェフと、『マビッシュ』の村田博シェフ


今回も、各シェフ2品ずつ合計4品ご紹介させていただきました。


●多田征二シェフ

*ケーク カフェ ショコラ

*ホイップ トリュフ


●村田シェフ
*ムラング・シャンティイ
*フロマジュリ






発足当初からずっとヘルプしてくれているので、もう皆さんにもすっかりお馴染みですが・・・

正式には2017年6月からオリジンコウベに加入した2期生の村田シェフ。


今年初の講習会を、仲良しの多田先輩と一緒に“チーム芦屋”で飾ってくれました。


今回のキーワードは「作業温度の管理」。

工程はいたってシンプルながら、常に同じ状態に仕上げられるのには、

しっかりとした製菓理論の裏付けがあるのだということを痛感しました。


今さらそんなにメモる?ってみんなに突っ込まれたけど・・・

私でもこうすればおいしく作れるかも!?と錯覚するほどの

分かりやすく且つ経験に裏打ちされた明確な理論に、

思わずメモ魔にならずにはいられませんでした(笑)






 

多田シェフの1品目は「ケーク カフェ ショコラ」。

多田シェフのパウンドケーキを食べられことありますか?

飲みものいらずの、究極の口どけのよさが魅力なんです。


生地のベースは、シンプルにほぼ4同割。

作り方もシンプルに、シュガーバッタ法ですが

わざと分離させてから、温度を上げることにより繋げていくのが最大のポイントです!


卵を入れていくうちに生地が分離していきます。

これは20℃の状態。

一見して分離しているのが分かりますね。


ここからレンジを使って、少しずつ生地温度を上げていきます。

23℃では一見乳化しているように見えるのですが、

混ぜてみるとまだやや分離していて・・・






 
でも、あら不思議!?

生地温度25℃にすると一気に繋がるんです。


たった1℃、されど1℃…この見極めで、食感が大きく変わるのですね。


一年を通して同じ状態に仕上がるよう、ベテランの多田シェフでも、

このように細かに生地温度を測りながら作ることで、

あの素晴らしき口どけ感が生まれるわけです








生地にはトラブリを入れて、カフェテイストに。
ここにジャンドゥーヤを入れるのですが、この入れ方にまたビックリなひと工夫が!?

フルーツケーキなどでも、フィリングが生地の中に沈んでしまうことがありますよね。

食べ手としても、全体に散らばっていたらいいのにと思うことがよくあります。

回避法としては、フィリングに粉をまぶすとか、生地と同量のフィリングを

入れるなどがありますが、なかなかうまくいかないことが多いそう。

コンベクションで焼く方が沈みにくくはなるそうです。


今回はあまりにも画期的な方法で、他のシェフ達も驚いてらっしゃいました。 


まず同じ生地を焼き、極薄にスライスします。

このスライスした生地をアパレイユの上に置き、

その上にジャンドゥーヤを置くことで、

ジャンドゥーヤが沈むことなく、全体に均等に散らばるのです。


アパレイユ、スライスした生地、ジャンドゥーヤの順に重ねることを

2回繰り返し、最後にアパレイユを重ねて。








 
スライスした生地が2枚入っているのですが、入っていると分かりながら

よ~く見ないと分からない程度。

違和感が全くなく、模様のように見えますよね。


最後に、アーモンドダイス入りのパータグラッセをTOPにつけ
クランブルをのせ、ピスタチオと削りチョコでデコール。

一気にオシャレなビジュアルに変身です!





