昨日、Club de la Galette des Rois 2016年度伝統菓子講習会
「フランス伝統菓子とシェフのスペシャリテ」が
イワセ・エスタ大阪さんにて開催されました。
司会進行は「ガトー・ド・ボワ」林雅彦シェフ。
そして解説は、フランス菓子研究家の大森由紀子先生。
やはり大森先生の解説があると、シェフが作られる伝統菓子から派生して
色々なお話をうかがうことができるので、とても勉強になります♡
今年は初登場やお久しぶりのシェフが多く、受講生が100名以上と大盛況!
お手伝いシェフも沢山いらっしゃり、和気藹々、とても楽しく充実した贅沢な講習会となりました。
今年の講師陣はこちらの6名。左から
「パティスリー エメラ」 藤原尚樹シェフ/ランゴードール
「フランス菓子 トワグリュ」 三鶴 康友シェフ/ガレット・デ・ロワ
ジャンポール・チェボーシェフ/タルトフランベ
「ラ・ピーエル・ブランシュ」 白岩忠志シェフ/タルト ブレット
「エーグル ドゥース」 寺井則彦シェフ/イル フロッタント キャラメル サレ
「ASSEMBLAGES KAKIMOTO」 垣本晃宏シェフ/キャラメル エクレア
ここ数年の講習会→懇親会で一気に試食というスタイルから、今年は元に戻り、
試食をしながら、そのお菓子の講義を聞くというスタイルに。
やはりこの方が味覚と視覚&聴覚が直結するので、理解が深まりますね。
アペリティフ代わりに?!応援シェフからも、協賛企業様の素材を使った
美味しい差し入れをいただきました。
「ドゥブルベ・ボレロ」 渡邊雄二シェフ ケーク・オ・キャラメル・ポワール
「シャルル フレーデル」 門前有シェフ スフレチーズケーキ
「サ・マーシュ」 西川功晃シェフ 3種類のチーズを使ったパン
●ガレット・デ・ロワ 三鶴シェフ(フランス菓子トワグリュ)
毎年、昨年のコンテスト優勝者がご披露してくださるガレット・デ・ロワ。
第9回に続き、昨年の第13回の優勝者でもある三鶴シェフ。
来年1月、フランスでのコンクールも頑張ってくださいね!
ガレット・デ・ロワは本当に100人100色の作り方がありますが、
ご自分のやり方を深く追求してらっしゃる、かなり進化系のガレット。
第9回の時は普通折りでしたが、第13回はアンヴェルセに変更。
最近の傾向として軽い食感が求められているのと、
クリスマス後から大量に仕込み始めるので、冷凍するときに
アンヴェルセの方が劣化が少ないそう。
3つ折り5回。
折数が少ないと、横から見た時の層は綺麗だけど、
カットするとバラバラになってしまうので、この回数に。
2番生地が増えてきたら4回目に入れて込むなど、お店では工夫をされています。
サックリと軽く、サブラージュのイメージでデトランプ仕込むのがこだわりだそう。
レイエは、コンクールなどビジュアル重視の時はナイフを立てて浅めに、
お店用は、サクッと食感が良くなるので深めにと使い分けてらっしゃり、
ほぼ月桂樹を描かれるとのこと。
そして三鶴シェフ的に最もアピールされていたこだわりが、“ドレ(卵黄のみ)の2度塗り”。
1度目を塗ってすぐに重ねるのではなく、冷蔵庫で20~30分置いて膜が張ってから
2度目を塗ることで、すでにグラッセする前から、こんがりと艶のある
美しい焼き色に仕上がっていました。
クレームダマンドにもこだわりがあり、絶対に分離させないように気を付け、
絶対に一日寝かせるそう。
仕込み順序が独特で、ここも皆さんそれぞれに異なるポイント。
当日中に食べるのであればフランジパンヌの方が美味しいけど、
2~3日後にはダマンドのみの方がしっとりと美味しくなるので、
配送もされているトワグリュさんでは、ダマンドのみにされているそう。
この他にも、味や食感はもちろん、作業性なども考えた
様々なこだわりが散りばめられていたので、
今年の新年に特注の巨大ガレット・デ・ロワを作っていただいたのですが、
これらを踏まえてまた改めて味わい直してみたいと思いました。
やはり、ガレット・デ・ロワは果てしなく奥が深いですね!
●タルトフランベ ジャンポール・チェボーシェフ
ピッツァみたいな・・・と言っては、チェボーシェフに否定されていましたが、
アルザス地方でよく食べられている薄いピザみたいなお料理。
通常はフロマージュブランで作られますが、今回はクレームドゥーブルと半々で。
フィリングはベーコンと玉ねぎ。
オリーブオイルで炒めて、フロマージュブランなどをのせ、
さらに今回はとろけるチーズもかけられた贅沢バージョンに。
かなり塩気が効いていたので、泡が欲しくなっちゃう一品でした。
●ランゴ―ドール 藤原シェフ(パティスリー エメラ)
満を持して登場の藤原シェフ。
師匠の林シェフが司会なので緊張してるだろうなぁ・・・
とドキドキして見守る姉のような気分に(笑)
ベルギーでの修業経験がおありの藤原シェフ。
ミゼラブル、メルヴェイユ、ジャバネは、ベルギーでは
どこのお店にも必ず並んでいる伝統菓子が、
今回は修業先であるブリュッセルの「ル・サントーレ」で作られていた
ルセットそのままに、ランゴードール=金の延べ棒
というデセール系のお菓子をご披露してくださいました。
フィユタージュは、普通折りで3つ折り5回。
ボックス型に成形し、ジュレデセールを加えた
クレームランゴ―(クレームディプロマット)を絞り、
色とりどりのフルーツを並べていきます。
この並べ方には、お店それぞれの工夫とこだわりがあるそうですが、
一番外側にイチゴで壁を作り、フルーツがはみ出ないようにされていました。
最後に全体をイタリアンメレンゲでまわりを覆って、バーナーで焼成。
藤原シェフは成形に、調理台のラインと定規を使っ
シュッとした立ち姿に整えてらっしゃるのが印象的。
さすがAB型さんですね!?
