「波紋」ただ水が気になり始めただけなのに、こんなに波紋が広がってしまうんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「波紋」

 

の試写会に行ってきました。PINTSCOPEさんで当選しまして、観せていただきました。

 

ストーリーは、

須藤依子は「緑命会」という新興宗教を信仰し、勉強会に励みながら日々を過ごしていた。ある日、十数年前に失踪した夫・修が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたまま失踪した修は、ガンになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉は障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。というお話です。

 

 

須藤依子は、今朝も”枯山水”の庭の手入れを欠かさない。“緑命会”という新興宗教を信仰し、日々祈りと勉強会に勤しみながら、ひとり穏やかに暮らしていた。ある日、長いこと失踪したままだった夫、修が突然帰ってくるまでは。

自分の父の介護を押し付けたまま突然失踪した修。数十年後、突然に戻って来て、がん治療に必要な高額の費用を助けて欲しいとすがってきた。父親の遺産があると見込んで帰ってきたらしいが、夫の父が亡くなる前に、遺言書を書いてもらい、遺産は全て依子に残してもらったのだった。

 

 

一方、息子・拓哉は、夫が失踪後に宗教にハマった母親を見ていられず、九州の大学に入学し、あちらで就職をした。久しぶりに帰ってきたと思ったら、障害のある彼女を結婚相手として連れて帰省する。差別はいけないと思いながらも、五体満足で産んで必死に育ててきた息子が障害者と結婚するという。子供に障害が遺伝するかもしれないと聞き、依子は納得が出来ない。

 

おまけに、パート先では癇癪持ちの客に大声で怒鳴られる。もう、どうにも我慢が出来ず、怒りが爆発しそうで、職場の掃除担当の女性に不満をぶちまけると、宗教うんぬんではなく、そんなもの、復讐してやればいいんだと言われ、少しスッキリした依子だった。



 

しかし、宗教では、湧き起こる黒い感情を抑え、穏やかに許しを与えるべきだと言われ、必死に理性で押さえつけようと頑張ってしまう。自分の本心を抑え、周りとの協調を優先する度に、段々と自分が壊れて行くような感覚に陥っていく。耐えられなくなった依子が爆発するとき、何が起こるのか。後は、映画を観て下さいね。

 

いやぁ、凄い映画でした。この映画、観ていて途中でいたたまれなくなって、依子を助け出してあげたくなるほどでした。でも、こういう事があるのだと思います。最初は、福島の原発事故で、水が汚染されているかもという噂だけなんです。でも、水道水が飲めなくなり、この地に住むのが怖くなって、夫は失踪してしまいます。まず、酷い男ですよね。家族を捨てて、自分だけ逃げ出すって、どういうことなのかしら。何か、こういう事故などが起こると、人間の本性って解りますよね。自分だけ助かれば良いという自分本位の男なんて、いなくなって良かったです。

 

 

突然に全てを背負った依子は、義父の介護をし、息子を育て、働いてと、本当に大変だったのだと思います。夫への憎しみを抱いて頑張っていたのだと思いますが、それでも耐えられずに宗教にハマったんじゃないかな。何かにすがらないと、耐えられなかったのでしょう。気持ちは解りますよね。人間って、我慢の限界がありますもん。詐欺だと解っていても、宗教に頼らないと生きられなかったんだと思います。

 

それにしても、この映画に出てくる宗教、胡散臭かったですねぇ。でも、どの宗教もこんな感じなのかな。特別に、この水を売ってあげるとか、教祖の念が入っている水だとか、もう、何言ってんの~!って感じの事を、平気で言っていて、それを信じる人がいるってところに驚いてしまいます。それ、水道水でしょって言いたくなっちゃった。

 

 

そして、息子が障碍者の彼女を連れてくるという話です。これ、よく言いにくい本心を描いてくれたと思いました。依子が感じた気持ち、凄く良く解りました。障碍者の方は何も悪くないんです。心の狭い自分が悪いんだけど、でも、どうしても思ってしまう自分がいるんです。差別的なことはいけないと解っていながらも、自分の家族が結婚するとなると、苦労するだろうなという事を考えて、賛成出来ないんです。依子の気持ちが痛いほど解りました。みんな一緒なんだからということは解っているんですよ。でも、それが人間なんです。綺麗ごとばかりじゃないんです。

 

そんな人間らしい依子は、夫の事でも、息子の事でも、行き詰まってしまい、宗教に助けを求めても、自分の怒りは収まらず、スッキリしない。その上、更年期障害で身体は火照るし、イライラは収まらない。女性のこの年齢の頃は辛いんです。私も、今、真っ最中ですから、気持ちが解ります。薬で火照ったりは収まるのですが、突然に感情がコントロール出来なくて、悲しくなっちゃったり、イライラしたりはあります。もちろん、理性で抑えるのですが、映画とかを観ていると、些細な事で悲しくて号泣してしまう事があります。ホルモンバランスだと言われましたが、身体って難しいですね。

 

 

この映画を観ると、女性の中年期というのかしら、この年代は辛い事が多いなぁと思いました。子供も手を離れて、やっと好きな事が出来るかと思うけど、その分、老後の心配や介護の問題、夫婦間の問題と、色々と出てきてしまいます。特に、このまま夫婦を続けていてもイイのかなという気持ちにもなりますよね。だって、そろそろ100年の恋も冷める頃でしょ。汚い部分も知り、我慢出来れば良いけど、これだけは我慢出来ないということも出てくるでしょう。

 

この部分については、男性にも言える事でしょ。きっと我慢出来ない事もあると思います。この映画の中で、夫が突然に失踪したのも、何かが我慢出来なかったからだと思うんです。きっと、何か理由があったんですよ。でも、面と向かって言えないし、だから消えたのかなと思いました。誰もが、自分を中心に考えてしまうので、いつも相手が悪いと思いがちですが、実は、自分にも沢山悪い所があるんだと思うんです。でもさ、それって素直に受け入れられないでしょ。だからさ、あいつが悪い!相手が間違っていると言ってしまうけど、一人になったら、ちょっと自分が悪いのかもと反省する事も必要なのだと思っています。私、結構、お風呂に入って、反省しています。これ、ホントですよ。(笑)

 

 

なんか、この映画、主人公の依子が同じ年代なので、とても共感できたし、考えさせられました。私は、宗教には入らないと思うけど、趣味に没頭してに逃げています。それでとりあえずは回っているので、良いのかなと続けていますが、いつか、何か起きたら、大きな波紋が起きるのかもしれません。その時、自分を保っていられるように、普段から、気持ちをしっかりして、色々な準備が必要なのかなと思いました。

 

出演者が素晴らしいです。よくこれだけ集まったなというほど、名優ばかりです。荻上監督の元に、これほど集まるというのは、やっぱり監督の力なのだと思います。監督の映画、面白いですもんね。この映画も、間違いなく面白いです。でも、今までのように”ほのぼの”はありません。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画、若い人よりも、中年の方に観て欲しいな。男性も女性も、色々と考えてしまう部分があると思います。今、社会には、不満を溜め込んだ人が沢山いて、ちょっとした事で事件になったり、怖い事が沢山あります。そうならないように、自分は爆発しないよう、普段から空気抜きをしておく必要があるのかなと思いました。この映画、ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「波紋」