「Dear Stranger ディア・ストレンジャー」冷たい世界に落ちたような雰囲気がありました | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「Dear Stranger ディア・ストレンジャー」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

ニューヨークで暮らす日本人の賢治と、中華系アメリカ人の妻ジェーンは、仕事や育児、介護と日常に追われ、余裕のない日々を過ごしていた。ある日、幼い息子が誘拐され、殺人事件へと発展する。悲劇に翻弄される中で、口に出さずにいたお互いの本音や秘密が露呈し、夫婦間の溝が深まっていく。
というお話です。

 

 

ニューヨークの大学で廃墟の研究をしている日本人助教授の夫・賢治と、人形劇団の演出家として夢を追いながら、老いた父親のかわりに小さな雑貨店を切り盛りしている台湾系アメリカ人の妻・ジェーン。二人は、仕事や育児、ジェーンの父の介護に追われ余裕のない日々を過ごしていた。

ある日、ジェーンがカイを連れて雑貨屋で店番をしていると、強盗が押し入ってくる。身の安全は守れたがその時の犯人に何となく見覚えがあるような気がしたが解らず、警察を呼んで捜査をして貰うが捕まらなかった。



 

ジェーンの人形劇団の仕事が増え、賢治が息子カイの面倒を見るために大学へ連れていく。懇親会の間、側に座らせていたがふと見るとカイの姿が見えない。一瞬の出来事で、直ぐに探すがカイはどこにも見当たらなかった。警備員に探して貰うがどこにもおらず、警察へと通報する。

警察は誘拐事件とみて、夫婦それぞれから事情を聴取し始める。子供の失踪は身内が犯人の場合が多いからだ。悲劇に翻弄されるなかで、ふたりがこれまで胸に秘めてきた本音や秘密が浮かび上がり、夫婦間の溝が深まっていく。後は、映画を観てくださいね。

 

 

真利子監督の新作は日本、台湾、アメリカの合作で、撮影はニューヨークで行われました。自分の母国ではない場所で暮らす人々の不安や孤独感を描いており、そんな人々に何か大きな出来事が起こった時、その不安が爆発して壊れてしまう姿が描かれていました。

 

日本人の夫と台湾人の妻、そして子供の3人家族です。妻の両親が近くに住んでいて、雑貨店を営んでいます。父親は既に認知症のようで、介護が必要となっています。なので、夫婦は働きながら、父親の介護、雑貨店の店番、息子カイの世話、をしなければなりません。

 

ジェーンは人形劇団の演出家をやっていて、もうすぐに公演なので必死なんです。カイの面倒を母親に任せたり、夫に任せたりしていて、母親から子育てを疎かにするなら仕事をやめた方が良いと言われて、ムッとします。そりゃそうですよ、現代にそれを言ったら「育児ハラスメント」として訴えられちゃいます。女性にも働く権利があり、それを阻むことは出来ません。

 

 

夫の賢治はそんなジェーンの味方であり、育児も何でも手伝うようにしているのですが、大学の准教授であるため、論文を書いて認知して貰い教授になれるように人脈を作らなければならず、大学の講義だけではなく懇親会などにも顔を出さなければならず、忙しいんです。なのでカイを大学に連れて行ったりすることになってしまうんです。

 

通常ならベビーシッターなどを探して頼むんだろうけど、見つからないと言っていたかな。外国人の2人なので、あまりベビーシッターになってくれる人もいないのかもしれません。そんな色々な事があり、カイが大学で行方不明になってしまうんです。

 

 

警察にも通報し探して貰うのですが、簡単には見つかりません。賢治とジェーンに話を聞いて、関係者から調べてくれるようなのですが、ここから段々とこの夫婦の内側が見えてきます。一見、仲良さそうな夫婦だしハイレベルな二人に見えますが、車は中古で壊れそうだったり、ジェーンにも賢治にも秘密があるんです。

 

安心してください、おかしな秘密ではありません。あり得ることなんですけど、でも二人にとっては問題だし本当は話し合わなければいけないと思っているんだけど、どちらも今まで切り出さなかったんです。でも、この誘拐事件によって、その秘密が関係してくるのかもしれないという疑惑が浮上し、特に賢治は段々と壊れていくんです。

 

 

ジェーンも慌てているんだけど、何か知っているようで隠しているようで、イヤな感じなんです。そして徐々にカイが狙われて誘拐された原因が解ってきます。誘拐される前に、いくつかの予兆があるんですよ。車に嫌がらせの落書きをされたり、強盗もその一つだったのだと思います。

 

賢治は自分を責めて壊れていきます。でも本当は賢治は何も悪くないんです。私は賢治こそ被害者だったと思いました。夫婦関係はお互いに責任があるけど、一方だけが自分の希望を通そうとしてしまうとどうしてもバランスが崩れてしまいますよね。そして子どもはいつも大人の被害者になってしまう。

 

 

ネタバレ出来ないからあまり書けないけど、誘拐の謎よりも、それによって人間が壊れていく姿を描いていました。実は、この映画を観た後にWOWOWで「宮本から君へ」を放送していたので観たんです。宮本~では場面の切り替わりが多く、場面の強弱が凄くあったんですけど、今回の「ディア・ストレンジャー」は、しっとりしている感じがあり、流れるように話が進んでいくので気持ち良く観れました。

 

真利子監督の”ディストラクション~”も”宮本~”も好きなのですが、今回はちょっと雰囲気が変わったような気がしました。なんていうか、大人になった感じかしら。カッコいいサスペンス映画になっていたように思います。大きな人形劇の人形も不気味さを醸し出していて、怖さを助長していたように見えました。

 

 

私はこの映画、お薦めしたいと思います。真利子監督作品ですが、以前とは違った楽しみ方が出来るような気がします。派手な暴力やパッとした場面の切り替えなどは無く、緩やかでしっとりとした肌触りだけど、少しひんやりするような怖さがある映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「Dear Stranger ディア・ストレンジャー」