「ライト・オブ・マイ・ライフ」を観てきました。キノシネマみなとみらいで、”キノフェスティバル”の1作として上映され、好評だったので再上映されたようです。ケイシー・アフレックが監督・主演を果たしています。
ストーリーは、
世界を劇的に変えてしまった致命的なパンデミックから10年後。社会の片隅で生きる父と娘ラグは森の中で息を潜めるように他人を避け、キャンプを張って暮らしていた。父はラグを息子だということにして、新たに迫る”人間”の危険性から彼女の純粋な心を守ろうとする。2人の親子の絆が試される。
というお話です。
森の奥でキャンプを張っている親子がいた。子供は女の子なのに男子の服を着せられ、人と会ったら男と振る舞いなさいと言われている。誰にも会わず、静かに暮らしていたが、ある日、見廻りから帰ると老人がテントを探っていた。色々尋ねられた父親は、ちょっと仲間と狩りに来ているだけだと嘘をつき、老人と別れた後、直ぐにその場所を引き払い、移動を始める。
今から10年前、世界に謎の奇病が蔓延し、女性だけがかかるというウィルスによりパンデミックが起こり、世界は変わってしまった。ウィルスが広まる前に妊娠していた母親は、ラグを産んで直ぐに亡くなり、父親は一人でラグを大切に育ててきたのだ。地球上からほとんどの女性が死滅してしまい、ラグは種の保存のための貴重な人間なのだが、世界はほとんどが男ばかりになってしまい、力が支配する無法地帯と変わってしまった。もし、ラグが女性という事がわかれば、何をされるかわからない。
父親は娘を息子と偽り、出来るだけ人と会わない場所を転々として、何とかこの10年間を過ごしてきた。危険な目に何度も遭い、もしもの時の為の準備を怠らずに生きてきたのだ。空き家を見つけ、そこでしばらく過ごしているとまたも暴漢に襲われ、何度も練習していたとおりに逃げて、逃げ延びる事が出来た。そろそろその町近くに留まるのは危ないと感じた父親は、祖父母の家があった田舎に行ってみようと考える。
遠い道のりを列車や車を乗り継ぎ、何とか祖父母の家に到着すると、そこには老人3人が暮らしていた。あまりにも寒いので、少し温まらせて欲しいと頼むと入れてくれて、とりあえずは人心地つく。直ぐに出ていくつもりだったが子供が娘だという事がバレて、トムという老人が、ニューヨークかこの近くに女性を匿うシェルターがあるし、それが嫌なら、ここで暮らして行く事も考えたらどうだと言ってくれる。辛かった10年を思い返し、トムのいう事を受け入れようかと考え始めるが、次の朝、不審な男たちが家に近づいてきて・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、良く出来ていたと思います。私は好きでした。テンポはゆっくりで、進み方が遅いので、もしかしたら単館系の映画に慣れていない方は眠くなっちゃうかもしれませんが、一応、波もあるし、ハラハラドキドキ部分もあるので、テンポに慣れれば凄く楽しめる作品だと思います。
それに、この映画で描かれている事が、今のコロナに似通っている感じがして、ちょっと考えさせられました。映画の中では、このウィルスにかかると、2週間ほどで亡くなってしまう奇病で、男性はかからないようなんです。身体に発疹のようなものが出来て、あっという間に死に至るというもので、たまたま、ラグはかからなかったようなんです。
コロナだって、男性の方が死に至りやすいとか、年配の方が悪化しやすいとか、肺に欠陥があったり、糖尿病の方など、特定の方が悪化しやすいとか、言われていますよね。人間って、色々な人がいるからこそバランスが取れているのに、ある一定の人がバンバン死んでしまうと、バランスが悪くなり、全体が傾いていくんですよね。自分だけは大丈夫なんて思っていると、バランスが崩れて、今度は自分に悪い事が回ってきてしまう。あのね老人がいなくなると介護の仕事が無くなり、介護の手配をする役所も無くなり、そういう施設も潰れてしまう。全部回っているので、どれが欠けてもダメなんです。
話を戻して、そんな世界になり、父親とラグは2人でコッソリ逃げ回りながら生きてきたけど、ラグは随分成長してきて、段々と今の状況も理解出来てきて、もしお父さんが死んだら私はどうするの?って考え始めるんです。いつまでも父親が守れる訳では無いし、この世界に女性が一人でいたら、直ぐに捕まって何をされるかわからない。そしてラグは、図書館などに置いてあった本を読んで、色々と学び、身体的にも精神的にも成長して行くんです。
もちろん、そこらの父親と同じように、この父親も、いつまでも自分の娘は子供だと思っていて、性教育をどう教えたらいいかと悩んだりするのですが、娘に”SEXの事でしょ。”と簡単に返されたりして、言葉に詰まってしまったりしていて、可愛いんですよ。親が思っている以上に、子供の成長は早いもんなんです。ビックリしちゃいますよね。(笑)
そして、こんな世界でこの父娘がどうやって生きて行くのか。娘がどう成長して行くのか、面白い映画でした。あ、でも、はっきり結末がある映画ではありません。ウィルスが死滅したり、女性が以前と同じように増えたりという事は全くありません。一応、父娘の成長物語だと思っていただければ良いと思います。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。やっぱりケイシー・アフレック、素敵です。強くて頑張っているんだけど、本当は弱くて優しい部分が溢れていて、こんな男性イイなぁって感じなんです。私は、お兄さんのベン・アフレックよりも好きだなぁ。映画も素敵な映画でした。観た後に、うん、がんばろっ!って思える映画でした。ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。