「ジョイランド わたしの願い」パキスタンで保守的考えを押し付けられる夫婦の苦しみを描いています。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ジョイランド わたしの願い」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

パキスタンの大都市である古都ラホール。保守的な中流家庭ラナ家の次男ハイダルは失業中で、メイクアップアーティストの妻ムムターズが家計を支えている。ハイダルは厳格な父から仕事を見つけて男児をもうけるようプレッシャーをかけられていた。そんなある日、ハイダルは就職先として紹介された劇場でトランスジェンダー女性ビバと出会い、そのパワフルな生き方に惹かれていく。

というお話です。

 

 

ラホールの都心部に住んでいるラナ家の長老アマン。彼は、次男のハイダルが何年もの間無職でその妻のムムターズがメイクアップアーティストとして働いて経済的に支えているのをよく思っていなかった。男が働かずにいることも良くないし、子供が生まれないことも問題視していた。ラナ家は中流階級で家父長制度を重んじる厳格な家庭だったのだ。

ハイダルは父親に言われ仕事を探し、友人が紹介してくれた劇場の仕事の面接に行く。まさかダンサーとは思わなかったが、それしかないので仕方なく面接に行くと、そこでビバというトランスジェンダー女性に出会う。この仕事は彼女のバックダンサーの募集だったのだ。ビバを気に入ったハイダルは、彼女のバックダンサーとして雇ってもらい、彼女の仕事の補助をすることになる。



 

家に帰って仕事に就いたことを報告するハイダルだが、劇場というと良い顔をされずダンサーとは言えずに支配人の仕事だと言い何とか許される。ハイダルの仕事が見つかったので、家族たちは今度はムムターズに子供を産む様にとプレッシャーをかけ始める。長男の子供が産まれ、ハイダルも仕事に出ることになり、家の仕事をムムターズにするようにと言い、仕事を辞めるようにと言われてしまう。

仕事が生きがいだったムムターズにとって仕事を辞めることは命を失くすことと同じくらい苦しいことだったが、この家で文句を言っても聞いてもらえるはずもなく、仕方なく仕事を辞めて家事をするようになる。そんな家の事情を横目に、ハイダルはビバに惹かれていき、ムムターズにも家庭のことにも目がいかなくなる。
 

一人で苦しんでいたムムターズは自分が妊娠していることに気が付き、不安は大きくなっていく。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

パキスタン映画で初めてカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に招待された作品です。監督は長編映画デビュー作となるサーイム・サーディクさんです。デビュー作でこんなに話題になるなんて凄い方なんだなと思いました。

 

観てみましたら考えさせられる深い内容で、うーん救われないなあ~って思いました。パキスタン社会ではまだまだ古い考え方が残っていて、男は仕事をして女は家で家事をして男の子を産んで家を継いでといった家父長制度が残っていて、それに抗おうとするとどうしても社会からはじかれてしまうという様子が描かれていました。

 

ちょっと驚いたのが、パキスタンではトランスジェンダーの人たちのことを”第3の性”と呼んでいて国で認められているんですね。身分証などにも第3の性ということで記載されるそうです。日本も偽トランスジェンダーの問題などがあるから、第3の性として、男、女、第3、と性を決めて3種類のトイレや浴室を作ればいいんじゃないの?そうすれば女子トイレや女湯に入る問題も無くなるでしょ。それこそマイナンバーに性の認識機能を付けて、トイレに入る時にカードをかざして入るようにすれば一緒にならなくて済むよね。

 

 

話を戻して、主人公のハイダルはラナ家の次男で失業中です。妻のムムターズが働いて経済的に支えていました。ハイダル自身はムムターズが仕事に生きがいを感じているし、自分は家事をすることが嫌いではないので、このままでイイ感じだなーって思っていたと思うんです。でも家長である父親アマンは、男は働いて家族を養うモノ、女は家事をして子供を産み夫に仕えるモノという古い考え方を誇示しており、変わることはありません。

 

