第4回 ORIGINE KOBE 講習会 2016 | ボヌール☆花粉 松本由紀子オフィシャルブログ



去る8月30日、2016年「第4回 ORIGINE KOBE 講習会」を開催させていただきました。

ご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。


2016年第4回目の講師を務められたのは、

「パティスリー モンプリュ」の林周平シェフと、

「パティスリー ラトリエ・ドゥ・マッサ」の上田真嗣シェフ。

今回はプロ向けの講習会ということで、お二人ともフランス修業時代に作っておられた、

様々な技や思いが込められたお菓子をご紹介くださいました。


ここだけの話ですが・・・実は今回のお菓子は私の著者本にもご紹介いただき、

春先に取材をさせていただいた私にとっても思い入れの深い逸品なんです。

取材前にこの講習会があったらなぁ…とちょっぴり残念でもありましたが、

あらためて、こういう技法からこの味が生まれるんだと腑に落ちることが多々あり、

個人的にも学ぶことの多い内容でした。





林シェフの1品目は、「ダックワーズ カフェ」。


生地は、カフェ風味のダックワーズ生地。

いわゆるダックワーズ型ではなく、このような渦巻き型は珍しいですよね?





 


モンプリュさんのメレンゲのお菓子ではよく使われる手法ですが、

粗めの粉糖を、2度がけします。


2回目の粉糖は、1回目の粉糖をふってから5分休ませて。
1度目の粉糖がしっかりと乾いてきてから、2度目の粉糖をふります。

そのタイミングがちょうど5分。早すぎても遅すぎてもダメ。
さらにこの目の粗さがポイントで、食感にコントラストが生まれるのです。


私もお菓子教室で何度となくふっていますが・・・

ちょっと尻込みしてしまうぐらいたっぷりとふるのが、

メリハリのある食感を生む美味しさのポイントです!





中には、キャラメル風味のバタークリームをサンドします。


まず、パータボンブベースのバタークリームを作っていきます。

私はこの数週間だけでも3回、この10年間で何十回となくこの作り方を見ているので

これがいわゆる普通の作り方だと思っていたのですが、

プロの目から見ても様々なポイントが隠されているクリームのようでした。


まず熱々のシロップを卵黄に入れていきますが、

入れただけでは殺菌にならないということで、
湯煎にかけて、80℃以上になりもったりとするまで加熱していきます。
このように、直接ボウルをお湯にあてるのではなく、
湯気にあてることで、間接的に加熱するのがポイント!


これを27~28℃まで冷まして泡立てたところに、バターを加えていきます。
ここでは20℃という温度が大切なポイントに!
20℃はバターが溶け出す温度なので、これを超えると口溶けが悪くなり、
劣化しやすくなるとのこと。

バターはあらかじめ、めん棒で叩いてのばしておき(5℃→12~13℃に)
低速でゆっくりと混ぜ合わせていきます。
たてる必要はなく、混ぜ合わせればOK!
これらのピントを押さえて丁寧に作っていけば、なめらかで口溶けのよい

バタークリームが出来上がるのです。


ここにキャラメルベースを合わせ、キャラメル風味のバタークリームに。






 

クリームは欲張りすぎず、このぐらいのバランスがベスト!


最近はちょっぴりお久しぶりでしたが、オープン当初は他にプラリネクリームなど

3種類が販売されており、私もよく購入していたこちらのダックワーズ。

生地もクリームも薄めなのに、味わいはしっかりと濃厚。

冷凍してもカチンコチンにはならず、クリームがちょっぴりアイスのようになるので

私は必ず、そのまま&冷凍と2種類の食べ方を愉しんじゃいます。

これを機にまた販売されるようになるといいなぁ。







林シェフの2品目は、「ルーロ カプリス ピスターシュ」。

ジャン・ミエ修業時代に、毎朝林シェフが一人で作っていた思い出深いお菓子です。


まずは生地である、パータ・ルロ―から。
メレンゲにアーモンドパウダー、粉糖、少量の小麦粉を少しずつ混ぜ合わせていきます。


砂糖が少なくかなり多量の粉類が入っているので、メレンゲがボロボロで混ざりにくいですが、

ゆっくりと混ぜ合わせていきます。








シルパッドの上にシャブロンのせて生地をすり込み、
スライスアーモンドをたっぷりとふりかけて焼成。


生地は、14cm×10cmの楕円型です。








焼きあがったら熱いうちにめん棒などに巻き付けて丸め、筒状にします。





簡単そうだけど、実際は難しいんだろうなぁ…と思っていたら、

ここにも興味津々な方が!?(笑)


最初は恐る恐るながら、ほらっ、俺にもできた!とドヤ顔の田中シェフ(*^-^*)





続いて、生地の中に絞るムース・ピスターシュを作っていきます。


ここで“メレンゲの魔術師”から貴重なイタメレレッスン!

林シェフにこのやり方を教えてもらってから、自分も上手に

イタメレを作れるようになったと、取材時に数名のシェフからうかがったことがあります。


まず最初に、卵白の量の10%程のグラニュー糖を入れてたて始めます。

こうすることで、シロップがまだ沸いていないうちに卵白がたってきても、

卵白の状態をキープできるのだそう。


沸いたシロップを卵白に入れていくときは、

最初の1/3は高速でたてながら細い糸状で注ぎ、

残りの2/3は太いストロー状で注ぎ、中速に落とします。

そしてシロップが全体に混ざりあったら、天板に移してなんとなく平らに盛り、

温度計を入れて、20~25℃になるまで放置します。
(冷たいものと合わせるときは、冷蔵庫で冷やしていきます。)


通常イタリアンメレンゲは冷めるまで撹拌すると書かれていることが多いですが、

林シェフの理論では、それは間違い。
このように作ることで糖をメレンゲの泡が包みこみ、
糖が直接舌にあたらず、甘さを抑える(感じさせないようにする)ことができるのです。







ダックワーズと同じ要領で作ったバタークリームに、

ピチタチオペーストをこれでもかというほど贅沢に加え、

冷ましたイタリアンメレンゲと合わせていきます。

口あたりはエアリーながら、ピスタチオの存在感が絶大なバタームースの完成です!