 
カットすると・・・ほらっ
ャンドゥーヤがしっかりと沈まずに入っていますね。

スライスした生地は、食感的にはノープロブレム。

ほんとにビックリのプロならではのスゴ技でした。


ジャンドゥーヤがブロックで入っているのでとても存在感があり、

ビターなカフェ風味が全体を優しく包み込んでいて、父の日のプレゼントにもぴったり


多田シェフらしいきめ細やかで口どけのよい生地。

生地とフィリングの風味と香りはしっかりと感じられながらも、

スッと口どける軽やかな後口。

多田シェフのケークの生地感は、一度食べると忘れられなくなること間違いなしですよ(*˙˘˙*)❥❥





多田シェフの2品目は「ホイップ トリュフ」。

ガナッシュを泡立てるトリュフで、ベルギーではクラシックな手法なのだそう。






ダークチョコレート(カカオ分60%)のガナッシュに、
フォンダンと柔らかくしたバターを加え・・・





20℃をキープしたまま乳化させながら泡立て、絞って、
15℃で一昼夜クリスタリゼさせます。




 
仕上げはダークチョコレートでトランペし、ココアをまぶして。
バター多めの配合なので、トランべは低温でするのがポイント。
今回は、少しラベンダー風味をプラスされていました。




 
ここで、ココア部隊に田中シェフが登場
あまりにも仲良しな二人に、やきもちをやいちゃったもよう です(笑)

阪急インターナショナル時代は、二人にとって鬼の先輩だった田中シェフ。
私もその時代は見ていないので、全く想像できませんが。。。
3人でホテル時代を懐かしそうに振り返っている間に…ホイップトリュフの完成です!




 
バターが多く配合されているので、
とても口どけがよく、お口の中でスッと溶け消えていきます。

今まで食べていたトリュフよりも、格段になめらかな口どけのよさ。
それだけバターが多くて危険なおいしさということですが(笑)




 
村田シェフの1品目は「ムラング・シャンティイ」。

長年、メレンゲの魔術師林シェフの右腕として活躍されたからか
村田シェフのメレンゲに対するこだわりはかなりのもの。
かなーーーり熱い村田節炸裂でしたが・・・
きっと受講生の皆さんにも、村田シェフがイメージする
理想のメレンゲ像が伝わったはずです。

メレンゲとひと口に言っても、どのようなメレンゲを目指すかによって
作り方も全く変わってきます。

村田シェフは、やさしく口どけのいいメレンゲを目指して。
グラニュー糖を数回に分けて加え、ゆっくりとたてて
体積を大きくすることで、均一にふわっと焼けるのだそう。

たて終わったメレンゲは、ツヤっとしていながらも、
ホイッパーを抜くとややボソッとした質感。
この見極めが難しいんですよね。





 
形が均一になるよう、ダックワーズの型に絞り
ローストアーモンドをのせて、粉糖を一回だけふります。




 
ローストアーモンドをのせるのは村田流のこだわりで、
香ばしさと食感のアクセントとして。




 
粉糖をふる姿は、完全にも○みち風!?(笑)
粉糖を2回ふると、砂糖の膜ができて火が入りにくくなり、
ごりっとした食感になってしまうので一度だけとのこと。




 
温度を3段階(100℃→120℃→130℃)に調整して
2時間10分かけてじっくりと焼成。
オーブンから出すと、 とってもいい感じにひび割れていました。




 
今回はこの焼きたてのメレンゲも試食に。

表面のザクッと感と内側のねっちり感のコントラストが秀逸。
まさに焼きたてで全く水分を吸っていないので、
普段の村田シェフのメレンゲよりも男性的なテクスチャーでしたが、
最後はさらさらと口どけていきました。




 
ムラングに、シャンティフロマージュブランを挟み、
オレンジとライムのナパージュでデコール。

シャクッと軽やかに口どけるムラング。
生クリームよりもやや多めのフロマージュブランを加えた
シャンティイは、コクとキレのある仕上がりに。
オレンジとの相性も抜群でした。

モンプリュで11 年間、林シェフの右腕として活躍した村田シェフが独立して、
はじめて村田オリジナルのお菓子を食べたときに、
一番違いを感じたのが、このムラングでした。
それだけ自身のこだわりのあるアイテムということですね





 
村田シェフの2品目は「フロマジュリ」。

これは私も初めましてのお菓子でしたが、
随所にこだわりが散りばめられている
なぜこれを選んだのかが、食べて納得の一品でした。

お店ではプレーンで販売されていますが、
今回はリカールを使いアニス風味に。
これがとってもツボでした!

パートサブレに、アニスのシロップをアンビベしたビスキュイ・ジョコンド、
クレームアニスをセンターに鋳込んだクレームフロマージュを重ねて。





 
ビスキュイ・ジョコンドについても村田節が炸裂!