メレンゲはねばりを少なくした、ふわっと軽い配合なので
これだけの量があっても、フレッシュフルーツと相まってちょうどいいバランスに。
全てにおいて、バランスが命のお菓子なんだなぁ…と思いました。
大阪市内に、プティガトーで作ってらっしゃるお店がありますねよ!
●イル フロッタント キャラメル サレ 寺井シェフ(エーグル・ドゥース)
実際にお店でも販売されているというイル フロッタント。
寺井シェフはゼリーがあまりお好きではなく、
夏にも食べられる、乳脂肪分のある軽いお菓子として考えられたそう。
大賛成!私も夏にも乳脂肪分は不可欠なので、
ゼリーやかき氷じゃ物足りなくて。。。
‘メインがメレンゲで珍しく美味しいお菓子’と大好きなご様子で、
キャフェ風味なども展開されているそう。
次回伺ったら、チェックしなくちゃですね!
アングレーズがゆるゆるの液体状なので、グラス仕込みで。
底からジェノワーズココ、キャラメルのアンビバージュ、
ムースキャラメル、アングレーズ、メレンゲと重ね、
最後に糖衣がけしたアーモンドを飾って。
ジェノワーズココには、ココナッツファインをさらに細かくした
ココナッツプードルを使用。
食感としてのジェノワーズなので、バターは加えず
シロップをアンビベして美味しい配合に考えられています。
アンビベするキャラメルシロップにもひと工夫があり、
キャラメル風味を与える砂糖と、甘みのための砂糖。
目的別に2度に分けて砂糖を加えられていました。
メレンゲは、お店ではスチコンで生地と一緒に焼成されていますが、
今回はクラシックな作り方をご披露くださいました。
シリコンペーパーに絞り、80℃のお湯に浮かべ3分。裏返して3分。
焼くメレンゲとは異なり、ほんわり、するりと不思議なテクスチャーに。
何度かデセールでいただいたことはありますが、
この食感がプティガトーで再現されるなんて素晴らしいですね!
●タルト ブレット 白岩シェフ(ラ・ピエール・ブランシュ)
白岩シェフがこの講習会に参加されるのは、かなりお久しぶり!
お店では珍しい伝統菓子を色々と販売されているので楽しみにしていたら・・・
かなりマニアックなお菓子をご紹介くださいました。
ニースの伝統菓子タルト ブレット。なんとふだん(不断)草入りのタルトです。
ふだん草は、大阪でいうところのうまい菜、白菜。
修業時代、師匠の娘さんが大の野菜嫌いだったそうで、
その娘さんに食べてもらおうと作られたものなんだそう。
パートシュクレにアーモンドクリーム。
本来はふだん草とレーズン、レモンのゼストのみしか入らないのですが、
今回は松の実、クランベリー、オレンジコンフィを入れ、
最後にリンゴのスライスをのせ、オリーブオイルをかけて焼成。
色々なフルーツの甘味や酸味が相まって、かなりお菓子寄りの仕上がりに。
原型はたしかに・・・なお味だと想像されますが、今回白岩シェフは
伝統を踏襲しつつもアレンジを加え、きちんと美味しいお菓子にし変身させてらっしゃいました。
こういうアレンジが楽しいんですよね。
春先からお店でも販売されているそう(あまり人気はないそうですが^^;)
美味しいことはお墨付きなので、機会があればぜひ食べてみてくださいね!
●キャラメル エクレア (ASSEMBLAGES KAKIMOTO)
ラストは、初登場の垣本シェフ。
春にオープンされたお店もとても順調で、今引っ張りだこのシェフですね!
エクレアというよりは、エクレア型のプティガトー。
3層のクリームが順に口溶けるように計算されています。
オリジナルで作られた型の中に、事前に仕込み冷凍しておいた
ブリゼとシュー生地を重ねて鋳込み、焼成。
上にメッシュのシルパットと鉄板をのせて、膨らまないようにされています。
クリームは、キャラメリアチョコクリーム、キャラメルカスタード、
キャラメルシャンティーの順に絞り、
最後にキャラメルフォンダンをかけたシュー生地をかぶせて。
全てのパーツを事前に仕込み冷凍しておいて、朝に仕上げるスタイル。
講習会や顧問先に出かける機会の多い垣本シェフがいらっしゃらなくても、
毎日同じ味に仕上げられるよう細かく考えられているわけですね。
司会の林シェフも興味深そうにご覧になりに行かれていました。
今年は参加者の数が例年よりも多く、かなりアグレッシブで和気藹々とした
楽しく充実した講習会となりました。
講師を務めてくださったシェフの皆さま、贅沢なお手伝いシェフの皆さま、
業者関係の皆さま、スタッフの皆さま、ありがとうございました。
先日の懇親会で、関西支部にも若手の方が数多く入会され、
今後の活動がますます楽しみでなりませんね!