【フランス映画祭 2022】
「幻滅」
を観てきました。
ストーリーは、
舞台は19世紀前半。恐怖政治の時代が終わり、フランスは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアン・ド・ルバンプレは、地元名士の妻であるルイーズに気に入られ、恋に落ちて、駆け落ち同然で憧れのパリに上京する。
だが、世間知らずで無作法な彼は、社交界で笑い者になってしまう。社交界の醜聞を恐れたルイーズは、リュシアンを遠ざけるようになり、お金に困ったリュシアンは、生活のためになんとか新聞記者の仕事を手に入れる。
その時代の新聞は真実かどうかは関係無く、読者が喜ぶ事を、恥も外聞もなく金のために記事にしていた。魂を売る同僚たちに感化され、当初の目的を忘れていくリュシアン。文章力が優れていたリュシアンは、瞬く間に人気記者となり、欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていく。
しかし、記事が有名になるほど貴族たちからは煙たがられ、仲間たちからは妬まれ、傲慢になるリュシアンには友人がいなくなり、付き合っていた女優だけが味方となる。豪遊を続けるリュシアンは借金が膨らみ、催促状の山になってしまう。
どうしても金が必要となり、記事を書かせて欲しいと編集長に頼み込み、頼まれた仕事を引き受けるが、それが、当時二分されていた王制派と自由派の対立に巻き込まれることになってしまう。実は、リュシアンを目障りだと思っていた人物が、彼を陥れるために画策したことで…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、バルザックの有名小説を映画化したものです。純朴な青年が、夢を抱いていたパリに行き、そこで酷く穢れて、絶望をして、故郷に帰ると言うお話です。このお話は、現代でも十分に通じる内容だと思い、考えてしまいました。誰もが、夢を抱くけど、その世界に入ってみると、そんなに綺麗な世界ではなく、まして、自分に才能があると思っていたりすると、同じ程度の才能などそこら中に溢れているという事に気が付いてしまうという、何とも哀しいお話で、それなら田舎でのんびり夢を見ていた方が幸せなのかもしれないなんて、ちょっと思ったりもしてしまいました。
リュシアンは、田舎には珍しくイケメンで詩の才能もあり、田舎に来て退屈していた貴族の奥様には、持ってこいの遊び道具だったんだと思います。それが、ちょっと盛り上がってしまい、パリに逃避行なんてことになったけど、パリに行ってみると、リュシアンの品の無さに気がつき、自分の名声にも傷が付くと言われ、すぐにリュシアンを捨てるんです。
まぁ、解ってはいたけど、こういうもんよね。踊らされたリュシアンは可愛そうだけど、そういうことに気がつかない田舎者だったのだから仕方ないですね。やっと自分の価値が無いことに気がつくんだけど、それでもパリでなんとかやっていこうとして、新聞社での記者という仕事に就くんです。文才はあったので、記者として成功はするんだけど、その時代の新聞といえば、日本の写真週刊誌よりも低俗で、嘘とは言わないけど、事実ではないことばかりを書き連ねていたようです。なので、リュシアンは報酬は沢山貰っていたけど、心が壊れていったのだと思いました。
なので、愛する人が出来たにも関わらず、飲み歩いて、借金を作るばかり。ボロボロになっていきます。あまりにもやりたい放題をしてしまうので、周りから恨みを買ってしまいます。そりゃ、そうよねぇ。だって、記事は書いていたけど、周りの記者たちや、編集長などをバカにして、酷い態度でしたもん。仕事を舐めていたんだと思います。でもね、新聞って、どんなにレベルが低くても、読む人はたくさんいるわけで、バカにしちゃいけないんですよ。読者を甘く見るなって事なんです。一度でも、読者をバカにすれば、誰も見なくなります。
リュシアンは、パリの人々に制裁を受けたように見えました。バカにした報いを受けたのかなと思いました。田舎から出てきたなら、そこで生きる人に受け入れて貰えるよう、彼らを理解し、自分から近づくべきだったのに、まるで彼らに勝つために必死で見栄をはっていたように見えました。だから排除されることになるんです。
そんな厳しい現実を描いた映画でした。バルザックの小説は、フランスでは、誰もが読むような名作だそうです。日本の夏目漱石みたいなのかな。良い作品でした。映画としても、キャストが素晴らしいし、主演のバンジャマン・ヴォワザンが頑張っていました。グザヴィエ・ドランやジェラール・ドパルデューも出ていて、見応え十分でした。上映時間が長いけど、それだけの観る価値はありました。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。フランスの文学作品を映画で観るのも、良いと思いますよ。本を読もうとすると、上中下と3冊読まなくちゃいけないから、結構、大変です。それなら映画を見てから、読む方が、スムーズに読めるんじゃ無いかな。ぜひ、観にいってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。来年、2023年に公開です。
「幻滅」