ハイダルとムムターズは、お互いの考えを尊重していたのですが父親や長男家族にプレッシャーを与えられて、そうもいかなくなっていきます。そしてハイダルが一応就職が出来たので、それならムムターズは働かなくていいでしょと言われてしまうんです。それまで仕事に生きがいを感じて技術も上がってきていたムムターズなのですが、突然に仕事を辞めろと言われて家に閉じ込められ、段々と鬱状態になっていったんじゃないかな。

 

 

そんなムムターズの様子に夫なら気が付くハズでしょ。でも就職先の劇場で知り合った第3の性のビバに惹かれてしまい、周りが全く見えなくなってしまうんです。ハイダルは元々バイセクシャルのようで、女性と結婚して上手くやっていけるけど、男性も好きなようでした。ビバとは実は劇場で出会う前に病院で出会い、その時に一目ぼれしたようでした。

 

人の想いに戸は立てられないけど、奥さんもいて家族の世話をしなければいけない時に自分の恋愛に突っ走っちゃって何も見えないって、大人として責任感が無さすぎだと思いました。好きになるのは仕方がないけど、自分が今背負っているモノを忘れてはいけません。忘れちゃうんじゃ動物と一緒です。今まで何を学んできたんだと言いたくなりました。

 

 

ハイダルの恋とムムターズの気持ちが交互に描かれていき、それに絡めて父親アマンの老いや親族たちの問題なども描かれていきました。

 

アマンは年を取って足が悪くなり、車椅子の生活になっているんです。立ち上がれるんだけど移動は難しいようで、家族の補助が必要なんです。でも家族が出かけてしまい頼ることが出来ずに、おもらしをしてしまいショックを受ける場面があります。これ自分が年を取ったら同じことを経験するかもと考え、心に残りました。

 

誰でも年を取るのだから、自分がそれを理解して受け入れていかなければいけないでしょ。どんなに意地を張って偉そうにしていても、家族に助けて貰わなきゃいけない時が来るんです。世話をしてくれる家族に感謝して、ありがとうと言わなきゃ家族だって嫌になりますよ。だから家族の気持ちも聞いてあげなきゃね。仕事をしたいと言うならその理由を聞いて、それならと仕事が出来るような解決策を考えてあげる必要があるんです。時代は変わるのだから、新しい考え方も取り入れていかなきゃ。

 

 

この家族は古い考えに囚われていながら自分の希望だけは無理に通したいという傲慢な考え方のようで、長男は考え無しにどんどん子供を作って世話は妻に押し付け、妻は子供が多すぎて世話が出来ないからと言ってハイダル夫婦に子供を押し付け、ハイダルは仕事を探して外に出たら恋をして夢中になり、妻のムムターズは仕事が生きがいで仕事を続けたいと主張したんだけどとバラバラなんです。そしてムムターズが犠牲になって仕事を辞めたけど家の中がぎくしゃくし始めるんです。

 

酷い家族だったなぁ。人の話を聞くということが出来ないんですよね。日本にも、まだそういう親とかいるでしょ。勉強しろ、学校に行け、良い会社へ入れ、早く結婚しろ、子供を産め、何なんでしょ。成長するには知識が必要だから学校に行けというのは、まぁ理解が出来るけど、良い会社ってなんだよ。結婚しろ、子供を産めってなんですか?良い会社と言いながらブラック企業なんて沢山あるからね。結婚や出産は人に言われてするもんじゃないからね。勘違いも程々にしろ。そんな考えで子供を縛ると、後々子供に見捨てられますよ。

 

 

凄い考えさせられる映画で、内容が盛りだくさんでした。とても良い映画で、私は、超!超!お薦めしたいと思います。これは日本の家族制度でも起こりうる話だと思いました。特に地方の小さな町に住む家族なんかだと古い常識を振りかざして子供を縛り付けたりってあるでしょ。この映画を観て、考え直した方がよいんじゃないかなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ジョイランド わたしの願い」