ここ最近観た舞台でとても良かったので感想を書いてみます。
【舞台】「チ。 ―地球の運動について―」
を観てきました。(10月16日18:00~)の回
ストーリーは、
16世紀のとある国。C教が絶対的な権力を持ち、思想は制限され、多くの人々が搾取されていた。この世は神が作った地球を中心に回っている(天動説)とされ、地球を含めた惑星は太陽の周りを回っている(地動説)という考えは異端とされ、研究すら許されなかった。
オクジーとグラスは異端者を輸送中、その異端者からある石箱の存在を知らされる。グラスは異端者を逃がそうとするが、後ろの馬車のノヴァクが気づき止めようとする。命からがら逃げきったオクジーとグラスは、石箱を見つけ、天文に関する大量の資料や天体図、手紙などを手に入れる。グラスはバデーニならこれらを解説できると言うが、隠し場所の橋が崩落、グラスは命を落とし、オクジーだけが残る。
オクジーが石箱をバデーニに見せると、地動説の証明資料と解り、そのまま観測手として研究を手伝うことに。彼らは仲間を集めるべく天文の知識に長けた者をクイズで募集しヨレンタが参加する。ヨレンタはオクジーに文字を教え、オクジーは本を書くことにし、バデーニは惑星軌道の数学的記述を完成させた。そんな矢先にヨレンタの父・ノヴァクが訪ねてくる。
ノヴァクはオクジーが持っていたペンダントに気が付き、一度帰る振りをして戻ってくる。オクジーとバデーニは別れて逃げることにするが、オクジーとバデーニ、ヨレンタは囚われ、拷問にかけられる。バデーニは自白し、10年前石箱のために自殺した12歳の少年ラファウのことをノヴァクから聞かされる。ヨレンタは生き延びるが表向きは刑が執行されたとされ、ノヴァクは悲しみ、ますます地動説を恨むようになる。オクジーとバデーニは絞首台へと登っていく。
25年後、大儲けを企むドゥラカは1冊の本と出合う。そしてノヴァクとアントニは…。後は、舞台を観てくださいね。
”チ。”は、漫画連載中に既に話題になっていて読んでいたんです。凄く面白くてアニメにもなり楽しんでいたのですが、舞台になると聞き、あの作品をどう現実的な舞台にするのかしらとちょっと心配しながら観に行きました。そしたら、本当によく出来ていた!いやぁ、あの原作が本当にそのまま舞台化されていて、人間が演じているから、その人生がそこに生まれていて、何とも言えない感動がありました。
原作同様、ラファウがその信念を曲げずに自殺をするところから始まります。それをノヴァクが見ているんです。全てはラファウから始まっているので、まずそこから描かれていました。そして原作でいう2章3章のオクジー、バデーニ、ヨレンタの地動説研究とノヴァクとの戦い。
いやぁ、この話、しんどいんですよねぇ。観ていて辛いんだけど、この天動説をゴリ推しして地動説を潰そうとする力って凄いんですよね。実際にキリスト教が地動説を潰そうとして、迫害して異端として処刑とかもあったらしいという方もいらしたようですが、現代の研究では異端で本などが発禁とはなったけど、投獄、処刑まではしていなかったらしいです。
科学が進んでどう考えても天動説は辻褄が合わなくなり、ローマ法王ヨハネ・パウロ二世が1992年に地動説を公に認めたらしいのですが、そんな近年まで認めなかったんかいっ!て思っちゃいました。まぁ、その前から解っていただろうと思うけど、認めたくなかったんでしょうね。
そんな天動説、地動説に振り回された人々のお話です。群像劇なので、誰が主人公というのは無いんだけど、でも今回、この舞台を観ていて、あ、これはノヴァクが主人公と思ってよいのかもしれないなと思いました。ノヴァクは教会の教えに忠実に従って、自分で考えずに動くんです。そりゃ、教会からは良い信者よね。
そこで、何故こんなにも異端者とされる人間が多いのか。教会が異端として始末しろというのは何故なのかということを一度考えてみるべきだったんだと思うんです。盲目的に言われたことを遂行するのは人間としておかしいでしょ。そこで考えるということをしなかったノヴァクが、結局、一番苦しむことになる。自分で考えなかった報いなんです。
うーん、素晴らしい舞台だった。どの役者さんたちも見逃せなくて、特にノヴァク役の森山さんは原作から出てきたような雰囲気でした。本の中のそのままなんです。きっと動いていたらこんな人だったんだろうなって思える人物でした。そしてバデーニ役の成河さん、オクジー役の窪田さん、ヨレンタ役の三浦さんが良かったなぁ。彼らも原作そのままでした。
あの漫画、人物に特徴があるのですが人間が演じて同じように出来るかというと、難しそうに思っていたのですが、本当にそのままでしたね。こんなにも原作そのままに演じていただけると、ファンとしては涙がじわじわ来てしまうんです。あー、動いてるー!って思って嬉しくなっちゃうんですよ。感動でした。
ラファウは子役の方が演じてくださっていて、こちらも原作に近かった。ラファウは12歳にもかかわらず大学に行けるほどの知識を持っていて、実はとてもずる賢い子供なんです。大人なんていくらでも騙せると思っているんだけど、地動説に出会って全てをかけてもよいと思うほどのめり込むんです。その一途な思いが描かれていたと思いました。
久しぶりに舞台の感想を書いたのですが、実は舞台の感想は書くのを辞めていたんです。観に行く頻度は変わらず、月3~4回観に行っているのですが、どの舞台もそれぞれ良い出来だし、最近の役者さんは本当に勉強してきているので、書くことが無いんです。でも、今回は原作のある作品だし私がファンだったこともあり、実際に舞台になった場合にどうなるのか、凄く心配していたんです。そうしたら、こんなにも満足できる作品になっていて、どうしても感想が書きたくなったのでした。
もう一つ、「リア王」も観に行って、こちらも感動したので後日書きたいと思うのですが、リア王も凄かった。大竹さんが男性としてリア王を演じていて、何とも凄いお話でした。
「チ。地球の運動について」は、東京公演が数日で終わり、地方公演に回ると思います。もしお時間があってチケットがありそうでしたら、これはぜひ観て欲しい。特に原作ファンは観ると感動するんじゃないかな。人物たちがそこに動いて生きていますから。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
【舞台】「チ。 ―地球の運動について―」








