ショコラティエ三枝俊介氏が手掛ける本格的なBean to Bar(ビーントゥバー)工房
「アルチザン パレド オール」が、2014年11月、清里にオープンしました。
“Bean(カカオ豆)to Bar(板チョコレート)とは?”
ここ数年、日本でも耳にすることが増えてきましたよね。
カカオ豆の選別、焙煎からチョコレートに仕上げるまでの
すべての工程を作り手が手がけることです。
”なぜ三枝シェフが、美しい自然に囲まれたここ清里高原で
ショコラ作りに取り組もうと思われたのか?”
HPに三枝シェフからのメッセージが綴られていました。
三枝シェフが展開される「ショコラティエ パレ ド オール」は、
2004年の開業から今年で10周年を迎えられました。
ショコラの様々な可能性や素材とのマリアージュ、
そして次世代に向けての新発想のショコラなど、
三枝シェフはこの10年間に年間10トン以上、
50種以上ものクーベルチュールを扱い続け、
常に新しい試みとアイデアを形にし、多くの方々に
ショコラの楽しさを伝えるべく表現を続けてこられました。
そして開業10周年の今年、ショコラ作りの原点を追求する
決意をされた三枝シェフは、ショコラ作りをカカオ豆の加工から手がける
「アルチザン パレド オール」をスタートされたのです。
これは残りの人生をショコラに賭けたい!という三枝シェフの決意の表れです。
Bean to Barという言葉はよく聞かれるようになりましたが、
ショコラを扱うプロフェッショナルである
ショコラティエが手掛ける例は少なく、
世界的にも自らカカオ豆からショコラに仕上げるまでを
手がけるシェフは数える程しかいないのだそう。
味の着地点を見定め、食の安全性にも留意した
「チョコレートのプロによるショコラ作り」が行われていない現状を感じ、
三枝シェフはこのプロジェクトをスタートされたわけです。
そしてこのような強い想いでメッセージはしめられています。
「今後の日本のショコラ文化の為、また、日本に於ける
ショコラティエのテクニックや理論を出来る範囲で構築をし、
ショコラを年間10トン近く扱い続けてきた人間でなくては
分からない事を後進に伝えるために力を注いでまいります。
清里にオープンする「アルチザン パレド オール」では
ショコラティエ、パティシェとしての38年の経験を活かし、
清里の美しい自然と冷涼な空気の中で南の国々から
遠く旅して来たカカオ豆と丁寧に向き合ってまいります。
本格的であるだけでなく、多くの人に長く愛される
ショコラを目指します。どうかご期待ください。」
お客さまも、テラスの窓からこのように工房内を見学することができますが、
今回は工房内に潜入させていただき、工程を一つ一つ
拝見させていただくという貴重な体験をさせていただきました。
工房内に一歩入った途端…
今までには嗅いだことのない、やや酸味とスモーキーさを帯びた
カカオの香りに包まれます。
三枝シェフが世界各国から厳選されたカカオ豆たち。
豆の状態でも、それぞれに個性溢れる表情ですね。
まずこちらをふるいにかけ、さっと洗い
カカオ豆の掃除をします。
こちらの機械でカカオ豆を焙煎していきます。
50分ほど焙煎するそうですが、その見極めも重要なポイント。
30分と50分で味見をさせていただきましたが、
食感、味、香り、まったくの別物でした。
カカオ豆好きの私としては、珈琲のあてにいただきたいので
この状態で販売してほしいほどの美味しさ。
香ばしく滋味深い味わい。
この段階ですでに、カカオ豆の種類によって
味、香りともかなりの違いがありました。
次にこちらの機械で、焙煎したカカオ豆の皮を細かく砕いて剥がし、
カカオニブを取り出していきます。
カカオニブ・・・大好物です❤
でもこのできたてのカカオ二ブは、今まで食べていたものとは全くの別物。
あまりの芳醇な香りに止まらなくなってしまいました。
独自のレシピによりカカオ二ブと砂糖を混ぜ合わせ、
ローラーですりつぶし、濃厚なショコラペーストへと
形を変えていきます。
これが、「パレ ド オール」のショコラの原点となるわけです。
この段階でいただくと…まさにショコラティエの特権!
