こんにちは。今日は起立性調節障害(OD)で悩むお子さんを持つ親御さんに、ぜひ知っていただきたいことを書きます。
SNSで見かける「これで治った!」という情報
最近、SNSやブログで「起立性調節障害がプロテインと鉄剤で治った!」という投稿をよく見かけませんか?
わが子が朝起きられず、学校に行けない姿を見ると、藁にもすがる思いで「これなら!」と試したくなる気持ち、本当によくわかります。
でも、ちょっと待ってください。
その情報、本当にお子さんに合っていますか?
私が気になっていること
実は医療現場で、次のような相談が増えています:
- 「ネットで見てプロテインと鉄剤を飲ませているけど、良くならない」
- 「飲み始めてから胃腸の調子が悪くなった」
- 「便秘や下痢がひどくなった」
- 「食欲がなくなって、かえって元気がなくなった」
なぜ胃腸がおかしくなるの?
鉄剤の副作用
鉄剤(特に処方薬や市販のサプリ)は:
フリーラジカル(活性酸素)が胃腸を攻撃
- 胃のムカつき、吐き気
- 便秘や下痢
- 腹痛
これは成人でもよくある副作用です。成長期の子どもの胃腸は大人より敏感なので、影響を受けやすいのです。
プロテインの過剰摂取リスク
子どもの臓器はまだ発達途中です。
プロテインの過剰摂取により:
- 腎臓への負担:タンパク質の代謝で生じる尿素窒素などの老廃物を処理する腎臓が疲弊
- 肝臓への負担:余分なタンパク質を分解する肝臓にも負担
- 消化器症状:お腹の張り、下痢、便秘
「大人用プロテインをそのまま子どもに与える」のは特に危険です。
起立性調節障害の標準治療とは?
日本小児心身医学会が発表している「起立性調節障害診断・治療ガイドライン」では、治療の基本は以下です:
1. 非薬物療法(最も重要)
- 病気の正しい理解(本人・家族・学校)
- 生活リズムの調整
- 水と塩の十分な摂取(1日1.5〜2リットルの水分)
- ゆっくりとした起立動作
- 適度な運動
2. 薬物療法(中等症以上で検討)
- 循環血液量を増やす薬
- 医師の診断と処方のもとで使用
3. 心理社会的サポート
- 親の接し方の見直し
- 学校との連携
- 必要に応じてカウンセリング
プロテインや鉄剤は、標準治療の第一選択ではありません。
栄養療法の問題点
「栄養療法」「オーソモレキュラー療法」として、高額なサプリメントを勧められるケースもあります。
❌ 胃腸を壊すリスク
- 子どもの体に負担がかかる
- 食事が摂れなくなり悪循環
「飲むだけで治る」は危険
起立性調節障害は複合的な要因で起こります:
✓ 自律神経の発達過程での不調 ✓ 生活リズムの乱れ ✓ ストレス(学校、友人関係、家庭) ✓ 心理的要因 ✓ 体質的な要因
サプリメントを飲むだけで、これらすべてが解決するわけではありません。
親御さんにお願いしたいこと
1. まず小児科医・専門医に相談
- 正しい診断を受ける
- ガイドラインに基づいた治療を
- 必要な検査(貧血の有無など)を受ける
2. 栄養は「食事から」が基本
- バランスの良い食事
- 無理のない範囲でタンパク質・鉄分を含む食材
- サプリメントは「補助」であって「主役」ではない
3. 情報の見極め
- 「これで治った!」という個人の体験談を鵜呑みにしない
- 医学的根拠があるか確認
- 「絶対治る」「すぐ効く」という表現には要注意
4. 子どもの体調変化を観察
- サプリメントを試す場合も医師に相談
- 胃腸症状が出たらすぐ中止
- 「続ければ効く」と無理に飲ませない
5. 心理的サポートも重要
- 「怠けている」と責めない
- 焦らせない、無理させない
- 学校や先生と連携する
まとめ
起立性調節障害で苦しむお子さんを見るのは、親としてとてもつらいことです。
だからこそ、「これで治る!」という情報に飛びつきたくなる気持ちはよくわかります。
でも、「飲むだけで治る」という単純な話ではありません。
✅ まず小児科医・専門医に相談
✅ サプリメントは医師の指導のもとで
✅ 胃腸症状が出たらすぐ中止
✅ 心理的サポートが重要
お子さんの健康を守るために、情報を正しく見極めていきましょう。
参考情報:
- 日本小児心身医学会「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」
- 日本小児科学会「起立性調節障害」
※この記事は医学的助言を提供するものではありません。お子さんの症状については必ず医療機関を受診してください。
体調が悪い子どもの進路が気になると思います。
我が家の体験談を置いておきます。希望を持ってもらえますように。
