舞台「大人のけんかが終わるまで」を観てきました。
ストーリーは、
不倫関係にあるアンドレアとボリスは、ある夜、レストランの駐車場で車を停めたまま、揉めていた。ボリスが妻から勧められたレストランに連れてきたことを、アンドレアが「デリカシーが無い」と非難したのだ。
ボリスはそんなことで文句を言うアンドレアに嫌気がさし、帰ろうと切り出すが、車を発進させようとしたその時、誤って駐車場にいた一人の老女を轢いてしまう。幸い怪我はなかったが、その老女イヴォンヌは息子のエリック夫妻と一緒に、誕生日を祝う為にこのレストランに来ていたのだ。
そして偶然にも、エリックの妻フランソワーズはボリスの妻パトリシアの長年の親友であった。エリックは「折角だから一杯」と言って、ボリスとアンドレアをレストランに誘うが、それは悪夢の夜の始まりに過ぎなかった。
次第に暴かれていくイヴォンヌの認知症、世話をするフランソワーズのストレス、そんな苦労に無頓着なエリックのマザコンぶり。
そして不倫関係を隠そうとするボリスと、だんだん情緒不安定になるアンドレア。「なんて夜だ、訳がわからない・・・。」
果たして5人の夜は、一体どんな終焉を迎えるのか・・・。
というお話です。
キャストが素晴らしかったのと、フランスの劇作家の作品だということで、観てみたいと思い、行ってきました。
うん、とってもフランスっぽい内容でした。表立って、問題が噴出するのではなく、じわじわとそれぞれの内部の問題が浮き出してきて、人生の苦悩を感じさせながら、それでも生きて行くんだよって感じの内容でした。
アンドレアという女性は、自由奔放なように見えて、色々なモノに縛られ、それでも言いたいことをいう強い女性のようでした。私は、彼女の視線で見てしまい、他の人々が、色々な仮面を被って暮らしているんだなと外から眺めるように見てしまいました。でも、本当は、不倫しているアンドレア自身が、一番、辛い立場なんだと思うんですけどね。ボリスは、そんな彼女の気持ちを解ってないよなぁと思いました。だって、自分の会社の問題とかを、エリックに話していて、普通に同じテーブルに着くんですもん。普通なら、あり得ないよなぁと思いました。この状況なら、アンドレアとボリスは帰るべきだよね。
エリックとフランソワーズ夫妻と母親のイヴォンヌですが、仲良さそうな家族に見えるんだけど、夫はマザコンだけど、介護は全くしていない様で、母親の世話は、ほとんど妻のフランソワーズがしているんです。これ、日本も一緒ですよね。自分の母親なのに、全く面倒を見ない男性っているでしょ。表面で楽しそうにしているだけで、汚い事というか、大変な事は妻任せなのよ。それ、酷いでしょ。まぁ、舞台では、そんな介護をしているという感じでも無かったのですが、観ていれば解るようにしていたのだと思います。認知症のイヴォンヌを助けているのはいつもフランソワーズ。息子のエリックは、そうだねぇ~とか言って、優しいんだけど、表面だけなの。
ボリスとアンドレアは、不倫関係で、今後、どうなる訳でも無いようで、シビアな関係のようでした。うーん、そんな不毛な関係、早く止めれば良いのに、ボリスが弱っているから同情しているんだと思うんですよねぇ。喧嘩をしていながらも、ボリスを捨てられないアンドレアの姿が描かれていました。うーん、強いけど優しい女性なんです。
こんな大人の関係を、静かに、ずくずくと描いていて、楽しめました。何かが起こって、バンバン壊れて、スッキリという内容では無いので、難しいとは思いますが、フランス映画を観る方には、この雰囲気が解かると思います。スッキリしない終わり方だけど、何か彼らの中には生まれたのかなという感じの終わり方でした。
この舞台、とにかく、キャストが良い。もう、鈴木京香さんが、あまりにもお美しくて、素足に見とれてしまいました。全てが完璧に見える女優さんって、素晴らしい!そして相手に北村有起哉さん、カッコ良かったです。今、TVなどにも本当に良く出ていますよね。麻美れいさんもお美しいお母さん役で、ボケた感じが可愛かったです。藤井隆さんと板谷由夏さんは御夫婦役で、良い夫婦に見えましたが、その奥に色々あるんだなというのも潜ませて、さすがに役者さんだなと思いました。
私は、この舞台、お薦めしたいと思います。ちょっと解り難い内容で、スッキリと言う感じではないですが、フランスの雰囲気が感じられて、男と女のどうしようもない生き方が描かれています。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「大人のけんかが終わるまで」
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