「母さんがどんなに僕を嫌いでも」を観てきました。
ストーリーは、
タイジは幼い頃から大好きな母に愛されることなく育てられた。母からの愛の欠乏、さらに壮絶な家庭環境に耐えかね、17歳で家を飛び出し、1人で生きることを選択したタイジだったが、友人の言葉に動かされて母ときちんと向き合う覚悟をする。大人になってもタイジを拒絶する母。そんな母からの愛を取り戻すため、タイジは母に立ち向かっていく。
というお話です。
タイジは、母親の為に食事を作っている。それまで母親とは距離を置いていたが、自分から歩み寄ろうと思ったのだった。それまでのタイジと母親の関係は酷いもので、このままで別れてはダメだと思ったからだった。
小さな頃のタイジは、俗に言う肥満児だった。そんなタイジを母親は汚いものを見る様な目で見て、彼に”ブタ”という言葉を浴びせて、殴ったり、物を投げたりしていた。表では、良い妻を演じていたが、家に入ると、タイジを虐待し、父親とも喧嘩が絶えなかった。
小学校、中学校と虐待され、高校に入っても虐待は続き、とうとう、母親は包丁をタイジに向けて、”お前など産まなければよかった。”と言い放った。もう、ギリギリの精神状態だったタイジは、耐えられなくなり、高校を中退して、逃げるように家を出て、一人で生活を始めた。
年齢を偽り、18歳だという事にして、住み込みの仕事に付き、何とか生活を続け、それから努力をして、一般企業に就職し、生活を立て直した。少し余裕が出てきたタイジは、ある劇団の入団員募集チラシを見て、興味を持つ。劇団の研究生として入団し、その団員のキミツに出会う。彼は裕福な家庭に生まれ、誰にでも気軽に話しかけるイイ奴だった。そしてタイジが隠し続けていた家族の事に関して、心配し始める。そして同時期に、タイジの会社の同僚・カナとその彼氏の大将もタイジと出会い、仲良くなって、4人は、一緒に行動をすることが多くなる。
ある時、3人は、タイジを突然誘って、一泊旅行に連れて行く。その夜、大将がタイジを風呂に誘い、身体中に付いた傷を見て、もう、俺たちに隠す必要なんて無いと優しく話す。タイジの苦しみを癒すように、3人は、タイジに一人じゃないと話し、分かり合った。
その後、タイジの姉から連絡が入り、母親に連絡を取るようにと言われる。仕方なく母親に連絡を取ると、再婚した夫が亡くなったから、葬式に来てくれと言われ、仕方なく行ってみると、母親は、こちら側に家族が誰も居ないとみっともないから呼んだだけだと言い放つ。もうダメだと再度思ったタイジは、逃げ出すように家を出るが、そこへ心配して迎えに来たキミツが、いつまでも逃げていたら苦しみは終わらないと話す。そしてタイジは・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、思っていたよりもハードな内容で、観ているのが辛くなるような場面もありました。こんな酷い虐待を受けていて、誰も助けてあげなかったのかしら。婆ちゃんという父親の会社の社員さんが、只一人、助けてくれていたけど、本当だったら、これ、行政が保護してあげなくちゃいけない案件ですよね。最近は、やっと周りの目も虐待という事に目を向けるようになってきたけど、この原作者が虐待を受けていたころは、まだ、周りの目も行き届かなかったのかしら。こんなに小さな頃から虐待をされていたら、本当に、人間が壊れてしまいます。
家を逃げ出して、必死で生活を立て直し、やっと仲間が出来てと、素晴らしいと思いました。映画を観ながら、よく頑張ったなぁと思いました。17歳の男の子が一人で生活を始めるなんて、それは大変だっただろうと思います。そして、良いお友達を持つことが出来て、良かったですね。やっと幸せに生きる場所を見つけられ、そして、再度、母親と向き合おうとする彼の姿は、何ともいじらしくて、凄いと思いました。普通なら、そんな母親なら、見放しているよね。絶対に関わりを持ちたくないと思っちゃいそうだけど、彼は、向き合うんです。それは、凄い決断だと思いました。
映画としては、虐待の部分を中心に描くのではなく、彼が再生していく部分を中心に描いていて、とっても優しい映画に出来上がっていると思いました。人間って、こんな風に優しい部分を持っていて、どんなに酷い人でも、その優しい部分に触れていると、段々と柔らかくなっていくんだなという経過が描かれていて、良かったと思います。
タイジを太賀さんが演じているのですが、彼は上手いので、この辛い役を飄々と演じるんです。苦しいのに、ただ苦しいだけでなく、それを超えて行く強さを持って、立ち向かう姿が描かれていて、感動でした。彼はイイよねぇ。アホな役も上手いし、こんな真面目な役も完璧にこなしていて、良かったです。
そんなタイジをどこまでも拒絶する母親を吉田羊さんが演じているのですが、この美しい顔で冷たく虐待すると、もうゾッとしてしまいました。彼女の上手さが、この原作に描かれていた虐待の酷さを良く表していたと思います。こんなの子供がされたら、自分に自信なんて持てなくなっちゃうよね。特に、小さな頃のタイジは可哀想でした。
タイジを温かく支える友達を、森崎ウィンさん、白石隼也さん、秋月三佳さんが演じていて、家族じゃなくても、彼を心から思い見守る姿は、良かったです。家族に愛を貰えなかったら、他に愛を見つければよいんですよね。血のつながりだけじゃないってことを感じました。新しく家族を作ればよいんです。タイジさんは、本当に大変だったけど、新しい家族を持てたから、母親と対峙することが出来たんですよね。うん、感動でした。3人の友人たち、上手かったなぁ。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。この映画、良かったなぁ。実は、あまり上映している映画館が無くて、とても残念なのですが、もし、お近くで上映館があったら、ぜひ観てみて下さい。これは、観る価値があると思いました。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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