「ヴァンサンへの手紙」の上映会に行ってきました。
ドキュメンタリーなので内容は、
ろう者の友人バンサンが突然命を絶ってから10年、レティシア・カートン監督は「ろう者の存在を知らせたい」というバンサンの遺志を継ぎ、ろうコミュニティでカメラを回し始める。美しく豊かな手話や優しくも力強いろう文化など、バンサンが教えてくれた、知られざるろう者たちの世界に触れるうち、カートン監督はろう者たちの内面に複雑な感情が閉じ込められていることに気付く。社会から抑圧されてきた怒り、ろう教育のあり方、家族への愛と葛藤。現代に生きるろう者の立場に徹底して寄り添いながら、言葉にならない心の声を丁寧にすくい取っていく。
というお話です。
フランスでのろう者の状況などを10年に渡り、ドキュメンタリー映画として撮ったものです。ヴァンサンという、レティシア監督の友人への思いを綴った映画でした。
ろう者と言うと、私の感覚では、耳が聞こえないから声出し方が判らず、人とのコミュニケーションを取る為に手話を使っていると思っていました。でも、今は違うんですね。
人工内耳という機械を耳に入れて、音声を電気信号に変換し、蝸牛に埋め込まれた電極を通じて脳の言語中枢に伝えて、ことばとして認識させると言う事をしているそうなんです。全ての人がそうしている訳では無いようですが、随分、普及してきているようです。でも、この人工内耳を入れたからと言って、普通の人のように聞こえる訳では無く、補聴器を使っても聞き取りにくいようで、何度も確認をしたり、手話との併用で何とかなっているようです。でも、これは日本の話。フランスでは、手話が禁止になり、無理に声を聞き、自分で話す事を強要されているそうなんです。
フランスの現状は、人工内耳で人の声を聞き、自分も話せるように発音を子供の頃から練習させられて、声を発してコミュニケーションをとる事だけを教えられるようなんです。手話の学校はほとんど無く、教えられる人材も居ないようなんです。ちょっと驚きました。
私は、出来たら手話だけは世界共通にすれば、手話が世界共通言語になれるんじゃないかと思ったのに。気持ちを手で表すって、言葉に惑わされずに伝えられるから素晴らしいと思いませんか。それを万人が理解出来るなんて素晴らしいと思ったのに、何故、禁止なんてことが起こっているのか、不思議でした。
言葉って、人間が考えたものでしょ。でも、表現は誰もが自分の内から出すものだから、既成に囚われず、とても自由だと思うんです。ダンスと同じです。だから、手話もそんな風に伝える手段として使われたら、言葉の行き違いとかが減って、万人がその共通言語で話せば戦争も減るんじゃないかって、いつも思っていたのに、手話を禁止なんて、考えられませんでした。
フランスの政府の考え方は、ろう者でも一般人と同じ様に生活が出来るようにとの教育方針なのかも知れませんが、何か、不思議に思いました。確かに、耳が聞こえて話せる人が多いけど、それに併せる必要が何であるのかな。別に筆談だって良いんじゃないの?手話は判らなくても、いくらでも伝える手段はあるでしょ。無理に自分たちに併せろという傲慢な考えの様な気がしました。
アニメーションの「聲の形」でも描かれていましたが、聞こえない為に、危険な目にあったり、人とのコミュニケーションを取るのが難しいかも知れません。聞こえている私たちも、どうしてあげたら良いのか判らず、恐がっているんです。だから、虐めたり、イタズラをしたりしてしまう。でも、説明して貰えれば理解するんですよ。大人は、いつも触れると悪い様な感じで、詳しく説明をせず、ただ虐めるなとか、助けてあげろとかいうから、反発するんです。最初から説明すべきだし、人と違う事は悪いことじゃないと教えるべきなんです。いつも腹が立つ。
本人も、耳が聞こえないから助けてねって言ってくれれば、いくらでも助けるし、そんな事は、人が交流するのに、何の問題も無いのにね。それで離れて行くような人間なら、自分から切ってやれば良い。人は沢山いるんだから、仲良くなれる人は必ずいます。一般人だって、友達なんて大していないんだから、一緒です。
映画では、人とのコミュニケーションが取れず、母親とも折り合いが悪くて、ヴァンサンは自殺をしたらしいのです。レティシア監督が、ヴァンサンの母親に会いに行きたいと言ったら、断わられたという部分がありました。母親の立場なら、当たり前だろうと思いました。母親って、子供を産んで、良く言う五体満足で無かったら、自分の責任だって思うんです。そんな事は無いのだけど、それでもいつも子供に申し訳ないって思ってしまうんです。負目があるから、子供にも上手く接しられない。そな母親を助けることが子供より先に必要なんだけど、政府の補助って、そういう方には向いていないのかなぁ。その辺りの話は出てこなかったけど、どうなのかしら。
何だか、考えさせられることがとても多い映画でした。そして知らないことが多かった。まさか、手話が禁止だなんて驚きです。あんなに表現豊かな言語は無いのにね。時間があれば、私も手話を習いたかったんですよ。みんなが出来るようになったら良いのにね。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。とても考えさせられる深い映画ですが、ドキュメンタリーなので、万人にお薦めとは言えません。でも、出来たら、色々な方に観て欲しい。こんな現状がある事を知って欲しいと思いました。本当は、こういう話こそ、映画じゃなくて、TVとかで、家でゴロゴロしている人に、沢山観て欲しいんだけど、まず、映画からですかね。まだまだ、門は大きく開かれてはいないので、少しづつ伝えて行くのかな。
試写の時に、ろう者の方と監督でトークショーをしてくださって、手話も見れて、スマホアプリで直ぐに言葉を文字変換する機能も見せて下さって、今時、便利になっているんだなと思いました。色々な物が発達するのは素晴らしいけど、手話という素晴らしい表現方法も見直されると良いなぁと思った次第です。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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