「FAKE」を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので、内容は、
聴覚に障害を抱えながら「交響曲第1番 HIROSHIMA」などの作品を手がけたとし、「現代のベートーベン」と称された佐村河内。しかし音楽家の新垣隆が18年間にわたってゴーストライターを務めていたことや、佐村河内の耳が聞こえていることを暴露。佐村河内は作品が自身だけの作曲でないことを認め騒動について謝罪したが、新垣に対しては名誉毀損で訴える可能性があると話し、その後は沈黙を守り続けてきた。本作では佐村河内の自宅で撮影を行ない、その素顔に迫るとともに、取材を申し込みに来るメディア関係者や外国人ジャーナリストらの姿も映し出す。
というお話です。
ドキュメンタリーなので、詳しい説明は省きます。この映画を観て、なんか、とっても考えさせられました。うーん、確かにこの佐村河内さんって、弱視で耳も悪いんだろうと思いますが、だからと言って、ゴーストライターを使って良いという事はないし、ある程度のスコアを作っていたとは言いますが、それがあの交響曲に繋がったという確信は無いので、何とも言えません。私は、佐村河内さんが作ったとは思えないよなって思いました。
新垣さんにインタビューを申し込んだというくだりがありましたが、断られたという記述があって、当たり前だと思ったのは私だけなのかな。だって、新垣さんは支配されていた方でしょ。佐村河内さんが、18年間も支配していたんだから、もし、会ったりしたら、また、同じ状態に戻るに決まっているでしょ。支配するものとされる者、その区別って、とっても強いものなんですよ。高校生の不良とパシリとの関係と一緒だと思います。支配している方は、ジュースを買って来いと言って、パシリは有無を言わずに買いに行く、それと同じなんです。そこに、意見をするとかってありえ無いんです。
その関係を壊そうとするのは無理ですよね。どんなに時間をおいても、支配されていた方は、再会すれば、また恐怖が奥の方から出て来て、言う事を聞いてしまうでしょ。それって、どうしようもなく、本能に等しいんです。この監督は、それが解って撮影していたのかしら。
そして、撮影する方とされる方の関係です。監督側は、佐村河内さんに、素直に話して欲しいと願い、カメラを向けるのですが、人間の本能で、どうしても自分を守ってしまう。当たり前のことです。言っている事の半分しか本当の事は無いと思います。それは、自分で自分に暗示をかけてしまっているので、本当の記憶が曲がってしまっていると思うんです。だから、嘘を嘘と思っていない。それって、不思議でもなんでもなく、普通の事なんだと思います。

支配する方だった佐村河内さんが、今度は、追われることで、追ってくる人に支配されてしまう。追ってくる撮影する人が喜ぶことを言ってしまうんだと思います。調子よく、監督に対して、自分は誠実に新垣さんに相対していたし、お金も十分に与えていたと言うんですけど、新垣さんからすれば、これだけの労力を使って、この金額かって言うほどしか無かったんじゃないかな。音の高低差と雰囲気を紙に書いて伝えて、メロディーを録音して伝えたというけど、本当に、それって役に立っていたの?ただ、新垣さんが、その雰囲気をくみ上げて、作ってくれていたんじゃないの?監督は、撮影させてくれる人が正しいとして撮影するので、現実と違っていても、それが真実になってしまう。恐ろしいですよね。

佐村河内さんが黒いものを白と言ったとして、新垣さんには黒に見えていても灰色として発信していたのかも知れない。それが、当たり前だと思います。新垣さんから見れば、自分の曲を認めてくれる唯一の人だし、黒い物を白だと言われたら、白という勇気は無くても白っぽい、灰色ですと言っていたと思うんです。それって、宗教の支配と同じですよね。そんな教祖に、あなたは本当の事を言っていますかと聞いたら、本当の事を言っていますというに決まってるでしょ。それが、現実とは違っていてもね。
確かに、この映画の監督が、佐村河内さんが正直に話してくれているドキュメンタリー映画を撮る事によって、正しい判断を沢山の映画ファンが下してくれいるだろうと思ったのかなと思いますが、ハッキリ言おう。あり得ねー!っす。私は、ラストシーンで衝撃的な内容があるけれど、でも、それなら、最初からそうするべきでしょ。佐村河内さんが、ちょっと深く考えていれば、1曲を表に出した時点で、考え直して、お互いの高められる選択が出来ただろうと思うんだけど、この映画の中では、どこまでも佐村河内さんが、新垣さんをじくじくと攻めているように見えて、辛いなって思いました。

私は、この映画、お薦めしたいと思います。支配される方とする方、取材される方とする方の関係性がとても良く解って、全てのマスコミや映像、記事が伝えることは、とても疑わしいという事が判ります。ハッキリ言って、この映画で真実が知らされている訳では無く、どんなに真実を撮影しようと思っても、真実は、自分で見極めるしかないという事が、良く解ってくるんです。ドキュメンタリーで佐村河内さんを撮影しているけれど、彼が真実を言っているとは限らないという事が、すごく伝わってくるんです。うーん、そんな解釈で良かったのかな。もしかして、私の解釈が違うのかも知れませんが、私は、全てが信じられなくなりました。佐村河内も新垣も、それに付いているプロダクションも、全てが嘘で塗り固められているように思えて、面白と思いました。これは、ぜひ、観てみるべき作品だと思いますよ。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・FAKE|映画情報のぴあ映画生活
- 音楽という<真実>/新垣 隆
- ¥1,404
- Amazon.co.jp
- ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌/神山 典士
- ¥1,620
- Amazon.co.jp
- 交響曲第一番/佐村河内 守
- ¥1,680
- Amazon.co.jp
- 「全聾の天才作曲家」佐村河内守は本物か―新潮45eBooklet/野口 剛夫
- ¥価格不明
- Amazon.co.jp