クリームを生地の両端からたっぷりと絞り入れ、上にも絞り粉糖をふって。







試食を待つルーロ達…可愛い♡


バタームースは食べる温度帯によって、イメージが全く変わってきます。

冷蔵庫からだしてすぐの状態だと、クリームが固くしまったままで、
せっかくのバタームースの絶妙なテクスチャーを堪能できません。

少し常温に戻して、クリームと生地が馴染んできたら食べ頃です!


分離するとボソボソになり、綺麗に繋がりすぎると平坦なテクスチャーに

なってしまうので、非常に難しいバタームース。

ですのであまり作っているお店がありませんが、モンプリュさんでは

色々なお菓子に使われています。

スーシェフだった村田シェフも、アグリコールの奥田シェフにも

しっかりと受け継がれていますので、このとてもフランス菓子らしい

バタームースの美味しさがもっと広まっていくといいなぁ。





上田シェフは、ラデュレ修業時代のある冬に登場したちょっと作り方が変わっているお菓子を。

お店ではプティガトー版を「ケイララ」というネーミングで販売されていますが、

今回は「ヴェリーヌムジリス」というヴェリーヌにアレンジされていました。


ケイララ洲はインドのスパイスの産地の名前。

今回のムジリスは、1341年に洪水で流されてしまい今はないですが、
かつて貿易で栄えていたインドの都市の名前なのだそう。

こういう小ネタをしっかりと仕込んでくる上田シェフの真面目さに、

他のシェフの皆さんはいつも感心されています^^;


まずはこのお菓子の重要なパーツとなっている「パン・デピス」から。

ブルゴーニュ地方の伝統菓子です。


マーマレード、ハチミツ、グルコースを80℃まで沸かし、
そこに塩・スパイスを加え、ラップしをしてひと晩寝かせます。
本来は1~数ヶ月も寝かせるそう。

マーマレードがたっぷりと入っているのが珍しいですね。

マーマレードの糖度やハチミツの種類によって味が全く変わってきます。

本来はモミの木など味の濃いハチミツが合うのですが、

ただでさえパンデピスが苦手な日本人には、さらにハードルが上がってしまうんですよね。。。

エピスはスターアニス、シナモン、キャトルエピスを。


そこに卵、牛乳、カソナード、粉、溶かしバターとコアントローを加えて焼成。
粉は本来はライ麦を使いますが、今回は中力粉を使用。
中力粉でもっちり感を出し、ほんの僅かエクリチュールを加えることで

しっとり感をプラスするように工夫されています。






スパイスをフランスのルセットの半量に減らし、もっちりとした生地感にしているので

日本人にも食べやすいパンデピスに仕上げられています。





ヴェリーヌムジリスのパーツは、パンデピスとエピスのクレームブリュレ、

ビスキュイショコラ、ムースショコラジンジャー。


エピスのブリュレは、スパイスとパンデピスに牛乳や生クリーム、卵黄などを加え、
バーミックスをかけて液体状に。

パンデピスのもろもろ感がちょっと残っているのが見えますよね?!

これを型に入れ凍らせます。






ビスキュイショコラ。





溶かしたショコラにアングレーズを加え、すりおろした生姜を入れた

ムースショコラジンジャーには、他にクランベリー、プラム、

オレンジピール、アプリコットなどのドライフルーツと

パンデピスが加えられています。








オレンジジュース、コアントロー、胡椒、シナモンを加えた

ムジリスのシロップをビスキュイショコラにアンビベし、

型に絞ったムースショコラジンジャーの上に重ねて。






このムースが固まったら、パータグラッセにくぐらせて。








上田シェフが御自宅から持って来られた年代物の素敵なグラスに盛り付けていきます。


底にパンデピスを細かく角切りにしたものをしき、ムースショコラジンジャーをのせ、
チョコがけをしたエピスのクレームブリュレ、ドライフルーツなどをトッピングし、
船の帆に見立てたチョコでデコール。





試食用は、こんな風に可愛くご用意くださいました。


一見かなり濃厚そうに見えますが、スパイス効果なのか不思議なほどスルッといただけます。

あれだけ沢山入れたパンデピスが、全くもごもごしないのも不思議!?
お店で販売されているプティガトーバージョンも、ぜひ食べてみてくださいね!













今回はプロ向けの講習会ということで、林シェフはお得意のメレンゲを使った

日本ではあまり食べることのできない絶妙な口溶けのバタームースを。

上田シェフは、完成したパンデピスをパーツのひとつとして混ぜ込むという

珍しいムースをご紹介くださいました。


今回の第4回目をもちまして、2016年度の定期講座終了です。

今後は様々なイベントや、クリスマス、バレンタインなどで、

またオリジンコウベのお菓子を愉しんでいただける機会があると思います。


現在様々なイベントの告知やお申込みは、

ORIGINE KOBEのオフィシャルFBからのみとなりますので、

まだいいね!をされていない方は、ぜひこの機会によろしくお願いします。

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ご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。

今後もオリジンコウベをどうぞよろしくお願いいたします。