メレンゲに砂糖が入らない不安定な生地。
アーモンドプードルは油脂なので、たててオーブンに入れると浮くが、
出すとストンと落ちてしまう。
 
また天板にシルパッドを敷くとその厚みで火通りがやさしくなり、
紙を敷くとスカッと焼き上がる。紙の厚みによっても変わる。
だから2者の使い分けも重要。
今回は軽いなめらかな食感のジョコンドに焼きあげたかったので
シルパットを使って。
 
仕上がった生地は、かなり流動性が高く目がつまっているので
アーモンドの風味を濃く感じることができるとのこと。

このビスキュイジョコンド論をはじめ、村田シェフはひとつひとつの
パーツに本当に深い深いこだわりがあり、
ひとつひとつの工程、使う素材や道具に理由がおありで。

モンプリュのスーシェフ時代、お菓子教室の時に
各テーブルをまわって丁寧に説明してくれていた頃を思い出しました。
言い方は悪いかもしれないけど…できない人の気持ちにおりてきて
懇切丁寧に説明をすることができる方なので、
分からなかったこともストンと納得がいくんですよね。




 
クレームフロマージュは、メインのクリームチーズに
マスカルポーネとサワークリームを合わせたものに。
生クリームを入れてたてていくので、
チーズ入りシャンティイのイメージだそう。

手でたてるとたちすぎて味が薄くなってしまうので
ビーターデたて、コクはあるけど軽いクリームに。





 
クレームアニスは、あえて粒を残したパートダマンドに
クレームパティシエールと、味にコクと奥ゆきをだすために
クレームオブールもプラス。
リカールでアニス風味に。
 
パートサブレもただのサブレではなく、生地の表面にチーズパウダーをかけ、
チーズをより一層UPさせています。




 
一見普通のクレームフロマージュなのに、
中から現れるアニス風味にビックリ。
チーズだけよりも透明感のある爽やかなテイストで、
口あたりは軽やかなのに、余韻には
しっかりとチーズのコクが感じられます。

このシンプルなお菓子を、ここまでエレガントに
昇華させた村田シェフに心の中で拍手をしていたら…
林シェフが、うまいな!と横で つぶやいてらっしゃいました(*´꒳`*)




 
さらにサービスメニューとして「フィナンシェ」も実演。
ポイント盛り沢山で、こちらも村田劇場が炸裂!

できたてフナンシェは、外のサクッと感と中のねっちり感の食感のコントラストが明確。
バターじゅわっと溢れだし、これはこれでおいしいのですが・・・
私はやっぱり冷めて落ち着いた頃の一体感が好きかなぁ。













 
2018年度、初回の講習会が無事終了いたしました。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました

今年のオリジンコウベの活動を盛り上げていくために選ばれたかのような、
とってもいいコンビでしたね!(組み合わせに忖度がはたらいたのかしら!?)
チーム芦屋は、普段から仲良しすぎるという噂もありますが(笑)

今年度からプロ向け一般向けの区別はなくなりましたが、
どちらの方にも興味をもっていただける内容だったと思います。

メニューはシンプルながらも、様々なプロの技が隠されていました。
特に今回は、作業温度に注目
各工程の温度や、微妙な混ぜ方、合わせ方によって
全く異なる仕上りになることを、様々な例えを交えながら
分かりやすく解説してくださいました。




 
昨年6月にマビッシュ 村田シェフも加入し、現在は8名で活動中のオリジンコウベ。
今年もあと3回の定期講習会と、夏には全員参加のイベントが予定されています。

皆さんお忙しいのでなかなか8名全員が揃うのは難しいのですが・・・
気持ちはいつも8名でオリジンコウベ
また皆さまにお目にかかれる機会を楽しみにしています(*˙˘˙*)❥❥

今後の予定が決まりましたら、随時オリジンコウベのFBページで

告知していきますので、ぜひチェックしてくださいね!

https://www.facebook.com/originekobe/  


今年もオリジンコウベをどうぞよろしくお願いいたします。