まだ荒々しくはありますが、芳醇な香りと味わいが
ダイレクトに押し寄せ、ゆっくりと花開いていきます。
ここからさらにテンパリング(温度調整)の工程を経て、
型に流し、型から抜き、エイジングへと進み・・・
やっと私たちが目にする商品としてのチョコレートが完成するわけです。
私も文字や画像としてはこれまでに何度となく見てきましたが、
その工程を実際に目にするのは今回が初めての体験。
カカオの産地や品種だけでなく、焙煎やブレンドの按配によって
チョコレートの味わいは様々に表情が変わります。
このように気が遠くなるほどの工程を経て、
チョコレートは生み出されてくるのですね。
私がお伺いした時は夕刻だったので、暗くて写真は撮れなかったんですが、
こちらには素敵なテラス席が併設されています。
これからの季節は暖房やブランケットが用意されているものの
かなり気温が低くなるようですが・・・
お天気のいい日は、清々しく気持ちがよさそうですよ!
そして嬉しいことに、この工房で作られたチョコレートをその場でいただける
清里テラス イートイン限定のテイスティングメニューがあるんです。
「ショコラ テイスティングセット」は、ハイチ、キューバ、
チュノ、ベトナム、トリニダッドと、産地の異なる5種類の
チョコレートのミニタブレットを食べ比べることができます。
お好きなドリンクもセットで。
「ショコラショー テイスティングセット」は、キューバ、ハイチ、
ベトナムと、3種類のショコラショーを飲み比べることができます。
私は個性的なテイストのショコラが好みなのですが、
タブレットではトリニダッド、ショコラショーでは
タブレットではあまり得意ではなかったベトナムが好みでした。
ベトナムはフルーティーな酸味が特徴ですが、
ミルクと合わせることで、同じカカオでも
風味の伝わり方が全く変わってくるんですね。
それぞれにしっかりと個性があるので、
必ずやご自分の好みの産地を発見できると思いますよ!
とても分かりやすく、興味深く、テイスティングを愉しむことができました。
こちらでテイスティングをして、お帰りには・・・
ブティックで、こちらの工房で作られたチョコレートを
使った商品を買い求めることができます。
産地別カカオを使ったボンボンショコラ、タブレット、キャレショコラなど
現段階では清里限定の商品も多いですが、順に東京、大阪でも
購入可能になるそう。
ガトーにも限定商品を見つけました!
ぽってりとグラマラスな「清里シューショコラ」
一見普通のチョコ掛けされたシュークリームですが・・・
シュー生地には、非常に細かい粒子にしたカカオニブファインを入れ、
カスタードクリームには、使用するミルクにファインを
煮だして使っているので、生地からもクリームからも
ビジュアルから想像する以上にカカオが香り立ってくるんです。
上には自家製のオリジナルブレンドチョコレートがかけられているので、
こちらはここでしか食べられない商品です!
とスタッフさんも力説してくださいました。
「Bean to Barはまだどうなるか分からない未知の世界。
でも、誰かが始めなければ分からないままの世界です。」
既存のクーベルチュールに頼るのではなく、自分の手で、
納得のいくショコラを作りたいという、一人のショコラティエとして
思い続けてきた夢を叶えるためにオープンされた
Bean to Bar工房「アルチザン パレ ドール」
美しい自然に囲まれた清里高原で、
真摯にカカオと向き合う三枝シェフが、
今後どのように産地別カカオ豆のポテンシャルを引き出し、
ご自分のチョコレートを進化させていくのか・・・
夢に溢れるその世界が楽しみで、今後の動向から目を離せませんね!
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店名:アルチザン パレ ド オール
住所:山梨県北杜市高根町清里3545
TEL:0551-48-5381
定休日:火曜日・水曜日定休(8月は無休)
営業時間 :10:00~19:00(カフェは18:00まで)